デッサン
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絵具で面を塗る ペインティング(英語: painting)(フランス語: peinture)とは対照的な分類。面的な描画を含む制作を含む、鉛筆画や木炭画、パステル画などを、「デッサン」と呼ぶ場合も少なくない。比較的古い表現として下絵を意味する場合もある。美術以外の分野では比喩表現として蓋然的記述や計画を指す場合もある。
素描技能

通常の人体を描いた時に、右手と左手の長さが極端に違っているようにしか描き出せないとき、それはしばしば不適切とされ、「デッサンが狂っている」などと言われる[2]。描き手が思ったとおりに描き出せているか視覚的に検証判断できる能力はデッサンの能力である。意図通りに描けないことと(例えば)通俗と異なる描画を意図的に為すことの異同をわきまえることが肝要である。

デッサンは通常モノトーンの表現であり、多色の場合も色彩表現に主眼は無い。このことから、白から黒の幅による表現である訳だが、これを明度の表現であるというのは全くの誤解である。過去のデッサンを見て分かる様に、固有の明度(、固有の色)の表現[補注 1]と明るさ[補注 2]の両立が絵画の基本であり、色彩に惑わされない明度の把握に有利なことから、この基本的な法則の理解と表現の把握にデッサンはしばしば使われる。

実在感を具えた絵画に求められる描画や観察、検証の技能、手順や技法の熟知を、広い意味で「デッサン」と呼ぶ。他方デフォルメなどと言うように、デッサンも絵画的表現である以上、強調、変形、単純化、抽象化などの操作が主立って意義を持つことは大いにあり得る。既存の迫真的な絵画の全てがこれらの操作と無縁でないことからもその不可避性がわかる。当然これが不可避であるとしても、その操作を少なく見積もる活動が無意味だという結論が論理的に帰結するわけではない。少ないか多いかでその操作の意義が失われるとは限らない。色彩表現にあるように、少ないからこそ有効という場合もある[3]写真の存在を以って写実的な絵画を否定する一般の論者は、このことを考慮しているとは考え難い。写真の存在によって迫真的な絵画表現を否定するの見解を肯定的に主張する場合に、ある種の再現性の不足から無意味とするのであれば、その他の観点が眼中にないと考えられるからである。肉眼の視覚と写真のような光学像による平面的な造形との相違はその実在性であり、絵画は写真のような光学的な造形よりも、人間の視覚に肉薄出来る。この相違は決定的である[4]

写実的な絵画を制作する画家や写真を使用する作家たちは、しばしばこのことを強調する。他方で、その対極にあるような作家は、一般のこの誤解を悪用し論難するのに利用する場合もある[5]フォトリアリズムの一大ムーブメントが過去のものとなった現在でも、これらの事情が正確に認知されているとは言えず、ホックニー『秘密の知識』のような公告的な表現を用いた著書が出版されているという現状がある。
描画材料による分類

描画に用いる主要材料に従って木炭デッサン、鉛筆デッサン、描く対象によって静物デッサン、人物デッサン、石膏デッサンなどという。

素描に使用される道具は多岐に亘り、一般的な黒鉛筆・木炭の他にペン色鉛筆パステルコンテフェルトペンクレヨンブラシ擦筆スタイラスなどに使用例がある。描き込む素材にはの他、板紙キャンバス、板が使用される。
木炭デッサン

木炭デッサンとは木炭と、木炭紙と呼称される特有の表面を具えた紙を使用する。木炭

デッサン用木炭は、原料とする樹木の種類、産地、収穫時期など、加工の差などによって性質には差が生じ、一様に同じものにはならない。湿気ていると性質が変化し良くないとされている。数種類の木炭を好む者もいる。伊研が大手筋であり、ヤナギ、高熱ヤナギ、ミズキ、クワがよく使われる。

デッサン用木炭には木材の芯がそのまま残っているものがあり、芯が描画の際に邪魔になることがある。この芯を予め取り除くことを「芯抜き」と呼称する。

描画が全て済んだ場合、フィキサチーフ(定着液)で木炭を固定させる必要がある。
鉛筆デッサン

鉛筆デッサンとは鉛筆を使用したデッサンである。

鉛筆の硬度の種類には、9H?2H・H・F・HB・B・2B?8Bなどがある。これ以外の種類もあるが、中央あたりのものが一般的で、10Hなどは殆ど使用されない。メーカーやシリーズによって、テクスチャー、色合い、描画感、強度などに差がある。支持体は、画用紙[6][補注 3]やTMKポスター紙、白象紙、ケント紙[6]など、様々な紙が用いられる[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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