チャネルのゲートの調節機能に加えて、ナトリウムイオンのβサブユニットはチャネルの発現の調節や、アンキリンやスペクトリンを介した細胞骨格との連結の形成も行う[6][16][17]。電位依存性ナトリウムチャネルは、FHF(FGF相同因子)、カルモジュリン、細胞骨格やその調節キナーゼなど、さまざまな他のタンパク質と複合体を形成し、チャネルの発現や機能に影響を与える。βサブユニットの一部は細胞外マトリックスの分子とも相互作用する。F3やF11の名でも知られるコンタクチンは、β1と結合することが共免疫沈降によって示されている[18]。テネイシンCとテネイシンRのフィブロネクチン様リピートはβ2に結合するが、上皮成長因子(EGF)様リピートはβ2と反発する[19]。ADAM10はβ2の細胞外ドメインを切断し、おそらく神経突起の伸長を誘導する。β3とβ1は、成長中の神経細胞のランヴィエ絞輪のニューロファシン
(英語版)に結合する[20]。表2. 電位依存性ナトリウムチャネルβサブユニットの命名とその機能の一部タンパク質遺伝子結合発現プロファイル関連するヒトのチャネロパチー リガンド依存性ナトリウムチャネルは、膜電位の変化の代わりにリガンドの結合によって活性化される。 リガンド依存性ナトリウムチャネルの例としては神経筋接合部のニコチン性アセチルコリン受容体があり、リガンドはアセチルコリンである。このタイプのチャネルの大部分は、ナトリウムとともにカリウムもある程度透過させる。 電位依存性ナトリウムチャネルは活動電位に重要な役割を果たす。細胞膜電位に変化が生じたときに十分な数のチャネルが開くと、少数ではあるものの大きな影響を与えるだけの量のNa+が電気化学勾配に従って細胞内に流入し、細胞をさらに脱分極させる。そのため、細胞膜の特定の領域に局在しているナトリウムチャネルが多いほど、その領域では活動電位は速く伝播し、より興奮しやすくなる。これはポジティブフィードバックの一例である。ナトリウムチャネルには閉じた不活性状態が存在するため不応期が生じるが、このことは活動電位が軸索を下って伝播していくために重要である。 ナトリウムチャネルはカリウムチャネルよりも迅速に開閉を行うため、活動電位の開始段階では正電荷(Na+)の流入が起こり、終盤では正電荷(K+)の流出が起こる。 一方、リガンド依存性ナトリウムチャネルでは、リガンドの結合に応答して膜電位変化が一から作り出される。 次に挙げる天然物はナトリウムチャネルを常に開いた(活性化)状態にする。 運動、虚血性心疾患、虚血性脳卒中、コカインの摂取などの生理学的・病態生理学的条件によって、血液や組織のpHは変化する。pHの変化は、ナトリウムチャネルに変異を有する患者にelectrical diseases(電気的シグナル伝達の異常による疾患)を引き起こす。プロトンはナトリウムチャネルのゲート機能にさまざまな変化を引き起こすが、一般的には一過的なナトリウム電流の強度を低下させ、持続的なナトリウム電流を引き起こすような、不活性化が起こらないチャネルの割合を増加させる。このような影響は神経、骨格筋、そして心臓組織で疾患を引き起こす変異で共通してみられる現象である。ナトリウムチャネルのプロトン感受性をより高めるような変異体ではさらに強い影響がみられる可能性があり、プロトンがelectrical diseaseの急性症状の引き金となっていることが示唆される[24]。 心筋細胞由来の1分子のチャネルからのデータは、プロトンが個々のナトリウムチャネルのコンダクタンスを低下させることを示している[25]。ナトリウムチャネルの選択性フィルターは、4つの機能ドメインのポアループ(pore-loop)からそれぞれ1残基ずつが参加することで構成されている。この選択性フィルターを形成する4残基はDEKAモチーフとして知られている[26]。ナトリウムチャネルの透過率は、outer charged ring(チャネルの細胞外側で荷電残基が環状に配置された領域)を構成する4つのカルボン酸残基、EEDDモチーフによって決定されている[26]。これらのカルボン酸のプロトン化はナトリウムチャネルのプロトンによる遮蔽の主要な駆動因子の1つであるが、他の残基もpH感受性に寄与している[27]。そのような残基の例としては主に心臓で発現するナトリウムチャネルNav1.5のC373があり、このチャネルはこれまで研究されたナトリウムチャネルの中で最もpH感受性が高いものである[28]。 心臓のナトリウムチャネルNav1.5は最もpH感受性の高いナトリウムチャネルであり、知見の大部分はこのチャネルに基づいている。細胞外のpHの低下は活性化と不活性化の電位依存性を脱分極側へシフトさせる。そのため運動など血液のpHが低下する活動の間は、チャネルの活性化と不活性化がより正電位側で起こる可能性が高くなり、その悪影響が生じる可能性がある[29]。骨格筋線維で発現しているナトリウムチャネルNav1.4は、比較的pH感受性が低くなる方向へ進化している。
Navβ1(英語版)SCN1BNav1.1からNav1.7中枢神経細胞、末梢神経細胞、骨格筋、心臓、グリア細胞てんかん(GEFS+)、ブルガダ症候群[21]
Navβ2(英語版)SCN2BNav1.1、Nav1.2、Nav1.5からNav1.7中枢神経細胞、末梢神経細胞、心臓、グリア細胞ブルガダ症候群[21]
Navβ3(英語版)SCN3BNav1.1からNav1.3、Nav1.5中枢神経細胞、副腎、腎臓、末梢神経細胞ブルガダ症候群[21]
Navβ4(英語版)SCN4BNav1.1、Nav1.2、Nav1.5心臓、骨格筋、中枢神経細胞、末梢神経細胞未知
リガンド依存性ナトリウムチャネル
活動電位における役割詳細は「活動電位」を参照
薬理学的な調節
遮断詳細は「ナトリウムチャネル遮断薬(英語版
活性化
アルカロイドベースの毒素
アコニチン
バトラコトキシン
ブレベトキシン
シガトキシン
デルフィニン
グラヤノトキシンの一部(グラヤノトキシンIなど)(他のグラヤノトキシンはナトリウムチャネルを不活性化したり閉じたりする)
ベラトリジン
ゲート機能の変化(Gating modifiers)(英語版)[22]
サソリ毒[23]
pHによる調節
プロトンによる遮蔽の分子機構
pHによるゲート機能の調節
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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