言語はナショナリズムの要素として重要なものである。19世紀中に国民国家化した諸国は自国の言語の体系化と整理を行い、標準語を定めてこれで教育や行政を行うことが多かった。これにより各国における主要言語の変種は方言とされ、また少数民族の言語はややもすると排斥された。こうした言語ナショナリズムは第二次世界大戦後の新独立国においても導入した国家が存在し、たとえばインドネシアはマレー語の方言を整備してインドネシア語を成立させ、これで教育や行政を行った[34]。タンザニアにおいては初代大統領のジュリウス・ニエレレが海岸部の言語であった交易言語のスワヒリ語を整備して教育用語とし、国民意識の形成を行った[35]。インドにおいてはヒンドゥスターニー語による言語統一を目指す勢力もいたものの、各地方の反発によって頓挫した。そのかわりにインドでは言語と州境の一致が目指されるようになり、旧来の州は言語を基準とした言語州へと再編された[36]。
その他、以下のものをはじめとしてさまざまな類型が存在する。
左翼ナショナリズム
経済ナショナリズム
国民自由主義(ナショナル・リベラリズム)
ナショナル・ロマンティシズム(民族的ロマン主義または国民的ロマン主義)
国民保守主義
民族統一主義
民族ボルシェヴィズム(ナショナル・ボルシェヴィズム)
資源ナショナリズム
汎民族主義(英語版)
宗教ナショナリズム(英語版) - アメリカなどにおけるキリスト教ナショナリズム(英語版)が典型例
ナショナリズムは国家と民族を重ね、公的生活と私的生活の両方にまたがるアイデンティティの中核に民族を置き、他民族など外部との差異を強調する[37]。このような思想を表現する言葉としてドイツ語のVolkstum(ドイツ語版)、日本の「国体」がある[37]。
一面では排他的な自民族中心主義を刺激することがあり[38]、極端な場合に超国家主義(ウルトラ・ナショナリズム)や自民族至上主義(英語版)として発露しうる[39][40]。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ アンダーソンは出版資本主義を近代に特徴的な要素として挙げ、ゲルナーは国家による教育制度を指摘する。
出典^ a b ブリタニカ国際大百科事典、他
^ Harper, Douglas. “ ⇒Nation”. Online Etymology Dictionary. 2011年6月5日閲覧。.
^ ゲルナー、2000年、p.1
^ 姜、2001年、p.5あるいはホブズボーム、2001年、p.10など
^ nationalism - Stanford Encyclopedia of Philosophy
^ 丸山眞男著 『現代政治の思想と行動』未來社、2006年新装版、279ページ
^ E.H.カー『ナショナリズムの発展(新版)』(みすず書房、2006年)あるいはB.アンダーソン『増補 想像の共同体』(NTT出版、1997年)の「訳者あとがき」など
^ 橋川、1968年、p.16
^ スミス、1999年およびアンダーソン、1997年参照。
^ 「民族とネイション」p43 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「民族とネイション」p45 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p55-58 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p66-69 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p100-105 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p94 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p97-98 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p100 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p454
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p129 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p111-112 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p136-140 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p146 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「国際機構 第四版」p103 家正治・小畑郁・桐山孝信編 世界思想社 2009年10月30日第1刷
^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p494-498
^ 「現代政治学 第3版」p52 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
^ 「民族とネイション」p145 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「現代政治学 第3版」p206 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p153 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「コラム:新型コロナに乗じる中ロ、揺らぐグローバリズム」『Reuters』、2020年3月24日。2020年4月5日閲覧。
^ 遠隔地ナショナリズムについてはアンダーソンの"New World Disorder"および『比較の亡霊』参照。なお『比較の亡霊』では「遠距離ナショナリズム」の訳語が用いられているが、ここでは1992年の"New World Disorder"以来使われてきた「遠隔地ナショナリズム」を訳語として使う。
^ スミス、1999年、p.199
^ “Summon 2.0”. aucegypt.summon.serialssolutions.com. 2023年9月11日閲覧。