ナショナリズム
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彼女は、ジェンダーの違いが制度化されていることを論じ、国家が「国民が国民国家の資源にアクセスすることを制限・正当化する」能力を持つ文化表象であるため、そのことを国家と結びつけている[32]
類型

ナショナリズムは様々な類型を持つ。

民族主義(エスニック・ナショナリズム)はしばしばナショナリズムと同一視されるが、必ずしも同じものとは言えない。民族と国家(あるいは「あるべき国家像」)の範囲が重複した場合は類似したものとなる場合もあるが、一国家に一民族しか居住していないということはほぼありえず、国家の主流派民族の推進するナショナリズムと、自治権や独立を求める少数派民族の民族主義が衝突することは珍しくない。逆に、スイスのように自国を各民族の連合体として定義している場合、ナショナリズムは民族を超越したところに基準が置かれ、連邦を構成する各民族の民族主義とは対立することとなる[33]。また、同一民族の国家が複数存在する場合、現在の国境を越えて同一の文化や言語を共有する広い地域の政治的統合を目指す汎民族主義(英語版)も、汎アラブ主義など世界各地域に存在する。ある民族の居住する地域がいくつかの国家に分断されている場合、その統一を目指す民族統一主義も世界各所に存在し、大ソマリア主義のように戦争にまで至った例もある。

言語はナショナリズムの要素として重要なものである。19世紀中に国民国家化した諸国は自国の言語の体系化と整理を行い、標準語を定めてこれで教育や行政を行うことが多かった。これにより各国における主要言語の変種は方言とされ、また少数民族の言語はややもすると排斥された。こうした言語ナショナリズムは第二次世界大戦後の新独立国においても導入した国家が存在し、たとえばインドネシアマレー語の方言を整備してインドネシア語を成立させ、これで教育や行政を行った[34]タンザニアにおいては初代大統領のジュリウス・ニエレレが海岸部の言語であった交易言語のスワヒリ語を整備して教育用語とし、国民意識の形成を行った[35]インドにおいてはヒンドゥスターニー語による言語統一を目指す勢力もいたものの、各地方の反発によって頓挫した。そのかわりにインドでは言語と州境の一致が目指されるようになり、旧来の州は言語を基準とした言語州へと再編された[36]

その他、以下のものをはじめとしてさまざまな類型が存在する。

左翼ナショナリズム

経済ナショナリズム

国民自由主義(ナショナル・リベラリズム)

ナショナル・ロマンティシズム(民族的ロマン主義または国民的ロマン主義)

国民保守主義

民族統一主義

民族ボルシェヴィズム(ナショナル・ボルシェヴィズム)

資源ナショナリズム

汎民族主義(英語版)

宗教ナショナリズム(英語版) - アメリカなどにおけるキリスト教ナショナリズム(英語版)が典型例

ナショナリズムは国家と民族を重ね、公的生活と私的生活の両方にまたがるアイデンティティの中核に民族を置き、他民族など外部との差異を強調する[37]。このような思想を表現する言葉としてドイツ語のVolkstum(ドイツ語版)、日本の「国体」がある[37]

一面では排他的な自民族中心主義を刺激することがあり[38]、極端な場合に超国家主義(ウルトラ・ナショナリズム)や自民族至上主義(英語版)として発露しうる[39][40]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ アンダーソンは出版資本主義を近代に特徴的な要素として挙げ、ゲルナーは国家による教育制度を指摘する。

出典^ a b ブリタニカ国際大百科事典、他
^ Harper, Douglas. “ ⇒Nation”. Online Etymology Dictionary. 2011年6月5日閲覧。.
^ ゲルナー、2000年、p.1
^ 姜、2001年、p.5あるいはホブズボーム、2001年、p.10など
^ nationalism - Stanford Encyclopedia of Philosophy
^ 丸山眞男著 『現代政治の思想と行動未來社、2006年新装版、279ページ
^ E.H.カー『ナショナリズムの発展(新版)』(みすず書房、2006年)あるいはB.アンダーソン『増補 想像の共同体』(NTT出版、1997年)の「訳者あとがき」など
^ 橋川、1968年、p.16
^ スミス、1999年およびアンダーソン、1997年参照。
^ 「民族とネイション」p43 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「民族とネイション」p45 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p55-58 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p66-69 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p100-105 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p94 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p97-98 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p100 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p454
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p129 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p111-112 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p136-140 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p146 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
^ 「国際機構 第四版」p103 家正治・小畑郁・桐山孝信編 世界思想社 2009年10月30日第1刷
^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p494-498
^ 「現代政治学 第3版」p52 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
^ 「民族とネイション」p145 塩川伸明 岩波新書 2008年11月20日第1刷
^ 「現代政治学 第3版」p206 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷
^ 塩川伸明 『民族とネイション - ナショナリズムという難問』p153 岩波新書、2008年 ISBN 9784004311560
^ 「コラム:新型コロナに乗じる中ロ、揺らぐグローバリズム」『Reuters』、2020年3月24日。


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