人口を統計学的に考察した結果、「予防的抑制」と「抑圧的抑制」の二つの制御装置の考え方に到ったが、この思想は後のチャールズ・ダーウィンの進化論を強力に支える思想となった[15]。特に自然淘汰に関する考察に少なからず影響を与えている[11]。すなわち、人類は叡智があり、血みどろの生存競争を回避しようとするが、動植物の世界にはこれがない。よってマルサスの人口論のとおりの自然淘汰が動植物の世界には起きる。そのため、生存競争において有利な個体差をもったものが生き残り、子孫は有利な変異を受け継いだとダーウィンは結論したのである。
またマルサスは救貧法について、貧者に人口増加のインセンティブを与えるものであり、貧者を貧困にとどめておく効果があるとし、漸進的に廃止すべきであると主張していた[9]。
ジョン・メイナード・ケインズはマルサスについて「もしリカードではなくマルサスが19世紀の経済学の根幹をなしていたなら、今日の世界ははるかに賢明で、富裕な場所になっていたに違いない。ロバート・マルサスは、ケンブリッジ学派の始祖である」と評価している[16]。
マルサスの罠はハーバー・ボッシュ法による窒素の化学肥料の誕生や過リン酸石灰によるリンの化学肥料の誕生により克服された[17]。
著作
1798年 - 小冊子『人口論』を匿名で刊行。
1810年 - 『不換紙幣に関する論考』
1814年 - 『小麦法の効果についての考察』
1815年 - 『地代の性質と増加についての調査』
1820年 - 『経済学原理?』:デヴィッド・リカードの経済説への反論。(小林時三郎訳注、岩波文庫上下)
日本語訳書
『マルサス北欧旅行日記』(小林時三郎、西沢保訳、未來社、2002年)
『マルサス学会年報』〈マルサス学会編、1991年-2006年度版、2008年10月刊行、雄松堂出版〉15冊
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 2月13日・17日説もあり
出典^ a b c “マルサスとは”. コトバンク. 2020年12月27日閲覧。
^ “Finding the Reverend Malthus at Bath Abbey” (英語). www.wessexarch.co.uk. Wessex Archaeology Ltd. 2020年12月27日閲覧。
^ a b 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、24頁。
^ ジョン・メイナード・ケインズ 『J.M.ケインズ 人物評伝』 75頁より
^ a b 小泉祐一郎 『図解経済学者バトルロワイヤル』 ナツメ社、2011年、221頁。
^ Venn, J.; Venn, J. A., eds. (1922?1958). "Malthus, Thomas Robert". Alumni Cantabrigienses (10 vols) (online ed.). Cambridge University Press.
^ フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編著、樺山紘一日本語版監修『ラルース 図説 世界史人物百科』V フランス革命ー世界大戦前夜 原書房 2005年 27ページ
^ 日本経済新聞社編 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、150頁。
^ a b ⇒経済学史の窓から 第7回 マルサスは陰鬱な科学者か?書斎の窓
^ Malthus T. R. 1798. An Essay on the Principle of Population. Oxford World's Classics reprint: xxix Chronology.
^ a b フランソワ・トレモリエール、カトリーヌ・リシ編著、樺山紘一日本語版監修『ラルース 図説 世界史人物百科』V フランス革命―世界大戦前夜 原書房 2005年 28ページ
^ 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、92頁。
^ 佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、388頁。
^ a b 橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、93頁。
^ 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、26頁。
^ 中矢俊博 『やさしい経済学史』 日本経済評論社、2012年、25頁。
^ ⇒独立行政法人農業環境技術研究所「情報:農業と環境 No.104 (2008年12月1日) 化学肥料の功績と土壌肥料学」
関連項目
マルサス主義
人口統計学
人口論
外部リンク
マルサス トマス・ロバート:作家別作品リスト - 青空文庫
『マルサス』 - コトバンク
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