この昆虫類を含む六脚類の起源は、先行して上陸していた多足類である、と以前は考えられていた。しかし、遺伝子解析から昆虫類は、カニやエビが属する甲殻類や、ミジンコやフジツボが属する鰓脚類が、六脚類により近いと判明している。この結果から、昆虫類は現生の淡水のミジンコとの共通の祖先種から、後期シルル紀の淡水域において生息していたと考えられる。その祖先種から、前述の河川と陸上の境界域で進化を重ね、陸棲化したのが昆虫だと考えられる。実際、出現当初の昆虫類の化石は、淡水域と陸上であった場所でしか発見されておらず、また現生の昆虫のほとんどが陸棲である。
デボン紀の昆虫は、現在発見されている化石からは翅の獲得はみられず、原始的な形態であった。現在の昆虫類は、動物種の大半を占めるほど多種であるが、その多様な進化は石炭紀以降で顕著になったと思われる。
サメの出現Ctenacanthiformesの一種(左)と大型の板皮類Holdenius(右)の復元図
サメなどの軟骨魚類は、前期デボン紀には存在していた[6]。ただし歯の化石[注釈 6]には、それよりも古いシルル紀末期のものもあるため、厳密に言えば、起源は前代のシルル紀にあると考えられる。
サメの祖先は不詳であるが、棘魚類に求める説が強い。例えばデボン紀の地層から知られるドリオドゥスは、棘魚類と軟骨魚類の共通の特徴を持っている。[7]
代表的なデボン紀の軟骨魚類として、全頭類のクラドセラケ[注釈 7][注釈 8]が知られる。捕食生物であり、少なくとも5対の鰓[注釈 9]を有し、硬い歯、背びれ、尾びれの形状と、現生のサメと変わらない形態をしていた。現生のサメを含む板鰓類も出現しており、初期のグループとしてCtenacanthiformesなどが知られる。 デボン紀後期から石炭紀初期は、5大大量絶滅の一時期であり、特に前述のサンゴ礁を作る赤道域の浅海域で選択的に絶滅が起こっている[8]。この大絶滅により、海洋生物種の82%が絶滅した。その中には、デボン紀に繁栄を極めたダンクルオステウスなどの板皮類[注釈 10]や、原始的な脊椎動物である無顎類の大部分[注釈 11]や、プロエタス目を除いた三葉虫の大部分[注釈 12]が含まれる。 炭素、酸素、ストロンチウムなどの同位体測定や、元素分析による古環境解析から、気候の急激な寒暖の変化、海水面の後退、乾燥化、低酸素化、などの大きな環境変化がデボン紀後期に繰り返し発生し、おそらくこれらの環境変化が大量絶滅の要因と考えられている[8][9]。
大量絶滅
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ただし、始まりと終わりの時期は資料により若干の違いがある。
^ このときのサンゴは後に起こったペルム紀大絶滅により全て絶滅したため、現在のサンゴとは系統が異なる。
^ 棘魚類の主な活動域が淡水域であるため、現代でも生息する古代魚(原始的な硬骨魚類)は淡水魚が多い。
^ パンデリクティスやティクタアリクなどはより四足動物に近いとされる
^ ただしデボン紀の両生類は、完全水棲の種がほとんどである。
^ サメの軟骨は硬骨魚類の骨格に比べて化石として残りにくく、歯だけが化石になることが多い。
^ クラドセラキー、クラドセラキとも呼ばれる。
^ クラドセラケが、長らく最古のサメとして扱われてきた。
^ 現生のサメは5対、ラブカは6対。
^ この時期を生き残った一部の種も、石炭紀前期のミシシッピ紀には全て絶滅した
^ 現世では、無顎類としてわずかにヤツメウナギ目とヌタウナギ目が存在するのみ。
^ プロエタス目も繁栄を取り戻せず、ペルム紀末(古生代末)に絶え、三葉虫は絶滅した。
出典^ 三省堂百科辞書編輯部編 「デボンき」『新修百科辞典』 三省堂、1934年、1476頁。
^ ⇒地質年代表‐古生代による
^ “ ⇒デヴォン紀: 416-359Ma”. 金沢大学地球環境進化学研究室. 2018年1月14日閲覧。
^ MEYER-BERTHAUD B., SCHECKLER S. E., WENDT J., "Archaeopteris is the earliest known modern tree", Nature, 1999, 398, 6729, 700-701
^ GERRIENNE Philippe, STEEMANS Philippe, GENSEL Patricia G., LARDEUX Hubert, PRESTIANNI Cyrille, "A Simple Type of Wood in Two Early Devonian Plants" Science, 2011, 333, 6044, 837.
^ MILLER R. F., TURNER S., CLOUTIER R., "The oldest articulated chondrichthyan from the Early Devonian period", Nature, 2003, 425, 6957, 501-504
^ Maisey, John G.; Miller, Randall; Pradel, Alan; Denton, John S.S.; Bronson, Allison; Janvier, Philippe (2017). “Pectoral Morphology in Doliodus: Bridging the 'Acanthodian'-Chondrichthyan Divide”
^ a b MURPHY A. E., SAGEMAN B. B., HOLLANDER D. J., "Eutrophication by decoupling of the marine biogeochemical cycles of C, N, and P: A mechanism for the Late Devonian mass extinction." Geology, 2000, 28, 5, 427-430.
^ JOACHIMSKI M. M., BUGGISCH W., "Conodont apatite δ18O signatures indicate climatic cooling as a trigger of the Late Devonian mass extinction." Geology, 2002, 30, 8, 711-714.
参考文献
魚類の進化に関して
島本信夫「魚類の進化」『 ⇒日本海洋生物研究所 年報,2008』
昆虫の起源に関して
Henrik Glenner, Philip Francis Thomsen, Martin Bay Hebsgaard, Martin Vinther Sorensen, Eske Willerslev, "The Origin of Insects",Science, 2006, 314, 5807, 1883-1884
Michael S. Engel and David A. Grimaldi,"New light shed on the oldest insect",Nature, 2004, 427, 6975, 627-630
関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、デボン紀に関連するカテゴリがあります。
地質時代 - 顕生代 - 古生代
デボン紀の状態の良い化石などが出る場所(ラーガーシュテッテ)
ライニー・チャート(英語版)(ライニーチャート) - デボン紀の状態の良い化石などが出る地層。スコットランド、アバディーン州、ライニー(英語版)という集落近くで発見された。
フンスリュック粘板岩
カノーウィンドラ(英語版)
ゴーゴー累層(英語版)
外部リンク