果実は液質から革質、ふつう腹縫線と背縫性の両方で裂開する袋果(まれに非裂開)[4][3][2](下図2j, k)。種子は1個、大きく、ふつう派手な色の仮種皮で包まれている[4][3][6][5](下図2j, k)。内胚乳にはふつう虫食い状の入り組んだ陥入(錯道)があり(下図2l)、ふつう油質[4][3][6][2]。胚はよく分化しているが、非常に小さい[4][3][2]。地下子葉性[4]。2j. Knema globularia の裂開した果実(種子は赤い仮種皮で包まれている)2k. ニクズクの裂開した果実(種子は網状の赤い仮種皮で包まれている)2l. ニクズクの種子と断面
幻覚誘発性のフェノール化合物(ミリスチシンなど)をもつ[2]。アルカロイド、プロアントシアニジン、フラボノール(ケンペロール、クェルセチン)を有し、シアン化物、イソキノリン、イリドイドを欠く[4][5]。染色体数は n = 20, 22, 25, 26[4]。
分布・生態3. ニクズク属(支柱根を生じている)を主とする湿地林(インド)
アジアからオーストラリア、アフリカ、アメリカの熱帯域に分布しており、おもに低地の熱帯雨林に生育している[6][5][2](図3)。
少なくとも東南アジアでは、小型の甲虫によって送粉される例が多い[5]。またニクズク属の雌花は花粉を形成しないが、花粉を集めるハナバチ類を騙して送粉させることが示唆されている[5]。
仮種皮は薄いが栄養分に富んでおり、これを報酬として旧世界ではサイチョウ類、ハト類、フウチョウ類が、新世界ではオオハシ類や霊長類が種子散布を行う[5]。
人間との関わり4. ナツメグ
ニクズク(Myristica fragrans)の種子全体をすりつぶしたものはナツメグ(nutmeg)、仮種皮はメース(mece)とよばれ、香辛料として広く利用されている[6][7][8](図4)。ニクズクやチョウジ(フトモモ科)、コショウ(コショウ科)、シナモン(クスノキ科)などの香辛料に対する需要が、15?16世紀の大航海時代の引き金の1つとなった[6]。ニクズク属の種子は、薬用に用いられることもある[7][8]。
Staudtia や Virola は、木材として利用されることがある[2]。また Virola のいくつかの種は、幻覚誘発剤の原料とされることがある[6][2]。 古典的な被子植物の分類体系である新エングラー体系やクロンキスト体系では、ニクズク科はモクレン目に分類されていた[9][10][11][12]。その後一般的となったAPG分類体系でも、ニクズク科はモクレン目に分類されている[13]。モクレン目の中では、ニクズク科は最初に分岐したグループであると考えられている[5]。 ニクズク科の中には、約20属500種ほどが知られている[5]。ニクズク科の中では、少数の例外を除いてアフリカ、アジア(オーストリアを含む)、中南米に分布するものからなる系統群に分かれることが示唆されている[14](下図5)。
系統と分類