ダルダノスの後はエリクトニオスが相続した。エリクトニオスの後はトロースが継いだ。トロースは、自分の名にちなんでダルダニアの地をトロイアと呼ぶことにした。
トロースはスカマンドロス河の娘カリロエーと結婚し、クレオパトラー(プトレマイオス朝の女王クレオパトラ7世とは別人)、イーロス、アッサラコス、ガニュメーデースをもうけた。ガニュメーデースが気に入ったゼウスは、鷲に変身してガニュメーデースをさらい、オリュンポスの給仕係とした。そして、その代償に馬を与えた。なお、アッサラコスの子がカピュスで、カピュスの子がアンキーセース。アンキセスの子がローマの元となった都市を築いた英雄アイネイアースである。
トロースの子イーロスはプリュギアで、その地の王が主催した競技会の相撲の部に優勝。賞品として50人の少年と50人の少女を得た。また王は彼に斑の牛をあたえ、「その牛が横になったところに都市を築けという神託が下ったから、その通りにしなさい」といった。イーロスが牛の後についていくと、牛はアテという丘で横になった。そこでイーロスはそこに都市を築き、イリオスと名づけた。イーロスはアドラーストス(テーバイ攻めの七将の一人のアドラーストスとは別人)の娘エウリュディケと結婚し、ラーオメドーンをもうけた。イーロスの後はラーオメドーンが継いだ。ラーオメドーンの子供には、娘のヘーシオネー、息子ティートーノス、ポダルケースなどが生まれたという。 あるときアポローンとポセイドーンはゼウスに対する反乱をくわだてた。このためゼウスの怒りを買い、人間の姿に身をやつし、イリオス王ラーオメドーンのためにイリオスの城壁を築くという罰を受けた(一説によると、城壁を築いたのはポセイドンだけで、アポローンは羊飼いの役目をしていたという)。城壁完成の後にアポローンとポセイドーンが報酬を貰おうとすると、ラーオメドーンはそれを拒絶した。アポローンとポセイドーンは怒り、アポローンは疫病で、ポセイドーンは海の怪物でイリオスを悩ませた。 その後、怪物にラーオメドーンの娘ヘーシオネーをささげれば、災いから逃れることができるという神託が下った。そこで、海から来る怪物に見えるように、海岸近くの岩にヘーシオネーを縛り付けた。それを見たヘーラクレースは、ガニュメーデースの代償にゼウスが与えた馬をくれるなら、怪物を倒してヘーシオネーを救おうと申し出た。ラーオメドーンが請合ったので、ヘーラクレースは怪物を倒してヘーシオネーを救った。ヘーラクレースが報酬の馬を貰おうとすると、ラーオメドーンは拒絶した。ヘーラクレースは、いずれイリオスを攻め落としに来るぞ、と捨て台詞を残して去っていった。 ヘーラクレースは参加者を募ってイリオス攻めを行った。18艘の船による軍勢の中にはペーレウス(アキレウスの父)やテラモーン(大アイアース、テウクロスの父)もいた。軍勢は船をおりてイリオスを目指した。イリオス王ラーオメドーンはヘーラクレースらの留守に船を襲ったが、逆にヘーラクレースたちに包囲され、捕虜となった。 ヘーラクレースたちはイリオスを包囲し、テラモーンがイリオスへの一番乗りを果たした。ヘーラクレースは自分よりも優れた者の存在が許せなかったので、テラモーンを殺そうとした。テラモーンは機転をきかせて石を集めるふりをした。不思議に思ったヘーラクレースがテラモーンに尋ねると、テラモーンは勝利者ヘーラクレースにささげる祭壇を築いているのだ、といった。ヘーラクレースは喜び、ラーオメドーンの娘ヘーシオネーを彼に与えた。 戦いの後、ヘーラクレースはヘーシオネーに捕虜のうちから一人だけ連れて行くことを許した。ヘーシオネーはラーオメドーンの息子ポダルケースを選んだ。ヘーラクレースがポダルケースの購いを求めると、ヘーシオネーは代償としてベールを差し出した。このことから、ポダルケースはプリアモス(ギリシャ語の「買う」はプリアマイ)と呼ばれることとなった。この時ポダルケース以外のラーオメドーンの息子はすべて殺された。 イリオスは、プリアモス王の時にギリシア勢に攻め込まれ、滅亡することとなった。 この戦争の発端はゼウスの思慮によるもので、人口調節のためとも神の名声を高めるためとも伝えられる。プリアモス王の后ヘカベーは、息子パリス(アレクサンドロス)を生むとき「自分が燃える木を生み、それが燃え広がってイリオスが焼け落ちる」という夢を見た。この夢の通り、パリスはイリオスにとって災厄の種となった。パリスは、ヘーラー、アテーナー、アプロディーテーの三女神の美の競合、いわゆるパリスの審判によりアプロディーテーからスパルタ王メネラーオスの妻ヘレネーを奪って妻とすることを約された。
アポロンとポセイドンによる城壁の建築
ヘーラクレースによるイリオス攻め
トロイア戦争イーリオスの陥落詳細は「トロイア戦争」を参照