トンネル
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新線切り替えにより廃止され、名神高速道路建設などにより部分的に消滅したが、東側の坑口が現存する。
トンネルの施工
工法
矢板工法

掘削した壁面に矢板(やいた)という木板(主に松が使用され「松矢板(まつやいた)」と呼ばれた)や鉄板(「鋼矢板(こうやいた)」と呼ばれる)をあてがい、支保工という支柱で支え、その内側をコンクリートなどで固める「巻き立て」によって仕上げる。日本では1980年代の東北新幹線上越新幹線建設までこの方法が取られていた。

しかしながら、事前調査の不足も重なり、特に蔵王トンネルでは工期が3年延びたほか、中山トンネルでは出水の連続から多数の迂回坑建設や300基を越える直上ボーリングの実施が必要となり、総工費が膨れ上がったばかりか、経路変更によって生じた曲線は開業後の速度制限をももたらした[12]

今後の新幹線や高速道路にますます必要となる長大トンネルには技術的に不足があるのは明らかであった。これらが転機となって、その後は中山トンネルの一部で試行されたNATMが主流工法となり、それまでの経験工学からの転換という意味合いを含め、今までの工法として在来工法とも呼ばれる。
シールド工法

シールドマシンを用いた工法。詳細は「シールドトンネル」を参照

例:アクアトンネル東京湾アクアライン
飛?トンネルはTBM工法(一部NATM)によって施工が行われた
TBM工法

トンネルボーリングマシンを用いた工法。詳細は「トンネルボーリングマシン」を参照

例:飛?トンネル東海北陸自動車道

新オーストリアトンネル工法

New Austrian Tunneling Methodの頭文字をとってNATM(ナトム)ともいう。掘削した部分を素早く吹き付けコンクリートで固め、ロックボルトを岩盤奥深くにまで打ち込んで地山自体の保持力を利用する工法。詳細は「新オーストリアトンネル工法」を参照

例:中山トンネル上越新幹線

開鑿(開削)工法

オープンカット工法とも呼ばれる。地表面を掘り下げてトンネルの構造物を構築し、後で埋め戻す工法[13]。地表面に近い部分や、鉄道駅のように大規模になる施設の構築に用いられる。初期(1960年代まで)に建設された地下鉄では主流の工法であったが、1970年代以降は地下鉄網の拡充からより深い位置にトンネルを建設せざるを得なくなり、駅部分を除いてはシールド工法が主体となっている。

また開削工法にシールド工法を組み合わせた工法としてオープンシールド工法がある。

例:東京メトロ南北線後楽園駅

沈埋トンネル工法

複数のケーソン(潜函)を水底に沈め、これを接続してトンネルとする工法。詳細は「沈埋トンネル」を参照

例:多摩川トンネル首都高速道路湾岸線

トンネル工事と安全確保

トンネル工事(英語版)は労働基準法等の法令により、坑内労働として規定され、就業制限や安全衛生について一般の作業場とは異なる規制が設けられている。詳細は「坑内労働」を参照
トンネルの分類道路トンネルの例(旧吹上トンネル)。両端の出口を低くする逆 V 字型の勾配になっており、自然排水が可能になっている。道路トンネルの例(日本坂トンネル)。大規模火災事故(日本坂トンネル火災事故)発生の歴史があり、入り口に信号機を設けている鉄道トンネルの例(青函トンネル現役としては日本最古の鉄道トンネル「清水谷戸トンネル」(左側)。神奈川県横浜市戸塚区品濃町側(横須賀線東戸塚駅近辺)河川トンネルの例(新湊川

用途別では、道路や鉄道の交通用トンネルの他に、灌漑や水力発電用の水路トンネルや、鉱山の坑道もトンネルの一種に数えられ、大都市で建設される共同溝や地下街、地下駐車場、地下鉄も広義のトンネルとされる[4]。場所や工法による分類では、山岳トンネル(山岳工法)、シールドトンネル(シールド工法)、都市トンネル、開削トンネル(開削工法)、沈埋(ちんまい)トンネル(沈埋工法)など様々な形態がある[14]
場所による分類
山岳トンネル

山を貫通するように掘られたトンネル。トンネル中央部を高く、両端の出口を低くする逆V字型の勾配(拝み勾配)とすることで自然排水が可能である。ただし、立地条件などから片勾配となっているものも少なくないが、これでも自然排水は可能である。
都市トンネル

都市の建造物の中や地下を通るトンネル。首都高速道路に於けるトンネルのほとんどや地下鉄の多くはこれである。滑走路等を避けて空港の地下を通るトンネルもある。傾斜は周囲の構造物などによって大きく異なる。
水底トンネル詳細は「水底トンネル」を参照

川底海底に掘られたトンネル。構造的に中央部が低くなるため、排水を機械的に行う必要がある。
水中トンネル

例えば水族館水槽の中などに作られた観賞用の通路で、アクリル樹脂などで透明になっていてトンネルの外の水中を眺められる構造になっている[15]
用途による分類
道路トンネル
自動車用

自動車用の長大トンネルには大規模な換気設備や、非常ボタン・消火設備・非常電話・非常停車帯・避難用トンネル(避難坑)などの防災設備が設置されている。また、日本においては、道路法で長さ5,000m以上並びに水底・水際の道路トンネルは危険防止のため、危険物積載車通行が禁止されている。

最近建設されるトンネルは車同士のすれ違いが出来るよう、2車線確保できる断面積にする場合が多い。2車線未満のトンネルは一方通行や片側交互通行、車両幅制限、大型車の通行規制などで対応する場合がある。

高速道路や主要道路を中心に、ラジオの再送信を行っているケースもある。なお、トンネル内で交通事故や火災などが発生した場合、全ての放送局の再送信を休止して、緊急時の正しい行動を周知する放送を流す。これは、再送信している全ての周波数で同じものが流れる。

トンネルの入口手前に一般道路・高速道路問わず、信号機を設置している場合がある(写真参照)。また、高速道路ではトンネルの長さなどに関係なく必ず全てのトンネルの入口にトンネル情報表示器が設置される。長大トンネルではトンネル内にも設置される。
歩行者用

自動車用のトンネルにおいて歩道が設置されている場合、排気ガス対策から自動車用のトンネルとは別に併行してトンネルが設置されている場合がある。関門トンネルでは、人道用と車道用とが2層になっている。

また、歩行者専用に地下道が設置されている場合、道路鉄道を立体的に横断するために地下横断歩道が設置されている場合がある。
鉄道トンネル

鉄道用のトンネル。鉄道トンネルでは特に、単線のものを単線トンネル、複線のものを複線トンネルと呼ぶことが多い。換気が困難な長大トンネルや、特に列車運転頻度の高い線区のトンネルは早く(蒸気機関車が一般的であった時代)から電化されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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