言語学上、英語もドイツ語と同じインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属し、2千年ほど前に共通の祖先から分岐したと考えられるため、共通点が多い。しかし、両語がたどった歴史的背景から(とりわけ中世以降)、相違が広がった。以下に主なものを記す。
英語は大母音推移を蒙ってつづりと発音の乖離が大きく、またイングランドがフランス語話者のノルマン人王朝の支配などを受けたり、ケルト系のウェールズ・スコットランド・アイルランドを支配したりしたため、他言語から長年にわたり語彙を借入した。よって発音の例外が非常に多い(アルファベットの読み方と違う読み方をする語彙が相当数存在する)が、ドイツ語の場合はつづりと発音の関係は規則的である。いくつかの例外(例: eu を [??] と発音する等)を除いてアルファベットのつづり通りに発音するものが多い。詳しくはドイツ語音韻論を参照のこと。
英語では代名詞以外は格変化しないが、ドイツ語では一般名詞およびそれに結びつく冠詞、形容詞にも主格・属格・与格・対格の格変化が残っている。ただし近年口語を中心に属格の衰退が著しく、英語の of に相当する前置詞 von が代用されたり、属格を用いる前置詞に与格を用いることが認められるようになってきている。
英語では名詞の性は消滅したが、ドイツ語では男性名詞・女性名詞・中性名詞を区別する。
英語では動詞の人称変化は3人称単数現在の -s(例: make → makes)と be 動詞とを除いて全て消失したが、ドイツ語では4?5通りに活用する(例: ich gehe、du gehst、er/sie/es geht、wir/Sie gehen、ihr geht)。
英語では衰退した接続法(例: I suggest that he go there at once.)が、ドイツ語では幅広く使われる。
英語では基本的に主語+動詞+目的語のSVO型だが、ドイツ語では動詞の位置が2番目(平叙文)、1番目(疑問文・命令文)、あるいは文末(副詞節など)というように変化する。本質的には日本語と同じ主語+目的語+動詞というSOV型である。V2語順を参照のこと。
英語では複合できる名詞の数が限られるのに対し、ドイツ語では複合名詞がよく使われており、とても長い単語がある。例として、「Donaudampfschiffahrtselektrizitatenhauptbetriebswerkbauunterbeamtengesellschaft」(ドナウ汽船電気事業本工場工事部門下級官吏組合)などが挙げられる。辞書にない単語が作られる場合もある。
日本語との関係[ソースを編集]
日本語におけるドイツ語の影響[ソースを編集]ウィクショナリーに日本語 ドイツ語由来に関するカテゴリがあります。
近代の日本は、帝政ドイツ、ヴァイマル共和政、ナチス・ドイツを通じて、ドイツから様々な影響を受けた。西洋医学を輸入する際にドイツ人教師を招いた影響もあり、多くの医学用語がドイツ語から借用され、かつてカルテはすべてドイツ語で書いていた。
1960年代(昭和30?40年代)までは、例えば補酵素(コエンザイム)をコエンチーム、ウイルスをヴィールスなどとドイツ語式に学習されていたが、現在ではそれぞれ英語・ラテン語読みが一般化している。工学等でもドイツにならう部分は多く、鉄道用語などをはじめとして、ドイツ語発祥の用語が多く使用された。
戦前の日本の教育では英語に次ぐ重要な外国語として見なされ、たとえば旧制高校では文甲、理甲クラスが英語を、文乙、理乙クラスがドイツ語を第1外国語として、他方を第2外国語として学んだ。フランス語を第1外国語、英語を第2外国語としたのは、文丙、理丙クラスであるが、設置している高校は少なかった。
エネルギーやアレルギーなどの物理学・化学用語、パトローネ、レフなどの写真用語(カメラもドイツ語発音である)、さらにはアインザッツやタクトなどのクラシック音楽用語(音名なども、ドイツ語名(アー、ベー、ツェー..)を使う人が多い)、ピッケル、リュックサック、ザイル、ツェルト、シュラフ、ヒュッテのような登山・山岳用語、プルークボーゲン、ゲレンデ、ストック等のスキー用語などにも使われている。