ドライアイス
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また、F1など競技車両では走行直後の駐停車の際に、シリンダー形状のドライアイスを専用の筒に入れ送風機を組み合わせて強制的なエンジン冷却に利用されている。
混合物による寒剤
有機溶媒とドライアイスとの混合物寒剤とすることができる。たとえば、エタノールとドライアイスとでは -72 ℃、ジエチルエーテルとドライアイスとでは -77 ℃の低温が得られる[17]
ワクチンの輸送
アフリカ大陸におけるポリオワクチンや新型コロナワクチン(COVID-19RNAワクチン)の空輸に利用されている。
取り扱い方法
一般家庭での利用

ドライアイスは食用を考慮して製造されていないため、
飲料にドライアイスを入れて炭酸水を作ることは衛生上の観点からも避けるべきである[18][19][注 4]

食品を冷やす場合は間接的な冷却を行うのが好ましい。

長持ちさせる方法

下記のいずれか、可能であれば複数を行うことで、ドライアイスを長持ちさせることが出来る。

ドライアイスを、新聞紙・
タオルなどで包む。

発泡スチロール製のボックスに入れて、空気を遮断して保管する(ドライアイス専用ボックスだと極めて効果が高い)。ただし内圧上昇による破裂事故を防ぐためガス抜き穴は必ず設けておくこと。

発泡スチロール製のボックス内に、詰め物をしてスペースを作らないようにする。

密封型のビニール袋に入れて、空気を遮断して保管する。破裂を防ぐため、穴を最低 1箇所は開けること。

冷蔵庫の冷凍庫に入れて保管する。

暗所・冷所・風が通らない場所に置く。

砕かず、大きなブロック状のまま保存する。

液体窒素の中に入れる。

危険性・取扱い上の注意点「en:Hypercapnia」も参照
二酸化炭素中毒

ドライアイスは日常的に用いられているが、高
濃度(およそ7–8パーセント以上)の二酸化炭素を吸入すると、たとえ酸素が大気中と同等程度含まれていても、二酸化炭素が呼吸中枢毒性を示すために自発呼吸が停止し、窒息することがある。特に昇華して二酸化炭素の気体になった場合は足下に滞留しやすいため、窒息あるいは酸欠による事故の危険がある。冷凍庫のような屋内や、自動車内で扱う際は、締め切らずに通気や換気を行う必要がある。たとえば 350 gのドライアイスを乗員室容積 2,000 Lの密閉した車内に放置すると、1時間で車内の炭酸ガス濃度は約10パーセントとなり、中毒を起こして意識不明に陥る危険性がある[20][21][22]

葬儀の現場で棺の中に顔を突っ込み二酸化炭素中毒による死亡事例が報告されており、消費者庁では注意を呼びかけている[23]。実験で二酸化炭素を充満(約90パーセント)させた状態で顔部分の扉を静かに開け、濃度の変化を記録したところ、開けた直後こそ約60パーセントまで低下するものの、約50分経過した状態でも濃度は安全領域まで下がらず、『ほとんど即時に意識消失』する濃度である30パーセント以上を維持した。このことから消費者庁は棺の中に顔を入れないよう注意喚起するとともに、式場の室内空気の換気を充分に行うこと、そして線香番などで一人にならないよう呼びかけている[23][注 5]


高い場所でドライアイスを扱った際、二酸化炭素が離れた低い場所に流れ込み、そこで酸欠を起こした事故もある。

「使用を誤ると酸欠事故の恐れがある」「廃棄できず、昇華するのを待つ必要がある」「商品表面に二酸化炭素が浸透し、炭酸飲料のような刺激感を与えてしまう」「二酸化炭素は地球温暖化の原因物質というネガティブイメージがある」といった欠点のため、近年ではドライアイスに代わって、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高吸水性高分子と水とをポリ袋に詰めて凍らせた蓄冷剤が普及してきている。特に冷蔵でよいケーキの持ち帰り用には大部分がこの蓄冷剤に取って代わられた。なおドライアイスは前述のとおり石油精製やアンモニア製造などの化学合成プラントから必然的に出る副生品、またはビール工場等の発酵過程で発生する副産物であるため、ドライアイスの使用がそのまま地球温暖化に直接つながるわけではない。

ペットボトル破裂事故

#製造方法で述べたとおり、ドライアイスは圧縮された気体であり、昇華して気体になると体積は約750倍になる。当然ながら、ガラス瓶やペットボトルなどの容器で密閉保存してしまうと、容器内の圧力が急激に上昇してしまう。さらにその状態で、

容器が長時間にわたって放置される

容器を振る

容器を落とす

容器を床や壁などに叩きつける

容器を投げ飛ばす

などとなって、容器に衝撃が加わると、圧力に耐え切れない容器が破裂・爆発し、破片やキャップが飛び散り、非常に危険である。

実際に、炭酸水を作ろうとしてペットボトルやビン容器に飲料とドライアイスを入れて密閉した状態で容器を振るなどしたところ、容器が破裂してビンの破片やキャップなどが吹き飛び、腕や顔面に重傷を負ったという事故が相次いでおり、国民生活センターが注意喚起を行う事態に発展した。中には「破裂して吹き飛んだペットボトルのキャップが眼球に直撃してしまい失明」という事故も報告されている[24]
凍傷

直接手で触れると
凍傷を起こす危険がある。余ったドライアイスは風通しが良いところで放置し、昇華し切るのを待つこと[18]

直接口に含む行為は凍傷や二酸化炭素 (CO2) 中毒の恐れがあり危険である。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 1 kgのドライアイスが昇華して?15 ℃の炭酸ガスになるまでの呼吸熱量 (kJ/kg)[2]として一般的に採用される値。
^ もし0 ℃までなら636 KJ/kgとなる[3]
^ 水の融解熱は333.5 KJ/kg である。
^ ドライアイスの製造に使用される二酸化炭素は食品添加物・医薬品向けグレードのものではなく、工業用の規格品であり不純物について検査に合格したものではない。
^ 日本の労働安全規則における二酸化炭素の濃度上限は 1.5 %である。二酸化炭素濃度 7.0 %になると 15分程度、10.0 %では10分程度で意識不明になる。そして25.0 %になると呼吸低下・麻痺等を起こし数時間後に死に至る[21][22]

出典^ a b 「二酸化炭素」『岩波理化学辞典』長倉三郎ほか(第5版CD-ROM版)、岩波書店、1999年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4001301024。 
^ “物性データ - ドライアイス”. 日本液炭. 2024年1月17日閲覧。


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