ナツメグ
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イギリス人はラン島の村の指導者らと巧みに交渉し、彼らのナツメグを独占するのと交換にオランダ人から彼らを保護した。ラン島の村の指導者らは彼らの君主としてイングランド王ジェームズ1世を認めたが、ラン島へのイングランド人の駐留はほんの1624年までだった。バンダ諸島の支配権の争いは、ブレダの和約においてマンハッタン島とその都市ニューアムステルダム(後のニューヨーク市)と引き換えにイギリスがオランダへラン島を譲渡した1667年まで続いた。

ナポレオン戦争中のオランダの空位時代の結果として、イギリスは一時的にオランダを抑えてバンダ諸島を支配し、土壌と共にナツメグの木をスリランカペナンブンクルシンガポールへと移植した[22](これ以前にもスリランカにナツメグの木が存在した証拠がある[23])。これらの場所から、ナツメグの木がその他の植民地、特にザンジバルとグレナダへ移植された。1974年に選ばれたグレナダの国旗には図案化された殻が割れたナツメグの実が描かれている。イギリスは自国の植民地であるマレー半島南部への移植が試みたが結果的に失敗に終わった。1816年にオランダに支配権が戻り制限政策が1862年まで続けられた。ナツメグの栽培が自由化されたのは1864年のことである。オランダは第二次世界大戦まで香料諸島を支配し続けた。

コネチカット州とコネチカット州人の愛称である「ナツメグ州」と「ナツメガー(英語版)」は、一部の悪徳コネチカット人業者らがナツメグの木を少しずつ削り取り、「木でできたナツメグ(wooden nutmeg)」を作ったという主張から来ている。「Wooden nutmeg」という用語はペテンを意味するようになった[24][25]。この物語は、ナツメグの粉を得るためにナツメグを砕くのではなく、おろし金ですりおろさなければならず、このことは製品の一部の購買者らには広く知られていなかったかもしれないことと関係しているかもしれない[24]
世界生産ナツメグ労働者。グレナダグヤヴェ

1994年にはインドネシア(英語版)が世界市場占有率73%、グレナダ(英語版)が22%を占め、ナツメグとメースの生産と輸出を支配していた[1]。現在では熱帯亜熱帯の世界各地で栽培されている。

生産量が多いのは、インドネシアインド(ケーララ州)、グアテマラネパールスリランカ、シンガポール、グレナダ、ベトナムなどである[26]。その他の生産地にはイラン、マレーシア(特にペナン州)、パプアニューギニア、セントビンセント島といったカリブ海の島々が含まれる。主要な輸入市場はインド、サウジアラビア、ベトナム、アメリカ合衆国、ドイツ、UAEである[26]。シンガポールとオランダは主要な再輸出者である。
精神作用と毒性

低量では特に問題はないが、生のナツメグを多量(約10グラム以上)に摂取すると中毒症状を示す。これは、生のナツメグにはモノアミン酸化酵素阻害薬および精神活性物質であるミリスチシンが含まれているためである。ミリスチシンは痙攣動悸、嘔気、脱水症および全身へ疼痛感を引き起こすほか[27]、強力な精神錯乱状態を引き起こすことも報告されている[28]。生のナツメグには、ミリスチシンとエレミシンに起因する抗コリン薬様の症状を引き起こすという症例報告がある[29][30][31]

ヒトでの死亡例は希であるが、8歳の子供[29]と55歳の大人の2件の報告がある(後者はフルニトラゼパムとの併用に起因)[32]
ナツメグ・ミル

ナツメグは、粉に挽いて小瓶に詰めて売られていることが多いが、香りが飛びやすいため、種子のままでも売られている。これを利用するために、専用のナツメグ・ミルがある。ナツメグ・ミルは、木やガラス製の円筒形ボディに、金属製の刃とハンドル、それにハンドルと一緒に回転するホルダーがついている。ナツメグはさほど硬くないので、プラスチック刃のすりおろし器を使用することも可能である。

かつてのヨーロッパではナツメグを収納可能な専用携帯すりおろし器が存在した。画家のロートレックはナツメグを持ち歩き、酒場で酒に入れてその薬効を楽しんでいたという[33]
参考画像

成熟すると果実が割れ種子が見える

果実(黄)・仮種皮(赤)・種子(黒)

メース(仮種皮)

粉末加工された製品

ケース付き携帯すりおろし器(ナツメグ用)
イングランド, 1800?25年, Silver V&A Museum no. M.1065-1927

ナツメグおろし器

出典^ a b “ ⇒Nutmeg and derivatives (Review)” (PDF). Food and Agriculture Organization (FAO) of the United Nations (1994年9月). 2019年6月24日閲覧。
^ a b “Nutmeg”. Drugs.com (2009年). 2017年5月4日閲覧。
^ ツァラ 2014, pp. 18?19.
^ ギュイヨ 1987, pp. 97?98.
^ “ ⇒Nutmeg”. www.clovegarden.com. 2017年7月22日閲覧。
^ Amitav Ghosh] (2016年12月30日). “What Nutmeg Can Tell Us About Nafta”. New York Times. https://www.nytimes.com/2016/12/30/opinion/sunday/clove-trees-the-color-of-ash.html 
^ “ ⇒The Spice Trade's Forgotten Island”. National Geographic (2015年6月22日). 2017年4月13日閲覧。
^ Oulton, Randal (2007年2月18日). “ ⇒Nutmeg Graters”. CooksInfo.com. 2018年4月8日閲覧。
^ Arthur L. Meyer; Jon M. Vann (2008). The Appetizer Atlas: A World of Small Bites. Houghton Mifflin Harcourt. p. 196. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-0-544-17738-3. https://books.google.com/books?id=qUOcpdtYIFwC 
^ a b Pat Chapman (2007). India Food and Cooking: The Ultimate Book on Indian Cuisine. New Holland Publishers. p. 16. ISBN 978-1-84537-619-2. https://books.google.com/books?id=orHWFRMKf4EC 


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