しかし一方で、上記の通り激減したり消滅したと思わしい個体群も少なくなく、一部の国々では捕鯨も継続されており、船舶との衝突、漁業による混獲、ゴミの誤飲、「混獲」と称した意図的な捕獲[44]、密猟[注 12][45]、地球温暖化や人間による廃棄物などによる生息環境の悪化、さらには上記の通りシロナガスクジラとの交配の増加[28]などの影響が懸念されている[3]。しかし、上記の通り、アイスランドでは捕鯨の需要が著しく低下しており、捕鯨産業の撤廃も考慮され始めている[39]。
現在では地中海やコルテス海やセントローレンス川を含む世界各地でホエールウォッチングの対象になっており、ニューヨークなどの大都市の沿岸での確認も増えている[注 13][46][47]。
ロシアや東アジアにおいては、かつては太平洋側・日本海側を問わない日本列島の各沿岸部[注 14]や黄海・渤海などを含め沿岸にも普遍的に見られ、上記の通り複数の特徴的な個体群も存在していた[22]。商業捕鯨時代以降は長らく記録が限定されており[7]、目撃はおろか、座礁や混獲なども非常に少なかった[注 15][注 16][48][49]。
しかし、2000年代以降は主にオホーツク海での目撃が増加し、日本列島におけるホエールウォッチングでもオホーツク海に面する北海道の知床半島[注 17][50][51][52]と網走[注 18][52][53]では観察できる機会が増えつつある。観光ツアー中における本種の発見の確率では、網走の方が知床よりも大幅に上回る[54][55]が、知床半島の方が(海底地形の影響からか)鯨類の多様性に富み、これまでに他の鯨類[注 19]と共に遊泳する光景が観察されたり[50][56][57]、シャチと共に行動する観察例も複数回観察されている[注 20][57][58][59][60]。
また、将来的に生息数が回復すれば、たとえば日本列島の北太平洋側や日本海側の各沿岸部や瀬戸内海など、分布が破壊されたり激減した海域にも他の海域から流入して分布が復活する可能性がある[19]。近年では、北海道の南東部(釧路市や十勝)や三陸や房総半島の沖合が、どの程度の個体数が利用しているのかは不明であるが、本種の回遊経路になっていると判明している[61]。
韓国や中国や台湾やフィリピンなどの他のアジア各地でも長らく目撃情報が途絶えていたが、2020年前後以降から韓国でごく僅かな目撃記録が記録されはじめ、2024年に発表された調査結果では、朝鮮半島の周辺が現在でも少数ではあるが本種に利用されていることが判明した[62][63]。