アース神族がことごとくロキにこき下ろされる『ロキの口論』では、トールは最初はその場にいなかったが、やがて会場に行き、ロキを激しく咎めて退散させた[11]。
『アルヴィースの言葉』においては、娘のスルーズがドワーフのアルヴィースに結婚させられそうになると、トールはアルヴィースに朝まで次々に質問を出して答えさせ、朝の光を浴びせて石にした[12]。
ラグナロクにおいては大蛇(ヨルムンガンド)に致命傷を与えるが、そのあと「9歩退く」。これは一般に「大蛇の毒を受けたために9歩下がった後に死んだ」と解釈される[13]。
スノッリのエッダ
ギュルヴィたぶらかしトールとスクリューミルが出会う場面。18世紀の写本『SAM 66』に描かれた、トールがヨルムンガンドを釣り上げる場面。ヒュミルの手に釣り糸を切るナイフが見える。リトを火の中に蹴り入れるトール。エミール・デープラーによる(1905年)。
『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第42章では、神々に作られて間もないミズガルズを巨人から守るための砦を作った鍛冶屋の正体が山の巨人と知り、鍛冶屋をミョルニルで倒すエピソードが語られる。神々と鍛冶屋は、フレイヤと太陽と月を砦の報酬にと約束していたが、破られることとなった[14]。
同第44-47章によると、巨人ウートガルザ・ロキの宮廷に招かれた時は魔術にはまってしまった。まず宮廷に着く前に巨人スクリューミル(実はウートガルザ・ロキの変身した姿)と出会い、食糧の入った袋を開けられなくされ、スクリューミルの手袋を小屋と思わされてそこで休息した。さらに宮廷で行われた飲み比べで杯(実は大海とつながっている)を飲み干せず馬鹿にされる、エリ(en)という老婆(実は「老い」の化身。神といえど寄る年波には勝てない)との相撲に敗れるなど散々な目にあっている。[15]。なお、この時の出来事は『ロキの口論』でロキに蒸し返されている。
同第48章では、『ヒュミルの歌』でも語られているヨルムンガンドとの対決が再び語られる。若者の姿となって1人でヒュミルを訪ねたトールは、ヒュミルが船で海に出るのに同行した。ヒュミルの飼う牛のうち最も大きいヒミンフリョートの首を餌にし、ヨルムンガンドをうまく釣り上げたものの、ヨルムンガンドが抵抗し、トールは舟板を破って海底に足が着くほど強く踏ん張り、ヨルムンガンドを引き上げた。トールがミョルニルで大蛇を粉砕しようとした瞬間、この光景に恐れをなしたヒュミルが餌切りナイフで釣り糸を切った。ヨルムンガンドは海中に逃れ、怒ったトールはヒュミルを殴りつけ船の外に飛ばしたという[16]。
トールの短気ぶりを語るエピソードが同第49章で紹介されている。バルドルと妻ナンナの葬儀の際、遺体を乗せた船が大きすぎて動かせず、女巨人ヒュロッキンが来て勢いよく海に進めたとき、トールは怒ってヒュロッキンを殺そうとしたため神々がとりなした。また、ミョルニルで火葬用の薪を清めていたところに小人リト(en)が飛び出してくると、トールは彼を火の中に蹴って入れてしまった[17]。 ロキにとって神々で最も仲が良かったのがトールと推定される。しかし、激情家であるトールはロキの悪戯に対して真っ先に怒りを見せることも多く、『スノッリのエッダ』第二部『詩語法』の伝えるところでは、トールの妻のシヴの自慢の金髪をロキに切られて丸坊主にされた時、トールは怒りのままに彼を追い回した。シヴのものと全く同じ金髪を小人に作らせることをロキに約束させてトールは怒りを収めたが、これが小人の鍛冶勝負に発展し、神々は大切な宝具を手に入れることとなった。それがすなわちミョルニル、ドラウプニル、金のたてがみの猪であり、グングニル、スキーズブラズニルである[18]。また、ウートガルズへのトール遠征時にロキが同行を申し出た際、その理由を聞かれ「トールは頭が鈍いから、(頭の切れる)自分がいたほうが安全」という旨を言っているがトールは怒りを見せず、寝床に使える場所が見つからず野宿になるのかと不安がるロキに対してトールは「フェンリルの親なのにオオカミが怖いのか」と笑う等、堂々と皮肉を言い合えるほどの仲だったという描写も確かに存在している[19]。 『詩語法』では、巨人の中で最強のフルングニルを倒すエピソードも語られている。フルングニルは、トールと共に決闘場所に来たシャールヴィの嘘を真に受けて無防備な状態となった。トールはミョルニルを、フルングニルは武器の砥石を投げつけたが、ミョルニルは砥石を2つに割り、さらに飛んでフルングニルの頭蓋骨を粉砕した。
詩語法