ボトムアップ方式では、より小さいものから複雑なものを組み立てる。
DNAナノテクノロジーはワトソン・クリック型塩基対の特定性を利用し、DNAや他の核酸から明確な構造を構築する。
「古典的」な化学合成の分野からのアプローチでも分子を明確な形にデザインする研究が行われている(例えば、ビスペプチド
トップダウン方式では、より大きなものからより小さなデバイスを作ろうとする。
マイクロプロセッサ製造のために発展した半導体工学の技法は100 nm未満の構造を形成できるようになっており、ナノテクノロジーと呼べるレベルに達している。巨大磁気抵抗効果を利用したハードディスクは原子層堆積法 (ALD) によって作られており、ナノテクノロジーの一種と言える[17]。ペーター・グリューンベルクとアルベール・フェールは巨大磁気抵抗を発見しスピントロニクスの分野に貢献したとして2007年のノーベル物理学賞を受賞した[18]。
半導体工学の技法はNEMS (Nano Electro Mechanical Systems) というデバイスの製造にも応用されている。NEMSよりややスケールが大きいものをMEMSと呼ぶ。
原子間力顕微鏡の先端を「ペン先」のように使い、固体表面に分子材料を配置する技法をディップペン・リソグラフィー
機能的アプローチとは、必要な機能がまずあって、それを何らかの手段で作り出そうとする研究である。
分子エレクトロニクスは、有益な電子特性を持つ分子を開発することを目的としている。そうした分子はナノエレクトロニクスのデバイスの単分子部品として応用される[19]。例えば、ロタキサンがある。
化学合成の技法を使ってナノカーなどの合成分子モーターを作る研究が行われている[20]。
生体工学的アプローチ
生体工学あるいは生体模倣技術では、自然界にある生物学的手法やシステムを模倣し、それらを工学システムやテクノロジーの設計に役立てることを研究している。例えば生体内鉱質形成
原子間力顕微鏡 (AFM) と走査型トンネル顕微鏡 (STM) はナノテクノロジー初期の2つの走査型プローブである。他の走査型プローブ顕微鏡として、マービン・ミンスキーが1961年に考案した走査型共焦点顕微鏡から発展したものやカルヴィン・クェートらが1970年代に開発した走査型超音波顕微鏡 (SAM) があり、ナノスケールの構造を観察できるようになっている。走査探針(プローブ)の先端はまた原子や分子を人の意図するように動かしナノ構造を操作することもでき、これを "positional assembly" と呼ぶ。しかし、それらは非常に手間と技量を要する技法である。現時点において、最も確立されたナノメートル規模での加工技術はナノリソグラフィであり、フォトリソグラフィ、X線リソグラフィ、ディップペン・ナノリソグラフィ、電子線リソグラフィ、ナノインプリント・リソグラフィなどの技法がある。リソグラフィはトップダウンの加工技術であり、大きな素材にナノスケールのパターンを描く。
ナノテクノロジーの別の技法のグループとして、ナノワイヤ製造など半導体製造で使われている、遠紫外線リソグラフィ、電子線リソグラフィ、集束イオンビーム加工、ナノインプリント・リソグラフィ、原子層堆積法、分子気相成長法、ジブロック共重合体を使った分子セルフアセンブリ法などがある。しかし、これらはナノテクノロジーの研究成果としてナノテクノロジーから生み出されたものではなく、それ以前からの科学技術の発展の中で自然に生まれたものがほとんどである。
トップダウン方式の研究では、目的が明確である場合が多く、研究対象もシリコンなど半導体が多い。トップダウン方式は期待された通りに徐々に小さいデバイスを生み出してきた。走査型プローブ顕微鏡はナノ素材の評価と合成の両方で重要なツールとなっている。原子間力顕微鏡と走査型トンネル顕微鏡は素材の表面を観察し、そこで原子を移動させるのに使うことができる。それらの顕微鏡のプローブ先端を特別なものに設計変更すると、試料表面に対して構造を彫り付けたり、セルフアセンブリの補助とすることができる。走査型プローブ顕微鏡を使って原子を試料表面上で移動させることもできる。今のところこういった技法は時間もコストもかかるため大量生産には向いていないが、実験室レベルの試作には適している。
対照的にボトムアップ方式は原子や分子を組み合わせて徐々に大きな構造に組み上げようとするものである。技法としては、化学合成、自己組織化、"positional assembly" などがある。自己組織化単分子膜の評価に適したツールとして二重偏光干渉測定法がある。ボトムアップ方式のもう1つの技法として分子線エピタキシー法 (MBE) がある。ベル研究所の研究者ジョン・R・アーサー・ジュニア(英語版)、アルフレッド・チョー、Art C. Gossard が1960年代末から1970年代にかけて研究用ツールとしてMBE装置を開発・実装した。MBEは1998年のノーベル物理学賞の対象となった分数量子ホール効果の発見に役立った。MBEを使えば、原子サイズの精度で原子の層を形成でき、複雑な構造を組み立てることができる。MBEは半導体研究はもちろんのこと、新たな分野であるスピントロニクスにおいても広く使われている。また物理吸着現象は、ナノメートルサイズの物質を可逆に制御する方法として再び注目されている。 Project on Emerging Nanotechnologies
用途