ドーマルディは、父ヴィースブルの後を継いで国を統治した。大飢饉と天災があればいつもするように、スウェーデン人はウプサラ(Gamla Uppsala)で大犠牲祭を行なった。最初の秋は雄牛を生贄として捧げた。しかしその甲斐なく次の季節の収穫は回復しなかった。次の秋には人間を生贄として捧げた。しかし次の年はさらに不作であった。3度目の秋、犠牲に捧げるものを提供しなければならない時期が来ると、スウェーデン人の多くがウプサラに集まった。有力者らは協議を行ない、この不作が何年も続いたのは自分たちの王ドーマルディに原因があるということで意見が一致した。そして、豊作の年を導くために王を犠牲として提供すること、彼を襲って殺すこと、神のstalle(※英訳のママ)にその血を振りかけることを決定した。彼らはそれを実行した。[2][3]
スノッリはまた、参考文献とした『ユングリンガ・タル』(en:Ynglingatal。9世紀に成立)の一部を書き入れている。Hitt var fyrrat fold rudusverdberendrsinum drotni,ok landherraf lifs vonumdreyrug vapnDomalda bar,ta er argjornJota dolgiSvia kindof soa skyldi.[1][4]
大意:昔、武器を持った人々が、自分たちの王の血で大地を染め、武器は血まみれになった。豊作を願ったスヴェーア人(en:Suiones)たちが、ジュート人の敵(ドーマルディ)を犠牲に捧げると決めたために。[5]
このほか、『ノルウェー史』が、スノッリが引用したものより古い『ユングリンガ・タル』のラテン語で書かれた要約を紹介している。Cujus [Wisbur] filium Domald Sweones suspendentes pro fertilitate frugum dea Cereri hostiam obtulerunt. Iste genuit Domar [...][6]
『ヘイムスクリングラ』の『ハーコン善王のサガ』には、神への犠牲に捧げた家畜の血を神の像や神殿内の壁に塗る習慣が記されている。従って、ドーマルディの血も同様に神殿の祭壇に塗りたくられたことだろう。また同じサガには、犠牲にした家畜の肉を神殿内で開いた宴会で食べる際に、まずオーディンに勝利のための祝杯を捧げ、次にニョルズとフレイに豊穣と平和を願って祝杯をあげる様子が書かれている。豊穣のためフレイに祝杯をあげたということから、豊作を願ってドーマルディの血で染めた祭壇はフレイを奉ったものだと考えることができる。 さらに、『ユングリング家のサガ』において、ガムラ・ウプサラに神殿を築き「フロディの平和」と呼ばれるような豊かで平和な時代を人民にもたらしたのはフレイであったとされる。そのフレイの末裔であるドーマルディの神聖な血はフレイの祭壇に塗られたと推測できる。[8] この伝説は、フレイザーの『金枝篇』にある「王殺し」にも関連があるだろう。これは王という「神人」の力が衰弱し始めると、これを「弑殺」し、その魂を若い後継者に移すという思想である。王を殺す習慣は、王に宿る神聖な魂を守ろうとする、そして王を深く尊敬していることの表れだとしている。従って、飢饉が続いたことが人々には王の力の衰弱と捉えられたため、王を殺し、息子ドーマルへその神聖な魂を移したのである。[9]
さらに古い時代に成立した『アイスランド人の書』は、『ユングリンガ・タル』の中で王の血統を列挙しているが、ヴィースブルの後継およびドーマルの先代の王としてドーマルディの名を挙げている。vii Visburr. viii Domaldr. ix Domarr[7].
フレイ神との関わり
王の犠牲
脚注[脚注の使い方]^ a b ⇒Ynglinga saga at Norrone Tekster og Kvad ⇒Archived 2005年12月31日, at Bibliotheca Alexandrina
^ ⇒Laing's translation at the Internet Sacred Text Archive(英語版の執筆者の参考元)
^ ⇒Laing's translation at Northvegr Archived
^ ⇒A second online presentation of Ynglingatal
^ 大意は次の和訳を参考に大筋を記載した。
水野知昭 『生と死の北欧神話』松柏社、2002年、239頁。
伊藤盡 「アドルフ・ノレーン編フヴィンのショーゾールヴル作『ユングリンガ・タル、あるいはイングリング列王詩』(前編)」『杏林大学外国語学部紀要』第17号、204頁、2005年。
^ Storm, Gustav (editor) (1880). Monumenta historica Norwegia: Latinske kildeskrifter til Norges historie i middelalderen, Monumenta Historica Norwegiae (Kristiania: Brogger), p. 98
^ ⇒Gudni Jonsson's edition of Islendingabok ⇒Archived 2007年5月8日, at the National and University Library of Iceland
^ 『生と死の北欧神話』240-242頁。
^ 『生と死の北欧神話』242-243頁。
引用元
ユングリング家のサガ(ヘイムスクリングラ)
ユングリンガ・タル(英語版ウィキペディア)
ノルウェー史
関連項目
木樵のオーラヴ - 『ユングリング家のサガ』に登場する、同様に飢饉に際して神への犠牲にされた王
『冬至の生贄』
ブロート (北欧神話)(英語版) - 犠牲祭
ギュルヴィ
スウェーデン君主一覧
男神
ウル
オーズ
オーディン
クヴァシル
ダグ
テュール
デリング
トール
エーギル
ニョルズ
ヴァーリ
バルドル
ヴィーザル
ヴィリとヴェー
ヒューキ
フォルセティ
ブラギ
フレイ(イングナ・フレイ|ユングヴィ)
ヘイムダル
ヘズ
ヘーニル
ヘルモーズ
マグニとモージ
マーニ
ミーミル
メイリ
ロキ
ローズル
女神
イズン
イルムル(英語版)
イルパ(英語版)
エイル
グナー