ドイツ連邦共和国基本法
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4月25日に連合国と議会評議会の合意が行われ、基本法の制定はほぼ確定的となった[18]
制定と批准

1949年5月8日、議会評議会は基本法を採択し、5月10日には選挙法を採択した[19]。5月12日、議会評議会代表、州首相、そして軍政長官とそのスタッフが集まり、基本法が連合国側に提示された。軍政長官達は本国の訓令に基づいてこれを承認し、基本法は批准手続きにうつった。5月18日から21日にかけて各州議会で批准の賛否が問われ、バイエルン州を除くすべての州が批准を行った[20]
特徴
暫定的性格
上述の経過から、ドイツが再統一されるまでの暫定的な憲法としての建前を持っていた。しかし、ドイツ再統一後、新しい憲法は制定されず、基本法を全ドイツに適用する措置が採られた状態のままである。
民主的かつ社会的な国家
第一次世界大戦の敗戦をきっかけに制定されたヴァイマル憲法では、社会権(社会的基本権)に関する詳細な規定が設けられていた。これに対し基本法では、これらの社会権に関する規定はほとんど受け継がれておらず、「民主主義に基づく社会的な連邦国家(Ein demokratischer und sozialer Bundesstaat)」という国家目的を規定することにより、社会権の実現を議会に委ねることを目指している。こうして、税金および社会保険料が25%を越える高負担が許容され、結果の公平を目指している。
憲法忠誠(戦う民主主義)
全権委任法の制定により、極めて強引なやり方であったものの、形式的には合法的であったナチスの権力掌握を許した歴史的教訓から、基本法は基礎としている自由主義および民主主義を防衛する義務を国民に課し、表現の自由結社の自由などを自由・民主主義に敵対するために濫用した場合は、これらの基本権を喪失する旨の規定が置かれている。基本法の法秩序を廃絶せんとする者に対して、全てのドイツ国民は、他に全く手段がない場合、抵抗する権利を有し(抵抗権。1968年に追加制定)、また憲法を超越、特に、人権や民主主義を否定するような法律の制定は認められないなど、「戦う民主主義」を謳っている。
建設的不信任決議案等
ヴァイマル共和国時代に内閣不信任案が乱発されて政権が不安定になったことが、ナチスの台頭を許した要因の一つとなったとの反省から、議会が次期首相候補を定めることなしに、内閣不信任案を動議できない。また、連邦議会解散権は大統領にある。
軍隊の指揮権
ヴァイマル共和国時代には、軍隊の指揮権を含む各種の大権はドイツ国大統領に属しており、議会はコントロールできなかった。基本法下では、ドイツ連邦軍の指揮権は平時にあっては国防大臣に、戦時にあっては首相に委ねられるシビリアン・コントロールが明確に規定されている。かつてのプロイセン王国ドイツ帝国の君主に匹敵する強大な権限を持っていた大統領職は、新憲法下では儀礼的・象徴的なものに留められ、事実上は議院内閣制に移行した。
構成
前文 (Praambel)

連邦共和国を構成する州の列挙。ドイツ国民は神と人類に対しこの憲法制定について責任を負うべき事。
I. 基本権 (Die Grundrechte)

人権平等の尊重。男女、信仰、宗教、言語、兵役拒否、学問集会結社移動職業自由。教育、養育を受ける子供の権利。教育権と保護者の選択権。義務教育、公的宗教教育を含む学校制度。 信書、郵便、通信の守秘義務難民庇護権。民主主義と自由を乱す者の基本権の喪失。自由からの逃走の禁止(戦う民主主義規定)。

第1条:人間の尊厳の不可侵。

第2条:公共の福祉と憲法的秩序または道徳律に反しない限りの自由と人権の最大限保障。

第5条:学問の自由保障。教授内容は憲法に違反せず濫用されない範囲で。

第9条:結社の自由保障。但し目的が憲法に違反しない限り。

第10条:通信の秘密保障。

第17条:兵役または代替任務にある者の基本権制限

第18条:自由権の濫用の禁止。

II. 連邦及び州 (Der Bund und die Lander)

動物の権利に関連する『自然的な生活基盤』の保護[注釈 1]

第20条:国家権力は国民に由来し、司法府立法府行政府が代理して行使する。抵抗権

第21条:政党(自由と民主主義に反する、或いは国の存亡を脅かす政党は違憲)。

第22条:(1)首都ベルリンと規定。(2)連邦旗の規定(黒・赤・金)。

旧23条:ドイツ連邦共和国への加入規定。

新23条:ヨーロッパの統一事業(EU)への協力(EUへの主権的権利委譲)。

第24条:国際機構設立による主権制限の許可。

第25条:国際法は憲法の一部を構成する。

第26条:諸国民の平和的共存を侵す行為、特に侵略戦争の準備の禁止。企んだ者への処罰。


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