ただしこれは現実的には正しくないようで、実際にはナナカマドの薪は良く燃えるとの記述もある。例えば『植物名の由来』で中村浩は以下の通り記している[17]。わたしは越後の山荘で何度か冬を過ごしたことがあるが、よくナナカマドの薪をたいて暖を取ったものである。この木の材はよく燃えて決して燃え残る事は無い。
中村の説によるとナナカマドの木炭は火力が強く、これを作るには7日間炭焼きのかまどに入れておく必要があったため「七日かまど」と呼ばれており、それが詰まってナナカマドになったという[11]。鶴田知也は『草木図誌』で同様に事実を経験として述べ、『名前の由来には別の意味がある』可能性を示唆している。
植物学者の辻井達一は著書『日本の樹木』で、「青森、秋田ではサクラやアズキナシのことをナナカマドと呼ぶことがあり、これらは必ずしも燃えにくい樹ではない。そうなるとナナカマドの名は別の由来があるのかもしれない。」と指摘している[18]。
地方による別名として、オヤマノサンショウ、ヤマエンジュなどともよばれていて、いずれも葉の形状からついた名とみられている[18]。木材としては、カタスギの名でもよばれる[18]。種類としては、小葉が大形のものは、エゾナナカマド、あるいはオオバナナカマドとして区別されることがあるが[18]、米倉浩司・梶田忠「BG Plants 和名?学名インデックス」(YList)ではナナカマドと同種(別名)として扱っている[2]。
ナナカマド[注 1]は英語で Rowan(ローワン)とよばれるが、ローワンは元々スカンディナヴィア地域の言葉で、古くからイギリスに入ってケルト語系の名として伝わった[19]。ケルト人は、この堅い樹がなかなか燃えないので「灰にならない樹」として神秘的な存在として見立てたといわれている[19]。
学名の属名 Sorbus (ナナカマド属)は、ビールの一種である Cerevicia に基づくともいわれ、その実から酒が造られたことに由来する[19]。
分布・下位分類の山地帯の上部および亜高山帯の林地に自生する[5][1]。樺太[20]や朝鮮半島[20]などアジア東北部に分布[6][21]。山地のミズナラ・ブナ林から亜高山の森林限界まで普通に分布する[5][22]。
北海道や東北地方では、街路に植栽されているものも多く見かけるが、東京以西の低地では暑すぎるため育たない[23]。
本種は以下の3変種に分けられる。それぞれの特徴は#形態・生態の項参照。
ナナカマド Sorbus commixta var. commixta
全国に普通に自生[5]。
サビナナカマド Sorbus commixta var. rufoferruginea
本州以南の東北地方から近畿にかけて時に分布[5]。