ニコチン
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これは自己治療仮説で最もよく説明され、薬理学的根拠と実験結果により支持されている[16]。ニコチンパッチの投与直後に認知能力が改善された研究報告がある[17]
強迫性障害

ニコチンが強迫行動を抑えることが示唆されている。8週間のニコチンガムの使用によって5人の被験者中4人の強迫性障害が改善された[18]。薬物を用いて強迫症状を誘発させたラットにニコチンを投与すると強迫症状が低減された[19]
統合失調症

詳細は喫煙と統合失調症(英語: Schizophrenia and tobacco smoking)を参照。

ADHDのケースと同様に、統合失調症と診断されている人の喫煙率は極めて高いことが、20カ国以上で行われた研究によって判明している[20]。2006年の米国の喫煙者の割合は全人口においては20%であったが、統合失調症患者においては80%であった[21]

原因として統合失調症の症状および抗精神病薬副作用による認知能力の低下をニコチンで補う自己治療仮説などが考えられているが[20][22]、未だはっきりした結論は出ていない。

統合失調症患者の平均寿命は健常者の80%程度と低いが、それには高い喫煙率が深く寄与していると考えられている[21][4]
うつ病

長期的な低用量のニコチン暴露が、受容体の脱感作を引き起こし、抗うつ効果が現れることが確認されている[23]が、女性によるたばこの喫煙では、うつ病の罹患リスクが高まる[24]
アルツハイマー病

ニコチンは神経保護作用によりアルツハイマー病の予防および治療効果がある[25]。この効果はニコチンの食欲抑制効果と関係があることが示唆されている[26]

アメリカ合衆国においてはニコチン性アセチルコリン受容体作動薬(英語: Nicotinic agonist#Drug development)であるガランタミンが軽-中程度のアルツハイマー病の治療薬としてFDA承認を受けている[27]。詳細は「ガランタミン」を参照

しかし、近年、アルツハイマー病に対するニコチンの効果についてはほぼ否定されている。
農薬

ニコチンには殺虫作用があり、農薬として利用されてきた。1990年代からニコチンの化学式を真似たネオニコチノイド系の農薬が多数開発、販売されており、ニコチンの農薬使用量は減っている。しかしネオニコチノイドは、蜂群崩壊症候群の原因になっているとして、環境団体から非難されている[28]
毒性
急性毒性詳細は「ニコチン中毒」を参照

特に乳児と幼児は、誤ってタバコを飲み込むことでニコチン中毒の事故を起こしている[4]。日本でも1990年代の日本中毒情報センターへの問い合わせでも、相談の8割を占める4歳未満の相談で最も多いのがタバコの誤飲である[29]。従来は、たばこ1本で致死量とされてきたが、8割が無症状で小児での死亡例がないため、胃洗浄から経過観察へと対応が変わってきた[30]。大量に飲み込んだ場合は、この限りではない[30]

ニコチン過剰摂取の疑いがあれば、すぐに医師の診察を受けるべきである[4]。誤食では、胃液酸性のために、ニコチンの溶出が悪く吸収は遅い[31]。しかし、すでに水に溶けたニコチンは、吸収が早く症状も重いとされ、作物としてのタバコ収穫作業従事者の間では、経皮吸収による生葉たばこ病と呼ばれる急性中毒が発生することがある[32]
致死量

長らくニコチンの致死量は、成人で60mg以下(30-60mg)とされてきたが[33]、これは19世紀半ばの疑わしい実験から推定されており[33]、実際の致死量は、60mgの20倍以上だと考えられる[33]イヌにおける半致死量から[33]、ヒトにおけるニコチンの致死量は成人で500-1000mg と推定される[33]

60mgという致死量では、現実の無数の中毒例と異なるため、出自について古典を辿ったところ、19世紀半ばの薬理学者による自己投与実験から推定されていたに過ぎなかった。しかし後の1980-1990年代の実験でも、経口からの25mgに相当する摂取を行っても、吐き気のような軽症の症状しか示さないことが判明している[33]

1998年の日本の論文では、胃液の酸性環境では15分でタバコから3%しか吸収されないとしている[29]。溶液に溶けだしたものではこの限りではない[29]
症状

軽症では嘔気やめまい、脈拍上昇・呼吸促迫などの刺激・精神の脱抑制や興奮症状がみられる。重くなると、徐脈・痙攣意識障害・呼吸麻痺の抑制症状が見られる。

嘔吐は10-60分以内、中毒症状は2-4時間の間にほとんど現われ、タバコ誤食による中毒症状の出現頻度は、14%程度とされる[29]
検査

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}低カリウム血症、低血糖白血球増加など。重症では、ショックに伴う臓器障害を起こしうるので、肝機能・腎機能・凝固線溶系の異常が見られることがある。動脈血ガス分析では、呼吸麻痺による低酸素血症や高 CO2 血症がみられる[要出典]。
治療

特異療法は無く体内からの排出を早めるための対症療法と循環管理と呼吸管理が行われる。副交感神経抑制作用のある硫酸アトロピンを投与することもある[34]。摂取後4 - 5時間経っても症状が出ない場合は、治療は不要である[35]

吐かせるのは良いが、タバコを飲み込んだ場合は、吸収を防ぐため、水やミルクを飲ませた後に吐かせる方法は勧められない[29]。ニコチンが溶けだした溶液ではそうしたものを飲ませ、吐かせるとある[29]。またタバコでは吸収途中で、ニコチンの嘔吐作用によって吐き出してしまう事も多い[29]。タバコでは1本以上を摂取しているか症状があれば、胃洗浄を行うとされるが、アメリカの中毒センターでは5本以上で胃洗浄を勧めている[30]

たばこ1本でニコチン量20mgとすれば、胃酸中では一時間に2.4mg(0.2%/分)人体に吸収されることから[29]、無理に吐かせようと水などを多く飲ませる処置が、胃酸を薄めニコチンの吸収を速めて重篤化を招くことを重くみて、米国では、乳幼児のタバコの中毒量はタバコ2本(吸いがら6本)以上とされる[29]。摂取後4時間および24時間までの経過観察を、電話などで丁寧におこなう方法がとられる[29]

日本薬理学会学会誌において、ビタミンB1によるニコチン拮抗作用が報告されている[36][37][38][39][40][41][42]


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