トロツコ
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文章は簡潔であり、とりわけ、工夫の無造作な最後の一言を聞くことによる主人公の心理の変転が見事であり、まさかこういうことはないだろうという主人公のひとり合点が、深みにはまってゆき、気がついた時には引き返せないものになっているという実人生の象徴が現れていると述べている[1]

三島由紀夫は、芥川の作の中で、日本独特の作文的な短篇であり、「トロッコといふ物象にまつはる記憶を描いて、それを徐々に人生の象徴へもつてゆき、最後に現在の心境に假託させる」という型の作として、もっとも佳良なものの一つであるとして評価している。芥川龍之介は私小説の現実性に捕らわれず、それを一つの型として意識的に採択した小説家であり、ジャンルとしての一つの型を意識せずには作品の質をあげることができなかった小説家であったと述べ、この作品の長所として、途中でトロッコがなにを象徴しているのか見通しがついてしまうにもかかわらず、そのトロッコの行方についてどこまでも不可測な感じがつきまとっており、遠くまで行った後で、突き放されて無理矢理帰らされるところに、作者の計算があり、志賀直哉の短篇とは異なる人工性がある、と評している[2]

三好行雄は、主人公と芥川の距離がないことをあげ、少年のせつなさは芥川の追憶でもあり、芥川も息を切らして駆けており、終章で遠い思い出に二重写しされた娑婆の苦労の哀感は、芥川自身の肉声を聞くような感傷を受けると述べており、のちに芥川の描く保吉物の先蹤であり、それよりもはるかに優れていると述べている[3]
関連項目

熱海鉄道 - 当小説のモデルになった豆相人車軌道の後身。

脚注[脚注の使い方]^ 吉田精一「解説」(芥川龍之介著『蜘蛛の糸・杜子春』)(新潮文庫、1968年)
^ 三島由紀夫「解説」(芥川龍之介著『南京の基督』)(角川文庫、1956年)
^ 三好行雄「解説」(芥川龍之介著『トロッコ・一塊の土』)(角川ソフィア文庫、1958年)

外部リンク

『トロッコ』:新字新仮名 - 青空文庫

『トロツコ』:新字旧仮名 - 青空文庫










芥川龍之介の作品
短編小説

老年 - 羅生門 - - 芋粥 - 手巾 - 煙草と悪魔 - さまよえる猶太人 - 戯作三昧 - - 道祖問答 - 偸盗 - 蜘蛛の糸 - 地獄変 - 奉教人の死 - 枯野抄 - るしへる - 犬と笛 - きりしとほろ上人伝 - 魔術 - 蜜柑 - 舞踏会 - - 南京の基督 - 杜子春 - アグニの神 - 藪の中 - 神神の微笑 - 将軍 - 報恩記 - トロツコ - 魚河岸 - おぎん - 仙人 - 六の宮の姫君 - 漱石山房の冬 - 猿蟹合戦 - 雛 - おしの - あばばばば - 糸女覚え書 - 保吉の手帳から - 一塊の土 - 大導寺信輔の半生 - 点鬼簿 - 玄鶴山房 - 蜃気楼 - 河童 - 誘惑 - 浅草公園 - 歯車 - 或阿呆の一生
長編小説

邪宗門 - 路上
その他

三つの宝(戯曲) - 侏儒の言葉(随筆) - 文芸的な、余りに文芸的な(評論) - 西方の人 - 続西方の人 - 八宝飯(随筆)
関連項目

芥川龍之介賞 - 芥川文 - 芥川比呂志 - 芥川多加志 - 芥川也寸志
関連カテゴリ

芥川龍之介 - 小説 - 原作映画作品
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