デジタルカメラ
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世界のデジカメ市場(金額ではなく台数ベース)では、1位キヤノン、2位ソニー、3位ニコンの3社によって約85 %を占めるが、そこに4位の富士フイルムと5位のパナソニック(それぞれ数%)を加えるとシェアが9割を超え、つまり世界デジカメ市場の9割を日本企業が占有している[34]。2020年現在の市場規模は世界全体で約4201億円であるが、毎年数十パーセントの規模で縮退しており、先行きが不透明である。

デジタルカメラの販売は、2007年に初めて1億台を突破し2010年の1.2億台がピークであり、2010年代には特にスマートフォンの普及によりコンパクトデジタルカメラの販売が激減している。レンズ交換式デジタルカメラの販売台数は2013年をピークとして徐々に減っているが、コンデジほどの大きな変動は見られていない。2020年にはコロナウイルスによるパンデミックもあり、販売台数が前年比で40 %以上縮小した結果、ピーク時の14分の1まで市場が縮退した。

デジカメはフィルムカメラに較べると電子機器的な要素を多く含むため、2000年代には旧来のカメラメーカーに加えて、ソニーパナソニック(経営統合前の三洋電機を含む)、カシオ計算機などの家電・電子機器メーカーも参加して激しいシェア争いを繰り広げていた。2002年頃まではオリンパスや富士フイルムがシェア1位を争っていた時代もあったが、キヤノンが2003年にデジカメ市場のシェア1位(コンデジ・一眼レフ共に)となり、ニコンが一眼レフ市場2位となった後、結局はフイルムカメラ最大手であったキヤノンとニコンがデジカメでも最大手であり続け、競合とのシェアを引き離し続ける状況が続いていた。

競争の激化に伴い、2005年京セラが日本国内のデジタルカメラ事業から撤退。2006年にはコニカミノルタがカメラ事業全般から撤退し、一眼レフカメラ部門をソニーに譲渡した。また、イーストマン・コダックも消費者向けデジタルカメラの生産から撤退し、デジタルカメラ製造部門をフレクストロニクス・インターナショナルに売却している(開発・設計・販売は継続)。2009年にパナソニックに吸収された三洋電機のカメラ部門はXactiに継承された。

デジタル一眼レフカメラは、コニカミノルタの一眼レフカメラ部門を引き継いだソニーや、オリンパスと協業しフォーサーズシステムへ参入したパナソニック、ペンタックスとの提携でサムスン電子なども参入した。2008年にパナソニックが先陣を切ってミラーレス一眼カメラを発売し、2013年にソニーがフルサイズのミラーレス一眼を開発し、以降の一眼レフ市場を方向付けた。技術的な困難さと、交換レンズを始めとするオプション類も販売する必要があるため、技術の蓄積がある光学機器メーカー(具体的にはキヤノンとニコン)か、それらの事業を引き継いだメーカー(具体的にはソニー)が残り、新規参入した家電メーカーなどは、ミラーレス一眼へと移行するか、コンパクトカメラのみに規模を縮小した。

旧来のカメラメーカーはレンズの設計に一日の長があるが、電機メーカーはイメージセンサの製造に長けている。家電メーカーの場合、光学系の設計ノウハウが乏しく設備の新設にもコストがかかるため、他のレンズメーカーから光学系部品の供給を受ける場合がある[注 41]。さらに、光学機器メーカーに比べて劣る知名度を補うため、「ライカ」や「カール・ツァイス」といった有名ブランドを冠したレンズを採用することもある[注 42]。メーカーによってはOEMとしてレンズの供給を受けるのではなく、同ブランド名を冠するレンズを自社内やレンズメーカーでライセンス生産している場合もある。

逆に光学機器メーカーが、撮像素子や画像エンジンなどの電子系統を、競合の家電メーカーにOEM委託をしていることも多い。EMSの委託先としては台湾のメーカーなどがある。特に撮像素子は、ソニー、OmniVision、サムスンで世界市場の7割以上を占めている。したがって、上に書いたメーカー別販売シェアと、実際の製造メーカー(OEM製造も含む)におけるシェアとは大きく異なる。2012年当時の他社向けOEMを含めた生産台数別のシェアを見た場合、全てのデジカメを自社製造で賄うデジカメ市場1位のキヤノンが生産台数でも1位であったが、カメラ生産台数2位が佳能企業、3位が華晶科技と、実際の生産台数では日本メーカーではなく中国や台湾のメーカーが上位を占めた[35]。2012年当時デジカメ市場2位のニコンは、一眼レフに関してはすべて自社生産だが、コンデジには力を入れておらず、コンデジに関しては全て他社製造品のOEMであった。また、上記のメーカー以外にもセイコーエプソンR-D1など)や、ライカなどがレンジファインダー式デジタルカメラの製造を行っている。2017年の時点では、本体・レンズ・撮像素子の三要素を自社製でまかなえるのは、キヤノン、ソニー、シグマFoveonを子会社化)の3社となっている。特に撮像素子は、ソニー系列のソニーセミコンダクタマニュファクチャリングが、ニコン・ペンタックス・オリンパス・富士フイルム・ライカなどにも画像センサーを製造・供給している一大センサーメーカーとなっている。

2010年以降は、ミラーレス一眼カメラで成功したソニーがキヤノンとニコン以外の「その他」のメーカーの中から頭一つ抜けて、デジカメ市場3位となった。また、コンパクトデジタルカメラの市場はカメラ搭載のスマートフォンによる浸食が進んでおり、デジカメ市場上位3社のキヤノン・ニコン・ソニー以外のメーカーにおいては撤退が相次いでいる[36][37]。こうした状況を踏まえ、2013年当時の経済産業省は日本企業の競争力強化に向けた取り組みを進めようとしていたが[38]、その後もデジカメ市場はスマホに侵食される一方であり、各社で生産体制の縮小や撤退が続いた。2015年には、サムスンが最後となるモデルを発表した後に撤退[39] したほか、2017年には、ニコンが中国江蘇省無錫市の工場で行ってきたコンパクトカメラの生産を終了し、タイの工場へ生産拠点を集約[40]、2021年には国内生産も終了した[41]。2018年、オリンパスも深?の工場で行ってきたデジタルカメラや交換レンズの製造を終了し、ベトナムの工場へ生産拠点を集約している[42]。同年には、カシオのコンパクトデジタルカメラ事業からの撤退も発表されている[43]。2021年には、オリンパスはデジカメなどの映像事業を分社化・譲渡し、OMデジタルソリューションズがオリンパスのデジカメブランドを引き継いでいる。2020年には初めてミラーレス機が一眼レフの売り上げを上回った[44]


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