トロリーバス
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電動機で走行するため、燃料冷却水の搭載や補給が不要で、電気バスのような充電も不要で運転費が安く済む。

電動機で走行するため、騒音が少ない。

電動機で走行するため、振動が少なく、変速時の衝動もない。

架線から給電されるため、燃料タンクやバッテリー容量による航続距離の制限がない。

起動時から大トルクを発揮できる。都市部では加減速が頻繁であり、急な坂道での運用もあるため有利である。

パワーパック(電動機・制御装置)が占める割合が比較的小さくて済む。

内燃機関式のバスと比べてメンテナンス項目が少なく、車両の寿命が長い。

海抜が高く、酸素の薄い場所でも出力が低下しない。

電動機で走行することは、内燃機関のバスとの比較では上記のような利点があるが、電気を動力とする電気バスとの比較では一部の項目を除き同等である。
短所

停電時には走れない。

架線が必要である。

架線の敷設や維持のために費用や時間がかかる。

路線の改廃が難しく、道路支障時などの迂回運行ができない。

路線となる道路を通行する他車の最大高が架線の高さ未満に制限される。

架線や架線柱が沿線の景観を損ねる。

変電施設の設置が必要。

架線からずれることができる距離に制限がある。

架線を共用するため、前のバスを追い越せない。

架線の分岐部や交差部でトロリーポールが外れるトラブルが比較的起こりやすく、その回避のための一時減速が交通支障の原因となりうる。ただし、現在はバッテリーや補助動力などを併用したものも開発されており、必ずしも架線からの常時給電が必要ではなくなっている。


鉄道・軌道としての法規制を受けることからの問題。

路線バスに比べると監督官庁への諸届等の事務量が多く煩雑である。

乗務員の育成および研修が煩雑であり、路線バスと比較して多大なコストがかかる。


トロリーバスが一般的でない地域が多い。

路面電車とバスの両者に比べ、とくに日本では国内にメーカーが少なく製造費が割高で、補給部品の面でも不利になりやすい。

総じて、車載バッテリーを主電源とする電気バスの技術向上により、あえて架線から集電する方式のトロリーバスを存続させる意味が希薄化しつつある[注釈 3]
歴史及び現況
ヨーロッパ諸国
トロリーバスの誕生1882年、ドイツのベルリンの世界初のトロリーバスである"エレクトロモト"ループ線で折り返すイングランドレディングの2階建てトロリーバス(1966年撮影)マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード・スクエア付近の新しいMBTAトロリーバス京都市のトロリーバス(1930年代)

1882年4月29日に、ドイツヴェルナー・フォン・ジーメンスベルリン郊外のハレンゼー(Halensee)付近で540メートルの区間で運行を開始したのが世界初のトロリーバスとされる[2]("エレクトロモト"の試験運行)。車体は開放式馬車をそのまま用いた形態となっていた。この実験は同年6月13日まで続けられた。この実験の後、1900年に開催されたパリ万博でデモンストレーションを行うなどヨーロッパ各地で実験が行われ、アメリカ合衆国などにも伝わった。集電方式については当初、小さな車輪を架線に載せ、これを柔軟性のある送電線で車体とつないで引っ張りながら走行する方法が採られていたが、後にトロリーポールが使用されるようになった[2]

世界初の営業運転は1901年7月10日、ドイツ・ドレスデン郊外のケーニッヒシュタインとヒュッテンの間で行われたものとするのが通説であるが、この路線は1904年に廃止され短命に終わっている。このときの車両では前後に並べた2本のトロリーポールで集電を行う方式が採用された[2]ロカール・デ・サイモン 412EA(Rocar De Simon)
ブカレストのバスターミナルに停車中のトロリーバス(2018年撮影)

1900年代初めには各国でトロリーバスの営業が開始されている[3]
ドイツ

ドイツはトロリーバス発祥の国であり、初めて営業運転が行われた国でもある。ポツダムなどでは現在でも都市交通として活躍している[4]
フランス

1901年7月15日にフォンテーヌブローで路線が開業した。また、1900年代初めにはフランスリヨンでもトロリーバスが営業を開始した[4]パリでは1912年に路線が開業している。
イギリス

1911年に初の営業路線がイングランド北部のリーズブラッドフォードの間に開業した[2]。イギリスのトロリーバスは2階建て仕様車が多く、かつてはロンドン市内でも2階建てトロリーバスが見られた。しかし、現在は都市交通でのトロリーバスは全廃されている[4]
アメリカ合衆国

1903年、スクラントンにおいて実験的な運行が行われ、1910年にはロサンゼルスで旅客営業が開始された[2]

アメリカ国内には観光地を中心にトロリーバスまたはトロリーと称するバス(en:Tourist trolley)が多く運行されているが、これらはレトロ調の車体を使用したディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンの通常のバスである(ファンタスティックバスも参照)[5]

このほかに、現在も、サンフランシスコシアトルなどの一部の大都市で架線集電によるトロリーバスの営業運転が行われている。

また、これらの都市での営業運転だけでなく、イリノイ鉄道博物館(英語版)などのように旧型のトロリーバスの動態保存に取り組んでいる団体もある。
ロシア

ロシアの首都モスクワは路線延長1251キロメートル、保有車両1,851両で、年間6億5千万人を輸送する世界最大のトロリーバス都市であったが[4]、2020年8月末日をもって事実上の廃止となった。廃止の理由は、電気バスへの移行と利便性の向上のためとされているが、明確な理由は明らかにされておらず、一部の住民はモスクワ市長の利権がらみとして反発している[6]

ソビエト連邦などでは貨物運送目的のトロリートラックが採用されている例がある。
日本
歴史

1912年明治45年)には東京市電気局によってトロリーバスの実験車両が試作され、4月11日に浜松町の工場から数寄屋橋車庫まで運転された。また、1926年(大正15年)には日立製作所フォード製の自動車を改造し、三相交流式のトロリーバスを試作している。

日本におけるトロリーバスの初めての営業運転は、1928年昭和3年)8月1日に阪神急行電鉄(現、阪急電鉄花屋敷駅(現在は雲雀丘駅と統合されて雲雀丘花屋敷駅)と新花屋敷(現在の川西市満願寺町あたり)の間1.3キロメートルを結ぶ区間で運行を開始した日本無軌道電車とされる。当時この付近では温泉が湧いており、それを開発した温泉宿・遊園地へのアクセス路線として、当時のバス(ガソリンエンジン)では登坂不可能な急勾配を越えるためのものだった。しかし業績は思わしくなく、1932年(昭和7年)1月に休業、同年4月には廃止され、開業後わずか4年弱という短命に終わった。

都市交通機関として初めて開業したのは、1932年の京都市電気局(後、京都市交通局)の京都市営トロリーバスである。その後1943年(昭和18年)に名古屋市交通局名古屋市営トロリーバスが開業するまで、この路線が日本唯一のトロリーバス路線であった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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