トラック野郎
[Wikipedia|▼Menu]
鈴木は「わたしの映画人生の大恩人、岡田茂はヒットすると自分の企画案のように大絶賛していた」と話している[15]中島貞夫は「岡田さんは最初から則文の喜劇の才能を見抜いていたから、文ちゃんと組ませて必然的にコメディにするつもりだろうと思っていた」と話している[16]

企画から下準備、撮影を含めた製作期間は2か月、クランクアップは封切り日の1週間前であった。こうして、過密な撮影スケジュールと低予算で製作された『トラック野郎・御意見無用』は1975年8月30日に公開。シリーズ化の予定はなく、単発作品としての公開だった[17]。ところがいざ蓋を開けてみると、劇場の窓ガラスが割れるほど客が押し寄せ[3]、オールスターキャストの大作@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}『新幹線大爆破』(同年7月公開)の配給収入の2倍以上の約8億円を上げた[要検証ノート]ことから、岡田社長は「正月映画はトラックでいけ」、「トラ(寅さん)喰う野郎やで」、「(2作目の)題名は爆走一番星や!」と即座にシリーズ化を決定した[2][9][18][19]

『トラック野郎・御意見無用』の大ヒットの要因について、当時の『キネマ旬報』は「それまでの実録路線がタイトル、内容ともにえげつなくなり過ぎていたきらいがあり、本作はコミカルな要素も加わった異色作品で、観客層もそれまでの東映作品から幅広くなり、女性層もかなり吸引したこと、メガヒットだった『タワーリング・インフェルノ』のロングラン上映が二ヵ月に渡り勢いが下降し、また松竹東宝もロングランで対抗する作品が皆無で、公開タイミングが最適であった」と分析している[20]

その後も東映の興行の基盤となるドル箱シリーズとして、1979年末まで毎年盆と正月の年2回公開されていた。愛川曰くライバル映画の松竹男はつらいよ』と常に同時期の公開だったことから、「トラトラ対決」(「トラック野郎」と「寅さん」の対決の意)と呼ばれていたという[2]
内容

内容は菅原自身も後に語っているように、ライバル映画であった松竹の『男はつらいよ』のスタイルを踏襲している。毎回マドンナが現れ、桃次郎が惚れては失恋するところは『男はつらいよ』のそれに似ているが、寅さんが「静・雅」であれば、桃次郎は「動・俗」と対極をなしている[注 1]。物語の中核を担うのは、寅さんではあり得ない「下ネタ」「殴り合いの喧嘩」「派手なカーアクション」で、とりわけ下ネタのシーンは屋外での排泄行為やトルコ風呂ソープランド)、走行しながらの性行為など、現在の視点から見るとかなり過激な描写も多い。ただし、本作の人気が高まるにつれた未成年者のファンも増加したため、トルコ風呂の場面はそれらの観客への配慮もあり、シリーズ後半以降はほとんど描かれなくなった。また、テレビで放送される際には時間の関係もあり、その近辺のシーンをカットして放送されることが多かった。

青森ねぶた祭り唐津くんちなど、全国各地の有名な祭りの場面が登場するのもこのシリーズの特色である(シリーズ一覧参照)。また、当時人気のコメディアンや落語家がキャスティングされていることも特徴で、それぞれ一世を風靡した持ちネタや喜劇的演技を披露していた。
アクション、車両

喧嘩のシーンはシリアスなものではなく、必ずギャグが入る。また、カーアクションは、毎回クライマックスで一番星号が暴走する一方、多くの回(クライマックスの爆走参照)で追跡する白バイやパトカーが横転、大破するなど、警察を風刺した代物である。そのため、警察庁からクレームがあり打ち切られる要因ともなった。

劇中に登場するトラックに関しては、第1作目で使用された一番星号(三菱ふそう・T951型)とジョナサン号(三菱ふそう・T650前期型)は廃車を譲り受けたものだったが、続編の製作決定を期に、東映が室蘭で購入した新古車(車種は一番星号が三菱ふそう・FU型、ジョナサン号が三菱ふそう・T652型)に代替され、最終作の『故郷特急便』まで使用された。なお、三番星号は三菱ふそう・キャンターT200型が使用された。

撮影にあたっては「哥麿会」などのデコトラグループが全面協力しており[注 2]、実在のデコトラも多数登場している。
ストーリーのプロット

日本全国津々浦々を走る白ナンバーの長距離トラック運転手、一番星こと星桃次郎(菅原文太)が主人公。やもめのジョナサンこと松下金造(愛川欽也)は子沢山の相棒。この2人が各地で起こす珍道中を描く。

シリーズ全10作に通ずる基本的なストーリーは、桃次郎がたいてい便所や情けない姿をしている時に遭遇したマドンナに一目惚れし、相手の趣味や嗜好に合わせて見当違いの付け焼き刃の知識で積極的にアタックしていく。また、個性の強いライバルトラッカーが現れ、ワッパ勝負(トラック運転での勝負)や1対1の殴り合いの大喧嘩を展開する。そして、「母ちゃん」こと松下君江(春川ますみ)をはじめとするジョナサン一家、女トラッカー※1、ドライブインに集う多くのトラッカー達等を絡ませ、人情味あふれるキャラクターの桃次郎を中心に、様々な人間模様が綴られてゆく。

結局、恋は成就せず物語はクライマックスへ。天下御免のトラック野郎に戻った桃次郎は、時間が足りない悪条件の仕事を引き受け、愛車・一番星号に荷(時には人も)を載せてひたすら目的地に向けて愛車のトラックで突っ走る。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:163 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef