ナオジョテ
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ゾロアスター教が布教をやめたのは、イラン帝国(ペルシア帝国)が興り、メソポタミアシリアエジプトなど巨大な文明・文化・人口を持つ勢力を支配下に置き、間近に接するようになってイラン人(ペルシャ人)がアイデンティティの危機を感じるようになってからだとされる。イラン系の家系か、イランの土地に生まれたか、ゾロアスター教徒か、このどれかを満たすことで漠然と「イラン人ペルシャ人」とみなされていたのが、強力な異文化・異民族に触れることで揺るがされ、血・土地・言語・宗教、これら全てを満たすことが「イラン人・ペルシャ人」の条件とされ、固定化され、他宗教からの改宗という形でゾロアスター教徒が増えることも表向きは無くなった[4]

サーサーン朝イスラム教勢力によって打ち倒されると、世界宗教としてのゾロアスター教の教勢は大きく失われた。

サーサーン朝滅亡以後の事情については不明な点が多いが、ナオジョテが発展・確立したのはサーサーン朝の衰退期・混乱期と考えられている。現在伝わるナオジョテで重要な位置を占める信仰告白も、サーサーン朝以前には存在していなかった。ゾロアスター教信仰が危機にさらされる時代にあって、宗教と信仰を存続させるための努力としてナオジョテは整備され、完成した[5]
他宗教者のナオジョテ(入信・改宗)

他宗教者がナオジョテを受けることを許し、改宗を認めるかどうか。ゾロアスター教徒と他宗教者との結婚で生まれた子供の改宗を認めるかどうか。これは現在のゾロアスター教徒、パールシー共同体を揺るがす大問題となっている。ゾロアスター教徒でない人によっても「ゾロアスター教は現在、他宗教からの改宗を認めない」と説明されることは多い。実際このスタンスを固持するゾロアスター教徒は数多いが、逆に改宗を認めるゾロアスター教徒もおり、そのスタンスにより生まれた改宗ゾロアスター教徒は200万人居るとされる。前者の「保守派」も、後者の「改革派」も自身のスタンスをアヴェスターに則った正統なものとみなしている[6][7]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 白色は、ゾロアスター教徒にとっては光(善)を象徴する神聖な色である。この伝統は、ゾロアスター教の影響を受けて3世紀に成立したマニ教にも引き継がれた。

出典^ 青木(2008)p.253
^ a b 『もう一度学びたい 世界の宗教』(2005)pp.188-193
^ 岡田(1984)pp.79-80
^ 山本(1998)
^ 香月法子、「パールシー社会におけるナオジョテの意義(第一部会,<特集>第七十回学術大会紀要)」『宗教研究』 2011年 85巻 4号 p.1045-1046, doi:10.20716/rsjars.85.4_1045, 日本宗教学会
^ 香月法子、「パールシー社会における「保守派」と「改革派」の対立構造」『現代インド研究』 2010年 1巻 p.195-220, doi:10.14989/151806, 人間文化研究機構地域研究推進事業「現代インド地域研究」
^ 香月法子、「現代のゾロアスター教と改宗問題」『オリエント』 2004年 47巻 1号 p.113-126, doi:10.5356/jorient.47.113, 日本オリエント学会

参考文献

岡田明憲『ゾロアスター教の悪魔払い』平河出版社、1984年10月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4892030821。 

山本久美子『マニ教とゾロアスター教』山川出版社〈世界史リブレット〉、1998年4月。ISBN 4634340402。 

渡辺和子(監修) 編『もう一度学びたい 世界の宗教』西東社、2005年10月。ISBN 4-7916-1293-0。 

青木健『ゾロアスター教』講談社〈講談社選書メチエ〉、2008年3月。ISBN 4062584085。 

関連項目

ゾロアスター教

パールシー

洗礼

灌頂

アーシュラマ(四住期)





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