デンプン
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アミロペクチンについては、ジャガイモのアミロペクチンの平均鎖長がクズとタピオカのものより、2.8 残基長い。このことより、アミロペクチンは単純に長いほうが水素結合をしやすいので、老化しやすいと考えられる。

老化を防ぐ方法として、トレハロースマルトースなどの糖類が使用されている。これは、デンプン分子と構造が似ている糖類を使うことで、インターカレーションをおこし、規則的結晶構造をとりにくくして、老化を防いでいると考えられる。
化学的性質
ヨウ素デンプン反応

デンプン水溶液にヨウ素溶液(ヨウ素ヨウ化カリウム溶液)を加えると、デンプン分子のラセン構造の長さによって青色?赤色を呈する鋭敏な化学反応。この反応は、ラセン構造の内部にヨウ素分子が入り込むことに由来する。水溶液を加熱するとラセン構造からヨウ素分子が外れるため、呈色は消える。

ヨウ素デンプン反応は食品衛生分野では、デンプン汚れに対する食器等の洗浄効果の確認検査に用いられる[3]。また、小学校や中学校の生物(主に植物)に関する実験に多用される。

直鎖の長さと呈色の関係鎖長(グルコース残基)ラセン長呈色
122無色
12?152褐色
20?303?5赤
35?406?7紫
459青

加水分解詳細は「加水分解」を参照

デンプン水溶液に希硫酸を加えて加熱すると、デンプンはデキストリンマルトースを経てグルコースまで分解される。
デンプンの消化・吸収

ヒトがデンプンを食べるとまず、唾液中の消化酵素アミラーゼ(唾液アミラーゼ;プチアリン)により、アミロースとアミロペクチンのα1-4結合が不規則に切断され、デキストリンマルトース(麦芽糖)に分解されていく。デンプンを含む食品を噛み続けると甘味が感じられるようになるのはこのためである。唾液アミラーゼの作用は食べ物がに送られた後もしばらく続くが、強酸性の胃液によってアミラーゼは次第に失活する。

胃の内容物が十二指腸に送られると、膵臓から分泌された膵液によって中和される。そして膵液に含まれるアミラーゼ(膵アミラーゼ;アミロプシン)によりデンプンは二糖類であるマルトースにまで分解される。

マルトースはさらに小腸壁に存在するα-グルコシダーゼ(ヒトでは小腸上皮細胞に膜酵素として発現している消化酵素である。膜酵素であるのは、吸収直前に単糖に分解することで腸内細菌などに栄養を奪われにくくするためである)により最終的にグルコース(ブドウ糖)に分解され、小腸で吸収される。小腸の頂端膜腎臓上皮細胞を通るグルコースの輸送は、二次的に活性化されるナトリウム-グルコース共輸送体タンパクのSGLT-1およびSGLT-2の存在に依存する。SGLTはsodium-dependent glucose transporter の略称である。これらは、ナトリウムイオン共輸送体のつくるNa+の電気化学的勾配によって供給されるエネルギーを利用して、グルコースの細胞内濃度を高める[4]
デンプンの製造

植物が細胞内に貯蔵しているデンプン粒を取り出す。基本的には植物細胞の細胞壁を破壊して取り出すが、原料とする植物の種類や用途により蛋白質あるいは脂質の除去が必要となることもある。

原料となる植物としては、ジャガイモ(馬鈴薯)、小麦トウモロコシサツマイモ(甘藷)、キャッサバクズ(葛)、カタクリ(片栗)、緑豆サゴヤシワラビ(蕨)、オオウバユリ(大姥百合)など様々な物が用いられている。

利用される植物の部位は、種子および果実がある。根および茎からのデンプン粒の抽出は比較的容易だが、種子・果実(特に種子)からの抽出は、蛋白質や脂質の分離操作を必要とすることが多い。
原料となる植物とそのデンプンの性質
穀類
トウモロコシ

トウモロコシ澱粉。いわゆるコーンスターチである[1]。世界で生産されるデンプンの約8割はトウモロコシ澱粉(コーンスターチ)である[1]。アミロース含量25%。

原料となる品種は、食用として一般に広く認知されているスイートコーン(甘味種)や ポップコーン(爆裂種)などは用いず、デントコーン(馬歯種)が使われる。イエロー種デントコーンが大半を占めるが、その他一部の特殊用途向けにホワイト種デントコーンが原料として用いられる。

粒径2-30µm、平均粒径15µmで小さめ、非常に細かく角張っている。

安価かつ品質が安定しており、食品用には甘味料、プリンの凝固剤、ビールの副原料などに利用される[1]。また工業用には製紙・段ボール製造の糊料としても使用される[1]

白色度は高く、吸湿性は少なく、灰分は最も少ない。一方、蛋白質、脂質の含量が多め。糖化製品原資として多く用いられる。糊化時の粘度は中庸だが安定性が高く、接着力や糊液の浸透性も高いため、加工デンプン原料として用いられる。黄粒種から取り出された澱粉も色としては白色だが、一部の用途(錠剤などの製薬用途・和菓子等のとり粉などの食品用途)向けには白粒種を原料として更に白色度の高い澱粉(ホワイトコーンスターチ)を取り出して用いている。

ワキシートウモロコシ(糯トウモロコシ) - 糯トウモロコシ澱粉、ワキシーコーンスターチ。アミロースをほとんど含まない。アミロペクチンのみで構成される。糊化温度は低く、透明なゲルを形成する。

ハイアミローストウモロコシ - ハイアミローストウモロコシ澱粉、ハイアミロースコーンスターチ。アミロース含量60-70%。糊化温度は非常に高い(135℃以上にしないと完全には糊化しない)。

小麦

小麦澱粉。アミロース含量25%。

粒径2-40µm、平均粒径15-40µmからなる大粒と2-10µmからなる小粒からなり、粒子は凸レンズ型。

品質のばらつきが多く、多くの製造所で粒度区分と純度に従って等級を指定している。大粒子区分を精製した特級品は糊化温度が低く、冷却時の粘度が高くなる。他のデンプンと比較して糊化時の粘度はやや低いが、冷却時粘度が高くゲル化能力も高い。糊液の粘度安定性は良好で、老化しにくく離水も少ない。

大粒の高粘度の小麦デンプンは関西地方などで水産練り製品に利用されている[1]。また、小粒の低粘度の小麦デンプンは錠剤のベースに利用されている[1]

一般的には浮き粉と称されている。

米澱粉。アミロース含量15-20%。

米のデンプンは複粒であり、アミロプラストの中に複数のデンプン粒が内包されている。米粒胚乳中のデンプン粒は隙間なく詰まっている。登熟の際、高温や低温を受けると、形成異常が起こり、イレギュラーな形のアミロプラストが形成される。

平均粒径2-5µmと市販デンプン中最も小さい。このため製造上歩留まりを上げることは難しく(60%程度)高価になる。

デンプン粒の形状とその大きさから、微細な凹凸に付着し平滑面とする効果が大きい。

化粧品やそばやうどんなどの打ち粉に利用する[1]
マメ類

ソラマメ緑豆小豆など。アミロース含量30-35%。

粒径25-40µm(そらまめ)。

糊化温度がやや高く(80℃)、冷却時に硬いゲルを形成する。食品ではソース、フィリングとして利用される。緑豆春雨は緑豆デンプンを原料とする春雨である[1]。また、細胞デンプン(細胞膜に包まれた状態にあるデンプンのこと)は100℃においても糊化しないため、餡として用いられる。



イモ類
ジャガイモ

馬鈴薯澱粉。国内産のものとしては、北海道が一大産地として広く知られる。アミロース含量20-25%。

粒径2-80µm、平均粒径30-40µmと、市販デンプンの中で最大の粒形となっている。

いわゆる片栗粉は本来はカタクリ地下茎から採取したデンプンであるが、市場に流通している片栗粉と呼ばれるもののほとんどは馬鈴薯澱粉となっている[1]。デンプンとしてはリン酸の含量が多い。

加熱時の糊化温度は低く、膨潤力、溶解力が強い。透明で粘着力が強い糊液が得られる。糊化時の糊液の粘度は非常に高い。ただし、粘度の安定性は乏しい。食塩等の塩類により糊化の状態が大きく変化する。塩の存在下では、糊化が抑制され、糊液も離水しやすくなる。糊化に用いる水の水質、あるいは調味により容易に糊化が抑制されるため、扱いが難しいといわれる。

春雨の原料、オブラートや増粘剤の原料のほか、関東地方などでは水産練り製品に利用されている[1]


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