ドリームキャスト
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これに伴い本体200万台の不良在庫整理損(棚卸資産等処分損)や海外販売子会社の清算などが発生し、セガの2001年3月期連結決算で約811億円という当時のゲームメーカーでは最大規模の特別損失を計上する。それまでもドリームキャストの立ち上げと売上不振から、1998年3月期では1988年4月の株式上場以降では初の赤字決算となってしまい、以降2000年3月期までの3期連続で約350 - 430億円の連結純損失を計上した[注 4]

同月末には全世界で売れ残った本機の在庫200万台を日本では9900円という投げ売り状態の破格の定価に改定した。再値下げによって日本市場では売れ行きが好調となったが、2002年前半には一度も優位に立つことはなかった[7]

本体そのものは市場撤退後も直販のドリームキャストダイレクト(後のセガダイレクト)上で新品販売が継続され続け、国内流通品の在庫が尽きた2002年6月頃から海外市場版の本体を日本版のパッケージに巻き直したリアセンブル版の出荷を開始した。リアセンブル版の在庫が無くなった2004年からは修理品の部品を再組立した再生品(リファビッシュ品)の販売が開始された[注 5]。これにより在庫に余裕が生じた事から、一部の新作ソフトが発売される度にソフトとポスターなどをセットにした限定版がセガダイレクト上で発売された。

2007年にこのドリームキャストを最後にセガは家庭用ゲーム機の製造・販売事業から撤退し、家庭用ゲーム市場においては他社のゲーム機向けソフトの開発と販売に専念することとなる。
ハードウェア

日立製作所(後のルネサス エレクトロニクス)が新開発したCPU・SH-4と、英・VideoLogic(後のen:Imagination Technologies)社と日本電気半導体部門(後のルネサス エレクトロニクス)の共同開発によるグラフィック描画エンジンPowerVR2を採用した。これは前世代機であるセガサターンが映像処理用のチップが2基搭載された特異な設計となったため製造コストが高くなった事の反省を踏まえたこと、リスクは高いが国内での製造・調達がしやすいこと、競合製品の初代PlayStationを研究した結果が反映されている[6]。なお家庭用ゲーム機としては初めて法線マッピング専用のハードウェアを備えていた。マーケティング上の理由から、雑誌媒体などで行われた「128bitのゲーム機」というアピールは、SH-4内蔵のベクトル型浮動小数点演算ユニットが32ビット浮動小数点演算を4本同時に行えるため、「32bit×4=128bit」相当ということで、CPUが1命令で扱えるデータのビット長が128bitというわけではない。

OSはセガがマイクロソフト本社およびマイクロソフト日本法人と共同開発したWindows CEのカスタマイズ版を選択することが可能で、DirectXや通信機能に対応している。開発ツールもWindowsベースの物も用意されていた[15]。しかし、メモリ使用効率のオーバーヘッドなどが大きかったため、実際には多くの開発会社は Windows CEを選択せずセガの用意した内製の専用のOSを使用していた。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}SEGA製の3Dグラフィック用のライブラリの名称は「Ninjaライブラリ」であった。ディスクドライブ関連のライブラリは「サルサ」と呼ばれていた。WinCEやDirectXとの関連が言及されたのは、社内事情に詳しいものからは宣伝効果を狙ったためだと言われていて、性能も使い勝手のよさもSEGA製のライブラリの方が上だと言われていた[要出典]。
名称
開発中のコードネームは「KATANA」[6]。名前の由来として、刀ではなく「勝たなアカン。」というハード戦争の勝利への願いから来ているというのが定説となっており、セガもこれは誤りではないとしているが[16]、実際は当時開発されていた開発機2台のうち片方がコードネーム「ブラックベルト」、つまり黒帯であり、その黒帯を斬って勝つという意味を込めた物である[17]。「ドリームキャスト」の名称は候補を募り絞っていったもので特定の命名者はいない[18]。dream(夢)をbroadcast(広く伝える)という願いを込めた造語である[19]
筐体
外見はセガサターンと比べて重箱のような正方形に近いアスペクト比で小型・軽量となっている。本体カラーはホワイトのみであるが、後に限定仕様でカラーバリエーションが展開された。ドア左側に電源ボタン、右側にオープンボタンがついており電源が入ると中心の三角形の部分がオレンジ色に光る。背面に1か所、底面に3か所、排熱用の通気口があり、右側にファンを備えた排熱口が設けられている。リセットボタンはついていないが後述のコントローラによるソフトウェアリセットで可能となる(#コントローラの章を参照)。
光学ドライブ
ディスクドライブはトップローディング式。
ロゴ
ドア(トレイ)部分に「シンボルマーク(渦巻きとDreamcastのロゴタイプ)」がある。この渦巻きは地域によって配色が異なり、日本とアジア地域ではオレンジ、北米地域では赤、欧州などコンポジット信号にPALを採用している地域では青が使われている。本体真正面中心に「SEGA」、その右側には「Windows CE」のロゴがそれぞれプリントされている。
端子
コントローラポートを4個装備し、コントローラーや周辺機器の同時接続が可能である。ただし、ポートを分配するマルチタップは存在せず、最大接続台数は4台までとなる。背面にはAC電源端子・映像出力端子・シリアル端子と、本体出荷時にはモデムが装着されているエクステンションポートがある。エクステンションポートに接続できる機器として、モデム・ブロードバンドアダプターの他に2001年(平成13年)発売の「ドリームキャスト・カラオケ」と、開発中止となったアイオメガZipドライブ[20]の存在が確認されており、この2つは同社のメガCD及び、任天堂のサテラビュー64DDと同じく本体の下に置き重ねて接続する形態となっていた。対応したゲームに限られるものの周辺機器の「VGAボックス」を使用してパソコン用のディスプレイテレビVGA端子に接続し、VGA・31kHz出力のVGA解像度画面でゲームを遊ぶことができた。また、この「VGAボックス」はAV端子S端子に接続する機能も搭載されており、スイッチによりVGA端子かAV端子の出力に切り替えることができた。今までのセガのゲーム機とは異なり、本体性能を底上げする拡張機器(メガドライブのメガCDスーパー32X、セガサターンの拡張〈4MB〉RAMカートリッジ、他社製品ではNINTENDO64の拡張パック等)は一切発売されなかった。
GD-ROM詳細は「GD-ROM」を参照

ソフトウエア供給媒体としてヤマハと共同開発した光ディスクであり、倍密CD-ROMとしての機能と同等形状で1GBの容量を持つ。その他でGD-ROMを再生する機器はアーケードゲーム媒体以外ではほとんど存在せず、事実上ドリームキャスト用ゲームソフト専用規格のディスクとなった。

ドリームキャストソフトの2トラック部分はCD-DAフォーマットになっており、通常は「これはドリームキャスト用のゲームディスクです。1トラック目にゲームのデーターが入っていますので、再生しないでください。」という女声アナウンスが収録されており(ソフトによってはキャラクターのトークやBGMに差し替わっているなどお遊び要素がある)、ドリームキャスト以外の機器で2トラック以外のデータ領域を再生すると機器破損の恐れがある。また、機器によってはCD-DAと認識せず再生できない場合もある。
MIL-CD

生産当初のドリームキャストには、MIL-CD(ミルシーディー)再生機能が搭載されていた。MIL-CDとは「見るCD」の意味で、メディアは通常のCDプレーヤーでは音楽CDとして再生できるほか、ドリームキャストで再生した場合には独自のコンテンツを視聴できるというものである。しかし、MIL-CD対応メディア製品の発売は数種類にとどまった。

MIL-CDの実装原理はCD EXTRAと同一で、マルチセッションディスクとなっており、1番目のセッションに音楽が、2番目のセッションにデータが入っている。ドリームキャストは、この2番目のセッションを読み取って独自のコンテンツを実現した。

一方で日本国外のユーザーを中心にMIL-CD機能を利用して自作ソフトを動作させる試みが存在した。自作ソフトにはDivXプレーヤーや様々なゲームエミュレーターなどがあった。多数の非ライセンスの商業ベースやいわゆる同人レベルの作品が開発・発表され、セガ側の思惑とは別にコアユーザーには浸透していた[要出典]。
コントローラ

附属の標準コントローラはセガサターンのマルチコントローラのデザインを基とした大きめのもので、上部に2つの拡張スロットを装備しているのが特徴。形状の制約と「利用者に引っ張られている感じを与えない」という理由でケーブルはコントローラの下側から繋がっているが、上側からケーブルが出た形状に慣れている人はコントローラ背面に用意されているスリット(凹部)にケーブルをはさみ込むことで、擬似的にコントローラ上側からケーブルが出ているようにすることもできる。

アナログ方向キー(アナログスティック)と、アナログL/Rトリガー(一般的なLRボタンとは異なり、比較的ストロークが深く、押し込み具合で入力が異なる)、方向キー、X・Y・A・Bの4個の丸型のボタンと、三角形のスタートボタンが採用されている[21]。方向キーは任天堂実用新案権を取得し、任天堂のゲーム機に搭載している「十字キー」と外観が酷似しているが、任天堂の実用新案権は形状によるものではなく内部構造についてのものであり、当コントローラは内部構造が異なっているため、任天堂の実用新案には抵触しない。


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