ト書き
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なおシェークスピアの作品群は、すぐれた古典戯曲であり(つまり、印刷された古典文学作品として楽しめ)、同時にそのままで特上の演劇台本(演劇脚本)である[1](つまり舞台上演用の脚本として用いても最上級のものである)。一方、作家によっては、表現したいこと(読者に伝えたいこと)と作品形式の関係を熟慮して、あえて小説ではなく戯曲形式(脚本形式)で作品を書いて、そもそもそれが未来永劫舞台で上演されることを全然期待していないという場合もあり、つまりあくまで最初から読者に "読み物" として楽しんでもらう目的で戯曲形式(脚本形式)で作品を書くこともある。
漫画原作の中の脚本形式のもの
漫画作品の原作には脚本形式のものも含まれる。ただし漫画原作は脚本形式でないものもあり別概念であり、本来は当記事で説明するのが妥当か微妙なので(おそらくは本来は【漫画の原作】という別記事を立てるべきなので)、詳細は末尾の#漫画原作の節で説明。
あらすじ

物語を簡単に紹介したもの。四百字から八百字程度にまとめ、エンディングまで書く。最初に必要なもの。スポンサーやプロデューサーによっては、あらすじがないと脚本を読まないことが多い。一般的にストーリーやプロットと呼ばれることがあるが、これらは別なものになる。企画書とは異なる。
ストーリー
物語の表面を浅くなぞったもの。深く掘り下げたものは必要なく、あらすじよりも短く、盛り上がりを誇張して企画書に添付することが多い。
プロット
構成や展開を意識したもの。ストーリーやあらすじよりも掘り下げ、脚本執筆の準備に近いもの。
人物表
脚本・戯曲
脚本の中に登場する人物を主役から端役まで一覧表にしたもの。主要な人物は名前、年齢、性別、人物関係が書き込まれる。名前のつかない人物は、通行人1、若しくは店員Aなどの記号で表記する。
漫画原作
書式は脚本と同じ。身長差や顔の特徴、またキャラクターを立てる行動を要求される。《例:両津勘吉(28)警察署・巡査》など。性別、人間関係は割愛されることが多い。
柱書き

※「柱」「柱書」などとも呼ぶ。
脚本・漫画原作
シーンの最初に書かれ、その場所と時間を示している。柱の頭にはシーンナンバーを振る。シーンナンバーは打ち合わせを円滑に進め、映像の場合は撮影計画、または編集作業に必要とされる。《例:○警察署・外観(夜)》など。原稿を執筆する段階では、シーンナンバーは○で示される。これはシーンが移動する場合があるため。印刷される段階で、初めてシーンナンバーを振ることがほとんどである。英語では、sluglineと呼ぶ。場所の名称の前に、その場所の内側なのか外側なのかを表すために、INT(内)やEXT(外)などの記号を付記するのが、アメリカ映画脚本では一般的である。たとえば、ただ「ジョージの家」と書いてあっても、家の前なのか室内なのかが区別できないからである。
戯曲
舞台装置を転換してシーンを変えることを「場」。幕を下ろすほどの場面転換や休憩を挟む間を「幕」という。したがって戯曲の柱に当たる部分はそれにナンバーを付けたものが書かれる。《例:第一幕 第一場 下町の路上》など。
台詞(セリフ)
脚本
登場人物がしゃべる言葉を「」で括って記述する。「の前に役者の役名を記述する。性別が分かりやすいように男性は名字、女性は名前で書くのが一般的。ナレーションの場合はNと書く。その場にいない(映像では画面に映っていない)人物の台詞は、冒頭に(OFF)《読み:オフ・ボーカル》と書くことで指定する。内心の台詞は(M)《読み:モノローグ》と表記する。《例:両津(OFF)「そんなことが……」》または《例:山田の声「そんなことが……」》など。
戯曲
書式は脚本と同じ。劇場の規模によっては、役者の演技や持ち道具、小道具が見えない場合が多々あるため、または演出家の狙いで状況を台詞で説明する場合が多い。これによって、大怪獣が現れたり、数百人の機動隊に囲まれたりする芝居の世界観を作り出す。台詞の流れを印象付けるため、「倒置法」という台詞回しを使うことがある。《例:「今日はいい天気だね」→「いい天気だね! 今日は」》など。
漫画原作
書式は脚本と同じ。台詞は吹き出しに収まるように要求される。長台詞の場合は三行台詞があって行動(ト書き)し、また三行台詞を繰り返す。基本的にはテキストなので、「強敵(ライバル)」または「友人(ライバル)」などのルビを入れて、二つの意味を持たせることもある。また擬音(オノマトペ)なども原作者の仕事である。語尾などにキャラクターを立てる台詞を要求されることもある。《例:「…だよーん」「…なのだ」》など。
ナレーション
登場人物の心象や内心、人間関係の説明。状況、事情などを語るときに使われる。登場人物自らがナレーションする場合と、別にナレーターを立てる場合がある。多用すると、映像作品としての意味を問われる場合があるので、あまり好まれないが、見せたいシーンの構成や、込み入ったストーリーでは物語の整理をつけ、分かりやすくするために使われる。同じような意味で、物語の冒頭でテキストされることもある。
ト書き

「ト書き」の言葉の由来は歌舞伎の台本の「…と立ち上がりながら」などの「と」から来ている。文体は「…であった」などの過去形ではなく「…である」などの現在進行形で書くのが一般的である。
脚本
登場人物の動作や、照明、演出の大まかな指示を記述する。目に見える具体的な動作を書くことが必須とされており、人物の心理描写や抽象的な表現を書くことは通常は行われない。また、必要ならば映像効果を指定する。最終的には監督、演出家の采配に委ねるが、これは台詞で人物の性格を浮き彫りにすると同様、映像描写に関わることは脚本家の仕事である。また、男女の絡み、いわゆる濡れ場やアクションなどはストーリーの流れだけ書き、具体的なことは書かない。この長さで全体の尺の長さが左右されることが多く、アクションは特に殺陣師の領域になるためである。
戯曲
舞台上に何があるか。役者は板付きか。上手、下手どちらから出るかが中心になる。舞台装置との絡みがあればそれも書くが、重要でなければ書かない。台詞よりも映像、作画で見せる脚本または漫画原作とはここが大きく違う。台詞だけでストーリーが分かり、役者、演出家が自由に表現できる「遊び」がある。様式が決まっている歌舞伎台本と戯曲とは、今日では大きな隔たりがある。
漫画原作
美術、小道具、衣装などのスタッフがいないためト書きの他、必要ならば設定書を作成し全て書く(主人公はタバコを吸うか。吸うなら銘柄は何か。マッチかライターか。ライターなら?など)。時代や年代が大きく分かれる場合は、そのストーリーの年表も作成する。また原作を書く上で収集した資料など、作画にも必要なものは揃える場合もある。濡れ場、アクション・シーンもできるだけ具体的に、なおかつ荒唐無稽に作りこむ。ストーリーの構成も起承転結ではなく、「起承転」までで、引きを作る。これは連載でも読み切りでも同じだが、ストーリーの内容によってはラスト・シーンに作画を見せる余韻を作る。1ページの大ゴマや見開きなどの指定も要求される場合もある。
梶原一騎は少年小説出身なので、原作は小説式で書いていた。
ハコ書き
脚本・戯曲
テーマの訴求。尺(時間)の制限。シーンとシークエンスの整理などの作業。例えば起承転結を四つのハコに見立てたものを、大バコと言い、さらに具体的に構成したものを小バコという。台詞まで書かない、ト書きの積み重ねが多い。この時点で制作者や演出部との打合わせをする。
大バコ
大まかな構成。ここではトーンを統一するが具体的なことは書かない。テーマを「起承転結」に落とし込んでいく作業のみに限られる。「結」、落としどころ(ラスト・シーン)を決めてから、ストーリーの雰囲気を掴む「起」(ファースト・シーン)を考え、「承」でストーリーを転がして「転」でサプライズを作る場合が多い。
中バコ
シークエンスの考え方。大バコで作った「起」(ファースト・シーン)の中にも「起承転結」がある。ここで主要人物をどう紹介するかなどを作る。「承」の中での起承転結は、主要人物の葛藤、絶望、新たなる希望などでドラマを作る。後半にサプライズがあれば、ここで伏線を張る。ストーリーで一番長く面白く見せる場所。「転」の中での起承転結では、今までの「起」「承」が助走であれば、ここでジャンプし高く跳躍する場所。サプライズがあれば先に作ってから「承」に伏線を張る場合が多い。高いジャンプが着地した場所が、「結」の中での「起」になり、テンポのよい「承転結」(ラスト・シーン)を作っていく。
小バコ
シーンの考え方。必要ならばカット・バックやモンタージュなどを挿入し、シークエンスをさらに細かく作り込む。「起」の「起」の中での起承転結では、主要人物または主人公が暴力的ならばアクションで始めるのか、逆に優しい人物に見せるのか。誰に対してその行動を取らせるか。クセや特徴、眼鏡は掛けているか、昼か夜か、雨は降っているか、降った後かなど、決定していく。「起」の「承」の中での起承転結では、もうストーリーは始まっているのか、これから巻き込まれていくのか、主人公に相棒がいるならここで出すか、二人の相性はよいのかなどを作り、「起」の「転」の中での起承転結では、敵対する相手が出ているなら、それにどう対処するか、主人公と相棒は相対する性格ならば、ここでその性格を明確にする。「起」の「結」の中での起承転結では、主人公、または相棒の立てた方法にどちらかが引っ張られていく、または別な登場人物が助けを求めにくるならそれを決定し、「承」の「起」の中の起承転結につなげていく。ここまでで、「大バコの起承転結」からさらに「中バコの起承転結」、そして「小バコの起承転結」まで具体化し、必要ならば「小バコの起承転結の中の起承転結」まで具体化する。各々の人物像が浮かび上がる、または確定しているはずなので、言うべき台詞も決まることが多い。また、あえて台詞を作り込むことで人物を強調させる。なお、作家または作品によっては、上記のように順序を踏まえて書く。他に、大バコから小バコに移る。または小バコを書いてから、大バコに直して整理するなどの方法をとる。
脚本料金の目安・基本相場

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テレビドラマ
基本相場は放映時間1分=1万、2時間ドラマを例にすると実質放映時間100分×1万円=100万円。ただし、拘束時間は1本につき1 - 3か月、その間何回も修正がある。中堅からベテランの場合、1時間ドラマ:80万 - 100万円、2時間ドラマ:120 - 200万円契約によるが、再放送されると脚本料の半額が入る(最初の脚本料に再放送1回分が含まれている契約の場合、2回目の再放送から)。プロット:1本=1 - 10万円。
映画脚本
新人なら1本5 - 50万円。新人以外は1分=1万円。ベテランになれば、300万円以上。大作では1000万円もある(ただし拘束期間も長い)。
二次使用料(DVD等)
著作者印税:1.75%。例)DVD(3980円)×1000本×0.0175=69650円の二次使用料。これらの収入が定期的に入るわけではない(2007年7月現在)。
映像作品のシナリオで用いる略語

以下は、時間経過を表すための撮影技術。

F・I=フェードイン(徐々に現れる)

F・O=フェードアウト(徐々に消える)

C・I=カットイン(突然現れる)

C・O=カットアウト(突然消える)

O・L=オーバーラップ(二つのカットが重なり合って次のシーンに変わる)

W・O=ワイプ・アウト(車のワイパーを振るようにシーンが変わる、若しくは消える)

映像作品のシナリオの描写手法

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フラッシュ(非常に短い回想、若しくはイメージ)

シャドウ(実態を見せずに状況を表現する)

モンタージュ(異なるカットやシーンの積み重ねで状況を説明する)


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