デトロイト
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その頃には、中国人の移民の若者ビンセント・チンが、反日感情を高ぶらせた白人失業者に日本人と間違えられて殺害されるという事件も発生した(デトロイト大都市圏における日本人の歴史ジャパンバッシングも参照)。荒れ果てた市街地を逆手に取り映画ロボコップ」などのモデルとなったのもこの頃である(実際にロケを行ったのはさながら未来都市の景観を呈していたダラスであった)。

事態を重く見た市は、1990年頃から大規模な摩天楼が林立するルネサンス・センターをシンボルに都市再生を目指し、ダウンタウンには新交通システム: People mover - ピープルムーバー)が設けられている。日本総領事館も、邦人から治安のいい郊外に設置するよう強い希望があったが、デトロイト市行政当局の運動に協力する意味合いを含めて市街地に設置した経緯がある。また、自動車以外の産業を育てるべく、映画産業の振興も行った[3]

だが、限られた街区を更地にして巨大オフィスビル群を建設するルネサンス・センターの手法は、周囲の荒廃した地域に及ぼす波及効果が低く、都市再生の手法としてはあまり成功していない。依然としてダウンタウン周辺の空洞化は続いており、ダウンタウンには駐車場空地、全くテナントのいない高層ビルも多く、具体的な解決を見ていない。また、富裕層は郊外に移住して貧賤な層が取り残され、治安の改善もあまり進んでいないのが現状である。荒廃した地域では一戸建ての住宅が1ドルで販売されているところもある。

2008年リーマン・ショック後の金融危機でゼネラルモーターズクライスラーが破綻に追い込まれたが、その後経営状態は回復した。しかし、いずれの自動車会社も経営改善を進める中で生産設備の海外移転が進み、これら自動車会社の先導によるデトロイトの再開発は困難となった[3]

世界5大モーターショーの1つである北米国際オートショーの伝統的な開催地となっている他、自動車の殿堂ヘンリー・フォード・ミュージアムを初めとする自動車関連の博物館など、デトロイトが依然として全米随一のモーターシティーであることには変わりないが、市当局が産業構造の変革を模索しているのも事実である。
財政破綻

なお、2011年あたりから他業種の研究機関などもミシガン州を中心に進出が相次ぐなど、全米の他都市と比較しても経済状況は回復しつつあり、2011年の1月から2月の間に失業率が約1パーセント減少するなどしている。それだけに、市は治安で特にインナーシティの環境改善が急務であり、1920年代に建設されて荒廃したままになっているビル群の再開発・再利用・郊外企業のダウンタウンへの移転などに取り組んでいた。

2013年3月にリック・スナイダー州知事はデトロイト市が債務超過の状態にあることからその財政危機を宣言し、緊急財務管理者を任命した。それに伴い、同年6月にスタンダード&プアーズは財政破綻の懸念からデトロイト市の格付けをCCCマイナス、見通しをネガティブに引き下げた[4]

2013年7月18日財政破綻の声明を発表し、ミシガン州連邦地方裁判所連邦倒産法第9章適用を申請した。負債総額は180億ドル(約1兆8000億円)を超えるとみられ、財政破綻した自治体の負債総額で2013年当時において全米一となった[5][6][7][8][9][10]

市の発表している統計では子供の6割が貧困生活を強いられており、市民の半分が読み書きもできず、市内の住宅の3分の1が廃墟又は空き部屋となっており、市民の失業率(U3[注 1])は18パーセントに達する。また、警官が通報を受けて現場に到着する平均時間は、人手不足のために58分かかる[11]
再生

それから数年後、2018年現在のデトロイトの失業率は7パーセント台にまで回復するなど急激に景気が回復しており、また、全米各地から労働人口が流入している。スラム化したダウンタウンには活気が戻り、空洞化したオフィスビルには人が出入りしてオフィス占有率は90パーセント台まで回復し、激減した市域人口も下げ止まりした。下落した地価を逆手に取って、安い賃金を武器に積極的なスタートアップ企業やエンターテイメント産業を誘致した結果である。

また、多くの市民もデトロイトの再興を実感し始めており、雇用者は増大して生活水準も大幅に改善されている。デルタ航空ハブ空港を置き、Q LINEという路面電車(LRT)も稼働開始した。ウォーターフロント地区の再開発を皮切りに、スポーツやカルチャーに新たな資金が投入されている。その一方で急激に変化した地価、家賃、郊外に居留まる富裕層を呼び戻す動線、公共交通網の不足など課題も山積みの状態である。[12][13]

また、主要産業の一角であって自動車産業も「国内の雇用回復」をモットーとしたドナルド・トランプの経済政策により、メキシコなどへの工場の海外流出が阻止された一方で、国内工場誘致に対する優遇制度、企業法人税などの減税により、フィアット・クライスラーゼネラル・モーターズフォード・モーターともどもデトロイト近郊の工場の雇用拡大を実施することが実現し、数千人単位の雇用が戻った。フォード創業家会長は北アメリカオートショーにて「デトロイトは、カムバックした街の仲間入りを果たした」と宣言しているなど、回復が見られている。[14]また、それに付随して産業用ロボットなどのロボット産業が盛んとなっており、ABB川崎重工[15]ファナック[16]などが研究開発、製造拠点を置くなど、全米最大規模のロボット産業都市となっている。
地理アメリカ航空宇宙局(NASA)のランドサット7号(LANDSAT-7)が観測したデトロイトの衛星イメージ

アメリカ合衆国統計局によると、この都市は総面積370.2 km2(142.9mi2)である。このうち359.4km2(138.8mi2)が陸地で10.8km2(4.2mi2)が水地域である。総面積の2.92%が水地域となっている。

デトロイトはメトロ・デトロイトと東南ミシガン地方の主要都市である。デトロイトで最も高い標高は670フィート(204m)で、大学地区の北西部デトロイトである。逆に、最も低い標高は河岸地域で、579フィート(176m)である。東にはデトロイト川を隔ててカナダのオンタリオ州ウィンザーがあり、デトロイトは主要都市のなかでカナダとの国境に接する唯一の都市である。

同市はハムトラミックとハイランド・パークを内包しており、北東の都市堺にはグロス・ポイントがある。ワイアンドット国立野生動物保護区はアメリカ合衆国で唯一の国際野生動物保護区である。保護区には、デトロイト川と西エリー湖の湖岸線48マイル(77km)に沿って沿岸湿地沼地浅瀬帯、ウォーターフロントの地域が含まれている。

3つのフランス式大通りがデトロイトの道路網を交差している。ワシントンD.C.から影響された放射大通りオハイオ川北西部の道路網をなす東西を結ぶ大通りである。カナダのウィンザーへの交通網は4つあり、そのうち2つの自動車道でアンバサダー・ブリッジとデトロイト・ウィンザー・トンネルがある。鉄道網ではミシガン・セントラル鉄道(英語版)のトンネルがデトロイト川の下を通っており、残りはデトロイト・ウィンザー・トラック・フェリーによる海路である。フェリーの乗り場は、ウィンザー・ソルト・マインとツーク島である[17]
気候

ケッペンの気候区分では亜寒帯湿潤気候(Dfa)に属する。

デトロイト・メトロポリタン国際空港(1981?2010年、極値1874年- )の気候


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