オレキシン遺伝子を破壊したノックアウトマウスには、ナルコレプシー症状が現れることが明らかになっている[7]。また、任意のヒトのナルコレプシー患者においても、視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが明らかになっている[8]。さらに、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたノックアウトマウス[9]に、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することで、ナルコレプシー症状が改善されることも明らかにされた[10]。
オレキシンは、覚醒レベルの維持、睡眠・覚醒状態の適切な維持・制御に重要な役割を持っている。ナルコレプシーは、オレキシンの欠損に基づく症状である[11]。他に、ナルコレプシーの病因として関連性が注目されているものには、HLAとの関連性がある[4]。人のナルコレプシーにおいては、HLA-DR2がほぼ全例で陽性であるという調査結果が1983年に発表された[4]。また、日本人のナルコレプシー患者の間では、ほぼ全例においてHLA-DQ1も陽性であるという調査結果がある[3]。但し、日本国外、とくに黒人においてはDR2陰性の患者も多く存在する[3]。これらのことから、ナルコレプシーが自己免疫疾患である可能性が示唆されているが、2012年現在、証明はされていない[4]。
2012年、ヒトのナルコレプシーは、オレキシン神経が自己免疫疾患を理由として後天的に損傷を受けたことに伴う神経伝達障害であるとする仮説が発表された[4]。 診断基準については議論が続いている[1]。睡眠障害国際分類第2版 (ICSD-2) では、睡眠障害の診断名が第1版に比べて細分化されており、ナルコレプシーにおいても「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」「身体疾患によるナルコレプシー」「特定不能のナルコレプシー」の4つに細分化されている。このうち、「情動脱力発作を伴うナルコレプシー」と「身体疾患によるナルコレプシー」では、脳脊髄液中のオレキシン1(ヒポクレチン-1)濃度が110pg/mL以下(正常コントロール群平均値の3分の1以下)であることがナルコレプシーの補助診断基準に含められている(前者は第3項、後者は第2項の選択的条件の1つ)[4]。これには、90%以上の患者で髄液中のオレキシンが低値となること、正常群や他の要因による患者では低値とはならないことに基づく[4]。逆に、「情動脱力発作を伴わないナルコレプシー」の疫学は判明していないとされている[4]。 鑑別疾患として、昼間に眠くなるその他の病気を挙げる。body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%} 他の過眠症と同様に、まずは夜間の睡眠を十分にとる事が大切とされている(「睡眠衛生」も参照)[1]。可能であれば計画的に昼寝を取ることも予防となる[1]。 ナルコレプシーも睡眠の病気で、治療を通して良くなっていくものであり、なまけによるものではないという周囲の理解、サポートも重要である[12]。また、日本ナルコレプシー協会 中枢神経刺激薬を使用することで日中の眠気を抑制することができるため、この目的にメチルフェニデート(リタリン)・モダフィニル(モディオダール)・ペモリン(ベタナミン)が主に使用されている[1][4]。かつてはメタンフェタミン(ヒロポン錠)が使用されることもあったが、現在では極めて稀である。同じくナルコレプシー適応のピプラドロール(カロパン)は現在日本では発売されていない。また、抗うつ薬が情動脱力発作や睡眠麻痺といった、レム睡眠関連症状を抑制することから、三環系抗うつ薬やSSRI、SNRIが主に用いられる[4]。4-ヒドロキシ酪酸 (4-Hydroxybutyrate、GHB) も治療に使われることがあった。 日中の眠気抑制を目的とした投薬の、2012年時点の主流はモダフィニル(モディオダール)である。これには、メチルフェニデートやペモリンに比べて依存性 メチルフェニデートは、血中濃度の半減期が7時間ほど、実効時間は4時間ほどであるため、症状によっては1日複数回の服用となる[4]。日本においては、不正使用や乱用の問題から登録医のみが処方可能となっており(詳細は本剤の記事を参照)、他剤で充分な効果が得られない場合や副作用によって他剤を使用することが困難な場合などに限って使用し、主剤として用いるのは極力避けるべきであると、日本睡眠学会は発表している[4]。 ペモリンは、モダフィニル同様に血中濃度の半減期が12時間と長く、1日1回の投与で良いとされている。但し、本剤は肝臓への負担が高いとされている[4]。 これらはいずれも対症的な治療であって根本的な治療ではない。そのため、投薬を中止すると元の眠気水準に戻ってしまうことになる[4]。また、いずれも夜間の睡眠に悪影響を与えてはいけないことから、夕方までに効果が切れるように処方されることとなり、薬効を翌日に持ち越すことはできない。そのため、毎日服用する必要がある。 上記以外の薬としては、オレキシンがナルコレプシーなどの睡眠障害に対する新規治療薬開発につながることが期待されている[14]。2017年5月、筑波大学の柳沢正史らは米アカデミー紀要電子版でオレキシン様化合物の研究結果を発表した。
診断
睡眠時無呼吸症候群
起立性調節障害
不眠症
真性過眠症
特発性過眠症
反復性過眠症(周期性過眠症)
覚醒不全症候群
うつ病(双極性)
季節性うつ病
周期性四肢麻痺
むずむず脚症候群
薬物・アルコールの慢性使用
身体疾患・神経疾患の一部
心因性などの精神障害
概日リズム睡眠障害
クライン・レビン症候群
治療
薬物療法