ナッチャンRera
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片道料金はエコノミークラスで700台湾ドル(2013年8月現在約2,246円)で、同区間の台鉄北廻線の運賃と比べると高額であるが、観光ツアー客の乗船と災害時の緊急輸送を見込んでいた[4]。船名表記が麗娜輪と改められたが、英語表記は NATCHAN RERAのままで、船体塗装も維持されていた。

2014年5月27日から、台湾の台北港と中国福建省平潭島間を結ぶ航路に就航した。これは、台湾所属の客船で運航される史上初の台中定期航路である。就航当初は、週2往復、所要時間は片道3時間で、運賃はエコノミークラスで3,450台湾ドル、ビジネスクラスで3,950台湾ドル、ファーストクラスで4,500台湾ドルであった[16]。就航当初の時点では、台湾と中国の間の車両交流に対する会談が行われていないため、旅客のみの乗船となった。車両輸送も検討されたが、実現にはナンバープレートと運転免許の相互認証に関する問題の解決が必要とされた。

2015年6月、船体の船名表記が「麗娜輪」から「麗娜」に変更されているのが確認された[17]。ただし、華岡集団のウェブサイト等では引き続き「麗娜輪」の船名が用いられていた。

2016年4月、華岡集団と沖縄県の総合物流グループであるシンバネットワークのあんしんが共同で、本船を花蓮 - 石垣航路に就航させる計画を発表した。片道の所要時間は最短4時間で試験運航の第1便は台湾の蕭美琴立法委員を代表とした経済交流視察団約100名[18]を乗せて2016年5月14日夕、石垣港に初入港した[19]。2015年内に10回のチャーター運航が予定され、将来的に週1便程度の定期運航が構想されていた[20]。しかし、石垣港への入港は試験運航の1回のみで、以後の運航は数度にわたり延期され[21][22]2017年11月には台湾での集客が見込めないこと等を理由に運航を断念することが明らかになった[23]

2022年12月7日時点では、台南の港に係留されていることが確認できた。船名表記は「麗娜」から「麗娜輪」に戻っていた[24]
船体と装置類
船内設備
TIER4


エグゼクティブクラス - 日本ではドリンク・ビデオサービスが提供された。

バーラウンジ

シャワー

TIER3


エコノミークラス

ビジネスクラス

エントランスラウンジ

売店

カフェ

キッズルーム

パブリックカウンター

ウェーブ・ピアーサーナッチャンWorldの船首形状ナッチャンWorldの船尾形状。
センターハルは水面に接していないことが確認できる。

本船は双胴船の中でも比較的新しい船型である「ウェーブ・ピアーサー」形状をしており、水線下の2つの船体が非常に細く作られている。船長112mの船体で最大積載は1500tであり、高速船としては非常に優秀といえる。本船では船首側がわずかに1度低い船首トリムと呼ばれる状態での航行が最も抵抗が少なくなる。

下部船体は水密隔壁によって左右それぞれ10区画の水密区画に分けられており、万一の場合にも簡単には沈まないようにできている。
ウォータージェットナッチャンWorldの後部に4基備えられたウォータージェット離岸のためナッチャンWorldのウォータージェットが作動する様子

一般的なスクリューではなく、ウォータージェット推進器を左右合わせて4基備えており、強力な水流の噴射によって高速航行を可能にしている。ウォータージェットでは水流の向きを左右に最大30度まで変えられるので、舵を必要とせずにすばやく船の向きを変えられる。また、ウォータージェットには後進バスケットと呼ぶ偏向板があり、後進時にはこれを噴射口へ押し上げることで水流の方向を前方下方へ変えることで推進力を180度逆の後進へと変えられる。また、後進バスケットを中間位置にすれば、エンジンを回したままで推力をかけない停止状態にもできる。

左右での水の噴射方向を逆にすることで、横方向への移動や、その場での回転がおこなえる。

41.5ノットで旋回したときの旋回円の直径は620mであり、41ノットでのクラッシュ・アスターン(Crash Astern)による停止では1分27秒後にまっすぐ721m先に停止できた。これらはいずれも、非常に優秀な成績といえる。
エンジン

中速回転のディーゼル・エンジン(MAN 20V28/33D)を左右の下部船体後部に合計4基備えている。片側2基のエンジンは下部船体の幅が狭いために前後に互い違いに据えられている。それぞれが12,373PS(メートル馬力、9,100kW)のV型20気筒ディーゼル・エンジンは毎分1,000回転を減速機によって470回転まで落として、ウォータージェットのポンプを駆動している。

燃費は旅客と貨物を満載した1,450tの状態で36ノットで航行したとき、軽油を8,625リットル/時間だけ消費して、リッターあたりでは8mとなる。
減揺装置

高速で航行する本船は、波による揺れを押さえるために減揺装置として、船首下に「Tフォイル」(T-foil)、左右の船尾にはトリムタブを備える。Tフォイル
波が穏やかで減揺が不要なときは、船体側へ折り込んでおける。
Tフォイル
Tフォイル(T-foil)は、船首下から海水中へ垂直に伸びる支持部とその先端部の水中翼により、フィン・スタビライザーにも似たしくみで揺れを抑える。
トリムタブ
トリムタブは、必要に応じて船尾の船底部分に板を突き出すことで揚力を発生して、船尾に上向きの力を作り出す装置である。これが左右の船尾に備えられている。
ブリッジナッチャンWorldの船室およびブリッジ

ブリッジ、つまり船を操船する船橋は船の中央最上部にある。他の船と異なり、機械装置を操作するためにブリッジ内を歩き回るようにはできておらず、航空機の操縦席にも少し似た「統合型ブリッジ」になっている。ブリッジの前3分の1ほどが横3人掛けのシートになっており、左から機関長/機関士席、船長席、航海士席となっている。船長席の後ろに、後ろ向きに操作する接岸用操船パネルがあり、接岸時の細かな操船のためのレバーとテレビカメラ映像パネルが備わっている。右肘掛けの端につまみのような小さな舵輪があり、文字通り手元で操作が可能になっている。

3人席のコックピットの後ろには、情報分析スペースとして海図や外部からの情報を入手・分析できるようになっている。ブリッジの後部3分の1は休憩のためのいくつかの座席が用意されていて、隅に階下への階段と後部デッキへのドアが付いている。
その他
緊急避難ナッチャンWorldのライフラフトおよび離岸・着岸時の操船用の操縦室
ライフラフト
緊急時の避難先としての「ライフラフト」には、乗り移るための滑り台式スロープがラフトと同時に膨らむガス展張式のものが備わっている。
乗船・下船

日本での本船の停泊時間はわずか45分であったため、200台あまりの車輌と800人ほどの乗客をこの短時間で下船させて、また乗船させなければならなかった。車輌の乗船時には、重い車が前後や左右に集中すると船が傾いてしまう(前後・左右トリム)ため、一等航海士などの船員が場所を指示して駐車させていた。特に下船や搭乗中に船が傾きすぎると、ランプウェイに角度が付きすぎて車輌の底を打つ危険があるので注意が必要であった。
脚注[脚注の使い方]^ “EuroChampion Jet - SEAJETS' new impressive high-speed vessel has arrived at the port of Piraeus!”. seajets. 2024年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月28日閲覧。
^ “Vessel Characteristics: Ship EUROCHAMPION JET (High Speed Craft) Registered in Guinea-Bissau - Vessel details, Current position and Voyage information - IMO 9294238MMSI 9294238Call Sign J5AK2”. AIS Marine Traffic. 2024年4月28日閲覧。
^ナッチャンRera台湾へ - ゲストハウス 函館クロスロード・2012年10月22日[出典無効]
^ a b“麗娜輪首航 藍色公路?動”. 自由時報. (2013年8月7日). ⇒http://www.libertytimes.com.tw/2013/new/aug/8/today-life16.htm 2013年8月8日閲覧。 [リンク切れ]
^ “台湾からギリシャに売却 市準備課も把握「影響ない」”. 八重山毎日新聞. (2024年3月21日). オリジナルの2024年3月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20240321004443/https://www.y-mainichi.co.jp/news/40372/ 
^ “ ⇒OpenDocument 112 Metre Wave Piercing Catamaran”. Incat. 2013年12月31日閲覧。
^ “東日本フェリー/「ナッチャンRera」、国際賞を受賞”. 日本海事新聞. (2008年6月5日). https://www.jmd.co.jp/article.php?no=112117 
^ “International Award for Incat 112 metre Natchan Rera”. Incat. 2013年12月31日閲覧。
^ “ホタテ漁師:押し寄せる波と砂に「困った」 青森・陸奥湾”. 毎日jp. (2008年8月29日). ⇒オリジナルの2008年8月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080829003204/mainichi.jp/select/today/news/20080829k0000m040161000c.html 
^ . 北海道新聞. (2008年9月9日). ⇒http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/116514.php 


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