デジタルカメラ
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また当時はWindows 95ブームで一般家庭にパソコンが普及し始めた時期であったため、パソコンに画像を取り込むことが広く認知された。この機種はNHKの番組「プロジェクトX?挑戦者たち?090回「男たちの復活戦 デジタルカメラに賭ける」[10]において、あたかも世界初のデジタルカメラのように紹介された(ただし、撮影画像をその場で確認できる液晶パネルを搭載したデジタルカメラとしては世界初である)。

QV-10の成功を皮切りに多くの電機企業が一般消費者向けデジタルカメラの開発・製造を始めた。QV-10発売の2か月後にリコーから発売されたDC-1にはカメラとしては初めての動画記録機能がある。その記録方法としてJPEGの連続画像(後にMotion JPEGと呼ばれる方式)を採用した。

この頃の製品はまだ画質も電池寿命もそれほど良くなく、存在が認知されたとは言え購入層もその使われ方も限定的で、性能もしばらくフィルムカメラを追い越すことはないと思われていた。
全盛期

1999年(平成11年)末から始まった高画素数化競争や小型化競争など、市場拡大を伴った熾烈な競争により性能は上昇、価格も下がり利便性も受けて、2002年(平成14年)にはフィルムカメラとデジタルカメラの出荷台数が逆転[11]、フィルムカメラからデジタルカメラへと市場が置き換わった。

報道関係やプロカメラマンの間でもデジタルカメラは普及した。初期には高画質でも大型で可搬性のないものであったり、専用のレンズ群が必要で価格も数百万円になるなど、一部の大手報道機関などが少数保有するだけの特別なカメラだった。1999年(平成11年)にニコンが既存の同社一眼レフ用レンズを使えるデジタルカメラ「D1」を定価65万円で発売後、各社完成度の高い低価格デジタル一眼レフを相次いで投入した。以後、速報性が重視される場面を中心に広まり、翌年のシドニーオリンピックなどを契機として報道各社を中心にデジタルカメラの導入が進んだ。撮影データをネットワーク経由で一瞬で遠隔地に送る事が出来、フィルム現像にかかる費用がなくコスト的にも優れたデジタル一眼レフは、フィルムカメラを駆逐し報道カメラの中心的な存在となった。その後、高性能化とデータ編集の容易さが支持されて、質感や仕上がりなどを重視する商用写真や美術写真にも活用範囲が広まった。

2000年(平成12年)頃から国内の光学機器メーカーだけでなく、電気機器メーカーが一般向けデジタルカメラ事業に参入し、さらには台湾中国韓国等のメーカーが加わった。2000年代中頃にはデジカメ市場が飽和しつつある中、カメラ付携帯電話の高機能化も加わって、店頭では販売合戦が展開されており、また2005年には京セラがデジカメ市場から撤退するなどメーカーの淘汰も始まった。
スマホカメラの台頭とコンデジの衰退

2007年に初代iPhoneが発売されて以降、高性能なカメラを搭載したスマートフォンの普及に伴い、デジカメの世界販売台数は2010年の1億2146万3234台をピークに[12]、また市場規模は2008年の2兆1,640億円をピークに[13] 減少を続けている。特に、一般消費者を主なユーザーとするレンズ一体型デジカメ(コンパクトデジカメ、コンデジ)の出荷台数は2008年の約1億857万台をピークとして、10年で1/10になるなど急激に減少した。

一方で、ハイアマチュア以上を主なユーザーとするレンズ交換式デジカメの出荷台数は2013年の約1713万台をピークとして、5年で1/2にしかならないなど減少は緩やかであり、2018年にはレンズ交換式デジカメ出荷台数1075万台に対してコンデジの出荷台数が866万台と、レンズ交換式の出荷台数がコンデジを上回った[14]
現在

デジタルカメラの世界総出荷台数は、2018年は約2200万台(市場規模は約7300億円)、2019年度は1522万台(市場規模は4500億円)。2020年度は世界総出荷台数は888万台(市場規模は4201億円[15])となり、ついに富士フイルム社のフイルムカメラ「チェキ」の年間販売台数(2018年度は約1005万台)を下回った。

2021年現在、メーカーの淘汰が進んでおり、世界シェアはキヤノンソニーニコン富士フイルムの4社で約9割、パナソニックを加えると約9割5分を占める。特にキヤノンは2003年に初めてシェア1位となって以降、デジカメ市場で不動の1位として2020年度には約48 %の市場シェアを占めるが、市場自体が急激な右肩下がりであるため、キヤノンは2020年4?6月期に史上初の四半期赤字に転落した。2018年にはカシオがデジタルカメラ事業から撤退、2020年にはオリンパスがデジタルカメラ事業を投資ファンドに売却するなど苦しい状態が続いている。
分類

実態としてはおおむね下記の通りである。分類が困難な機種もある。

コンパクト・デジタルカメラ - レンズ交換が不可能のもの
[注 2]

ネオ一眼 - 明るい高倍率ズームレンズを持った、比較的大きなもの。2010年頃まではコンパクトデジカメとしての手軽さと、レンズ交換式一眼レフのような高性能を併せ持つ点が評価され、旅行などに重宝された。しかし、一眼レフ並みの大きさで取り回しが面倒な上にレンズ交換が不可という、その中途半端な立ち位置によって、デジカメのジャンルの中では最も早く衰退した。2022年現在はニコン「COOLPIX P1000」(2018年発売)などの超高倍率機を中心に生き残っている[16]

高級コンパクトカメラ - 比較的大きな撮像素子(1/1.8型以上)を持ち、マニュアル操作に重点を置いたもの。2010年代前半よりスマホと対抗するためにコンデジの高級化が始まり、従来は一眼レフにしか搭載されていなかった35 mmフルサイズやAPS-Cサイズの大型センサーを搭載するコンデジが登場し始めた。

(上記以外の)コンパクトデジタルカメラ - 小型化に重点を置いた一般向けの機種。2000年代にはフイルムカメラからの移行先として、一般ユーザーがこのタイプのデジカメを買い求めたために市場が急激に拡大し、市場の多くをこのタイプが占めた時代もあったが、この程度の性能ならスマホのカメラで十分であるため、スマホの普及とともに市場が急激に縮退した。


レンズ交換式カメラ - レンズ交換が可能なもの。2009年まではデジカメ市場の1割に満たない、ハイアマチュアからプロフェッショナル向けのニッチな製品だったが、スマホの登場後にコンデジの市場が急激に縮退したことによって、2018年以降はレンズ交換式カメラがデジカメ市場の過半数を占めるようになっている。

デジタル一眼レフカメラ - ペンタプリズムなどによる光学式ファインダーを持つ従来の一眼レフカメラをデジタル化した形式。最も一般的な撮像素子のサイズは、APS-Cサイズと呼ばれる23.6 mm × 15.8 mmの撮像素子だが、35 mmフィルムと同程度の大きな撮像素子(36 mm × 24 mm)を持つものは「フルサイズ」と呼ばれる。その他に、「フォーサーズ」と名付けられた、APS-Cサイズよりひと回り小さい(17.3 mm × 13 mm)撮像素子の規格をオリンパスとコダックが独自に策定して、それぞれのデジタル一眼レフとミラーレスカメラに採用している。

ミラーレス一眼カメラ - 一眼レフカメラのデジタル化の中で派生した形式で、レンズ交換が可能でありながら光学式ファインダーが省かれ、電子式ファインダーのみを持つ。ミラーが無いためコンパクトカメラのようにボディを薄くできるため、スマホより高品質な写真が撮りたいけれど大きなカメラは持ちたくないという層に需要がある。2000年代後半より各社によって開発が行われていたが、市場では後発だったソニーがコニカミノルタの技術をベースとして2013年に発売した世界初のフルサイズミラーレスカメラ「α7」のヒットによって市場が急拡大した。この流れにキヤノンやニコンも追随したため、2010年代後半よりデジカメ市場の主戦場はミラーレス一眼へと移行しており、初心者向けからプロフェッショナル向けまで幅広い製品が存在する。2020年にはデジタル一眼レフカメラの販売台数を追い抜いた。なお、ソニーは「α7」のヒットにより世界ミラーレス市場1位となって、それまでキヤノンとニコンが独占していた高級カメラ市場に食い込むことに成功し、縮退するデジカメ市場で唯一伸長するミラーレス市場において販売シェアを伸ばしたことによって、2019年にはニコンを抜いて世界デジカメ市場2位となった。

中判デジタルカメラ - 35 mmフィルムより大きな撮像素子を持つ形式で、フィルム一眼レフカメラのシステムをベースにカメラボディをデジタル化した形式、フィルム一眼レフカメラのオプション品としてデジタルバックの形で提供されるものや、ミラーレス一眼カメラとして新規に開発した形式もある。2023年現在、富士フイルムとハッセルブラッドからミラーレス一眼カメラ、フェーズワンから業務用でデジタルバックや一眼レフカメラの製品が発売されている。

ハイブリッドインスタントカメラ(チェキ) - インスタントカメラとデジタルカメラが一体化したもの。本体にプリンターも内蔵しており、デジタルで撮影した画像をフィルム[17]に記録し、現像・プリントまでをカメラ1台で行うことができる。2017年4月に発売した「instax SQUARE SQ10」[18]が同社のインスタントカメラ「instax」シリーズ(通称:チェキ)の上位機種で展開されている。商品戦略上は「チェキ」のファミリーであるが、カメラ映像機器工業会におけるフィルムカメラの統計は2008年に廃止されているため、統計上は「デジカメ」にカウントされている。

FinePixシリーズのひとつとして、以前の1999年11月に intax miniを使用して、同じくデジカメとプリンター一体構造である「FinePix PR21プリンカム」[19]が発売されたが、定価99,800円かつ約700グラムで巨大で、話題とならなかった。


トイデジカメ - おもちゃのデジカメ。無名のメーカーから様々な製品が販売されている。高くても数千円程度で買える。2010年代後半の時点では、数千万画素、4K解像度で動画も撮れるものも登場しているが、画質はあまり良くない。スマホのカメラよりも低性能だが、味のある写真が撮れるので、愛好家も存在する。


構造デジタルカメラの構造概略2種類のデジタルカメラの光学系
A:コンパクト・デジタルカメラ
B:一眼レフ・デジタルカメラ
1.レンズ 2.撮像素子 3.液晶表示部 4.ファインダー 5.ミラー 6.シャッター 7.ペンタプリズム
全体構造

デジタルカメラの全体的な構成は、大きく分けて光学系と電子系、そしてそれらを保持する筐体に分類できる[注 3]。光学系はレンズと絞り機構であり、一眼レフでは光学式ファインダー用のレフレックスミラーとプリズムがこれらに加わる。機械式のシャッター機構を備えるものもある。電子系は受光素子とメモリーを含む画像演算回路、記録装置、液晶表示器、ストロボ、操作スイッチ、電池などである[注 4]


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