その後、1990年以降は北大西洋では一部の原住民による生存捕鯨とアイスランドによる(主に日本への食肉やペットフードの材料としての輸出用の)商業捕鯨が継続されており[38]、日本も南極海における調査捕鯨の捕獲対象としていたこともある[注 11][3]。しかし、アイスランド国内では鯨肉の消費の需要の減少、捕鯨業者の減少、アニマルライツの観点やホエールウォッチングの需要の増加などから、2023年には捕鯨の撤廃も討議も行われるなどの動きが見られている[39]。
これらの捕鯨の結果、世界中の個体群が大打撃を受けたとされ、近年に行われた捕獲の影響の再考においても従来の想定よりもはるかに深刻なダメージを受けていたと判明している[40][41]。
2005年に、日本は南極海において「調査」との名目で本種とザトウクジラを50頭ずつ捕獲することを宣言したが、これにより国際的に大きな批判を浴び、シーシェパードの抗議行動の激化などの反捕鯨運動が拡大する要因の一つになったともされている[42]。
保護とホエールウォッチング「ボン条約」および「象徴種」も参照船舶との衝突によって死亡した個体(ロッテルダム)ホエールウォッチング(ジブラルタル海峡)
2023年現在では、(あくまでも世界全体で見れば)直接の捕獲そのものは本種に対する大きな脅威ではなくなり、生息数は増加傾向にあると考えられている[3]。しかし、比較的回復が進んでいる南半球においても本種、シロナガスクジラ、ミナミセミクジラは各々が本来の生息数の50%未満に回復するのは西暦2100年ごろと推測されている[43]。
しかし一方で、上記の通り激減したり消滅したと思わしい個体群も少なくなく、一部の国々では捕鯨も継続されており、船舶との衝突、漁業による混獲、ゴミの誤飲、「混獲」と称した意図的な捕獲[44]、密猟[注 12][45]、地球温暖化や人間による廃棄物などによる生息環境の悪化、さらには上記の通りシロナガスクジラとの交配の増加[28]などの影響が懸念されている[3]。しかし、上記の通り、アイスランドでは捕鯨の需要が著しく低下しており、捕鯨産業の撤廃も考慮され始めている[39]。
現在では地中海やコルテス海やセントローレンス川を含む世界各地でホエールウォッチングの対象になっており、ニューヨークなどの大都市の沿岸での確認も増えている[注 13][46][47]。
ロシアや東アジアにおいては、かつては太平洋側・日本海側を問わない日本列島の各沿岸部[注 14]や黄海・渤海などを含め沿岸にも普遍的に見られ、上記の通り複数の特徴的な個体群も存在していた[22]。商業捕鯨時代以降は長らく記録が限定されており[7]、目撃はおろか、座礁や混獲なども非常に少なかった[注 15][注 16][48][49]。
しかし、2000年代以降は主にオホーツク海での目撃が増加し、日本列島におけるホエールウォッチングでもオホーツク海に面する北海道の知床半島[注 17][50][51][52]と網走[注 18][52][53]では観察できる機会が増えつつある。