ドメイン_(分類学)
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細菌詳細は「細菌」を参照

シアノバクテリアマイコプラズマは細菌の2つの例である。細菌は古細菌と同様に原核細胞であるが、その細胞膜リン脂質二重層でできている。細菌の細胞膜は古細菌のそれとは異なり、古細菌に見られるエーテル結合を特徴的に欠いている。内部的には、細菌はリボソーム内に異なるRNA構造を持っており、それらは異なるカテゴリーに分類されている。これにより、2ドメイン系と3ドメイン系は、細菌と古細菌を別のドメインに置く。

細菌というドメインには非常に幅の広い多様性がある。その多様性は、異なる細菌系統間での遺伝子交換によってさらに複雑さを増す。遠縁の細菌間に重複遺伝子が存在すると、細菌種を区別したり、地球上の細菌種を数えたり、それらを木構造に整理したりすることはほぼ不可能になる(ただし、枝と枝の間に相互接続が含まれていて「木」ではなく「ネットワーク」となっている場合を除く)[1]
真核生物詳細は「真核生物」を参照

真核生物と呼ばれるドメイン(domain Eukarya)は、膜で囲まれた細胞小器官(遺伝物質を持つ核を含む)を持ち、植物界(Plantae)、原生動物界(Protozoa)、動物界(Animalia)、クロミスタ界(Chromista)、菌界(Fungi)の5つの(kingdom)で代表される[1]



2ドメイン系詳細は「2ドメイン系(英語版)」を参照ゲノム配列に基づく2ドメイン系の生命樹の例。生命の2つのドメインは、細菌 (上側) と古細菌 (下側) である。真核生物は古細菌から分岐する (右下)。

2ドメイン系(英語版)は、生命樹のすべての生物を古細菌と細菌の2つのドメインに分類する生物学的な分類である(真核生物は古細菌に含まれる)[7][8][3]。これには、1980年代にレイクが提唱したエオサイト説が先行したが[9]、当時の証拠により3ドメイン系にほぼ取って代わられた。その後、2017年にアスガルドと呼ばれる古細菌の大きなグループ(上門)が発見され[10]、それが真核生物の進化的ルーツとなり、真核生物が古細菌ドメインのメンバーであることが示唆されたことから、2ドメイン系はより広く受け入れられるようになった[11]

アスガルド古細菌の特徴が3ドメイン系を直接否定するものではなく[12][13]、真核生物は古細菌に由来し、したがって古細菌に属するという考え方は、遺伝子プロテオミクスの研究によって強化されている[14]。3ドメイン系の場合、真核生物は主に、古細菌や細菌には見られない「真核生物のシグネチャータンパク質」の存在によって区別される。しかし、アスガルドにはそのようなタンパク質をコードする遺伝子が複数存在しており、これは「真核生物のシグネチャータンパク質」は古細菌に由来することを示唆している[3]
最上位の分類体系の比較詳細は「生物の分類」を参照

生物の最高階級の分類は、基礎をなすゲノムの進化の違いや細胞の基本的な構造に基づいており、前提となる系統樹の違いによりさまざまな分類方法が提案されている。次にいくつかの例を示す。
2帝系 (1998)
1998年に、エルンスト・マイヤーが提案した2帝系(英語版)は、生物全体を原核生物(またはモネラ)と真核生物の2つの最上位グループに分けるものである[15][16]
エオサイト説 (1984)
1984年に、ジェームス・A・レイク(英語版)らが提案したエオサイト説[17]は、細菌と古細菌という2つのドメインを仮定し、真核生物は古細菌から分岐した下位クレードに含むとする[18][17][19]
5ドミニオン系 (2012)
ウーズらによる3ドメイン系には、プリオンウイルスのような細胞以外の生命(英語版)は含まれていない。2012年、Stefan Luketaは、従来の3ドメイン系に Prionobiota(無細胞で核酸を持たない)と Virusobiota(無細胞だが核酸を持つ)を加えた5ドミニオン系を提案した[20]。(参考: ウイルスの分類
2スーパードメイン
Acytota/Aphanobionta と呼ぶ非細胞生命(英語版)を分類の最上位に位置づけた研究者もいる[21]。これにより、非細胞生命と細胞生命の2つのスーパードメインが定義される可能性があるが、議論の余地もある。

無細胞生物を含めた生物学的分類分類学的ルートノード2スーパードメイン
(議論あり)2帝系(英語版)3ドメイン系(英語版)5ドミニオン[22]
56界エオサイト説
2ドメイン系(英語版)
生物群 / 生命

Biota / Vitae / Life非細胞生物
非細胞生命(英語版)

Acytota / Aphanobionta
Virusobiota (ウイルス, ウイロイド)

Virusobiota (Viruses, Viroids)
Prionobiota (プリオン)

Prionobiota (Prions)
細胞生物

Cytota原核生物
(モネラ)

Prokaryota / Procarya
(Monera)細菌

Bacteri細菌

Bacteriaモネラ

Monera真正細菌

Eubacteria細菌

Bacteria
古細菌

Archae古細菌

Archaea古細菌

Archaebacteria古細菌 (真核生物を含む)

Archaea incl. eukaryotes
真核生物

Eukaryota/Eukarya原核生物界 Protista
菌界 Fungi
植物界 Plantae
動物界 Animalia

関連項目

生物学的暗黒物質
(英語版) - 未分類またはよく理解されていない遺伝物質を指す非公式の用語

ネオムラ - 古細菌と真核生物の2つの生命ドメインから構成されるクレードの提案

系統学 - 生物のグループ間またはグループ内の歴史と関係を研究する学問

タンパク質構造 - アミノ酸鎖分子内の原子の三次元配置

レルム (ウイルス学)(英語版) - ウイルス分類学における最高位の分類階級

体系学 - 生物の多様化や生物間の時間的関係を研究する学問

脚注^ a b c d e f g h i j Woese C, Kandler O, Wheelis M (1990). “Towards a natural system of organisms: Proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya”. Proc Natl Acad Sci USA 87 (12): 4576?4579. Bibcode: 1990PNAS...87.4576W. doi:10.1073/pnas.87.12.4576. PMC 54159. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 2112744. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC54159/. 


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