イギリスにおいては、今日でも特定の勲章の授与時に王室から臣民にナイトが授与されることがあるが、これは英国君主としての「血の権利 (iure sanguinis) による叙任権 (Ius Collationis)」の行使の例である。
ローマ教皇は、教皇庁とバチカン市国の君主としての主権を以て、聖シルベストロ教皇騎士団などの勲章の受勲者に対しナイトの授与を行っている。これらのナイトは総称して「Papal Knights」と呼ばれる[16][17][注釈 2]。
さらに、君主制の国家ではないものの、政府として騎士号を授与する国もある。この例としては、共和国法第646号においてリサール騎士団の創設と騎士叙任を認めたフィリピン共和国の例がある[19]。
なお、民間団体が「ナイト」を模した民間称号を与える例がある(鑑評騎士[注釈 3]、名誉騎士[注釈 4]など)。 イギリスにおいて授与される勲章にはオーダー(Order)、デコレーション(Decoration)、クロス(Cross)、メダル(Medal)の4種類が存在する[22]。このうちオーダーは、中世の騎士団制度に由来する栄典で、王室により設立された騎士団(勲爵士団)へ入団すること自体を栄誉とするものであり、勲章はその団員証である。すなわち、オーダーの受勲とは勲爵士団への入団を意味する[23]。 イギリスには多くのオーダーが存在するが、最も叙勲対象が広いものは大英帝国勲章である。この勲章は主に文化・学術・芸能・スポーツ面で著しい功績があった者に対し、首相の助言(外国籍の者に対しては外相の推薦)によって君主(国王または女王、2024年現在[update]
イギリスにおける制度
イギリスに存在する主な勲章と、ナイトが授与される等級を以下に示す。このうち受勲者がナイトに叙任される階級を黄色で示す。また、下表に示す以外にも、騎士団への入団を伴わないナイトの叙任も行われており、「ナイト・バチェラー」(Knight Bachelor)と呼びわける。
勲章の等級比較等級ガーター勲章バス勲章ロイヤル・ヴィクトリア勲章大英帝国勲章
一等ナイト (Knight) / デイム (Dame)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)
二等ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)
三等コンパニオン (Companion)コマンダー (Commander)コマンダー (Commander)
四等ルテナント (Liutenant)オフィサー (Officer)
五等メンバー (Member)メンバー (Member)
ナイトの授与に際しては、中世の騎士を叙任した主君のしきたりを踏襲した。騎士叙任の儀式で受勲者は女王、王または王族の代理の前に進み出るとひざまずき、儀礼用の剣の平を両肩に受ける。