デオキシリボ核酸
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RNA(リボ核酸)鎖はDNA鎖を鋳型として転写と呼ばれる過程で作られ、その際にDNA塩基は対応する塩基と交換されるが、チミン(T)の場合は例外で、RNAはウラシル(U)と交換する[4]。これらのRNA鎖は翻訳と呼ばれる過程で、遺伝暗号(英語版)に基づいてタンパク質のアミノ酸配列を決定する。

真核細胞では、DNAは染色体と呼ばれる長い構造体に組織化されている。これらの染色体は、通常の細胞分裂の前にDNA複製過程で複製され、それぞれの娘細胞に完全な染色体の集合を提供する。真核生物動物植物真菌類原生生物)はDNAの大部分を核DNAとして細胞核内に保存し、一部をミトコンドリアDNAとしてミトコンドリア内、あるいは葉緑体DNA(英語版)として葉緑体内に保存している[5]。対照的に、原核生物細菌古細菌)はDNAを細胞質内の環状染色体(英語版)にのみ保存している。真核生物の染色体内では、ヒストンなどのクロマチンタンパク質がDNAを小さくまとめて組織化している。これらの緻密な構造は、DNAと他のタンパク質との相互作用を導き、DNAのどの部分が転写されるかを制御するのに役立っている。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
特性DNAの化学構造 (点線は水素結合)。4種類の塩基と、主鎖を構成するリン酸およびデオキシリボースを色分けした。二重らせんの両末端には、一方の鎖に露出した5'リン酸が、他方の鎖に露出した3'ヒドロキシ基 (-OH) がある。5'→3'方向は、左鎖では下を向き、右鎖では上を向く。

DNAはヌクレオチドと呼ばれる反復単位からなる長いポリマーである[6][7]。DNAの構造はその長さに沿って動的であり、密なループを作ったり、他の形状に巻きつくことができる[8]。どの生物種においても、DNAは水素結合で結合した2本のらせん状の鎖で構成されている。両方の鎖とも、同じ軸にらせん状に巻かれ、ピッチも同じで34オングストローム (3.4 nm)である。一対の鎖の半径は10 A (1.0 nm)である[9]。別の研究によると、別の溶液中で測定した場合、DNA鎖の幅は22?26 A (2.2?2.6 nm)、1ヌクレオチド単位の長さは3.3 A (0.33 nm)であった[10]。ほとんどのDNAの浮力密度は1.7 g/cm3である[11]

通常、DNAは一本の鎖として存在するのではなく、一対の鎖がしっかりと結合して存在する[9][12]。この2本の長い鎖は互いに巻きついて二重らせんを形成している。ヌクレオチドには、DNA分子の主鎖の一部(鎖を構成する)と核酸塩基(らせん内部でもう一方のDNA鎖と相互作用する)の両方が含まれている。糖と結合した核酸塩基はヌクレオシド: nucleoside)と呼ばれ、これに対し糖と1つ以上のリン酸基と結合した塩基はヌクレオチド: nucleotide)と呼ばれる。(DNAのように)複数のヌクレオチドが結合した生体高分子をポリヌクレオチドと呼ぶ[13]

DNA鎖の主鎖はリン酸基と基が交互に結合してできている[14]。DNAの糖は2-デオキシリボースで、ペントース炭素数5、五炭糖)の一種である。糖と糖は、隣接する糖環の3位と5位の炭素原子間にホスホジエステル結合を形成するリン酸基によって結合している。これらの炭素はそれぞれ、3'末端(three prime end)、5'末端(five prime end)と呼ばれる。プライム記号(')は、デオキシリボースがグリコシド結合を形成する塩基の炭素原子と区別するために使われる[12]

このようにDNA鎖には通常、リボースの5'炭素に結合したリン酸基(5'ホスホリル)を持つ末端と、リボースの3'炭素に結合した遊離ヒドロキシ基(3'ヒドロキシ)を持つ末端がある。糖-リン酸骨格に沿った3’と5'炭素の配向は、各DNA鎖に方向性(極性とも呼ばれる)を与える。核酸の二重らせん(英語版)では、一方の鎖のヌクレオチドの方向ともう一方の鎖のヌクレオチドの方向は反対で、逆平行になっている。DNA鎖の非対称末端については、5'末端方向と3'末端方向という方向性を有し、5'末端はリン酸基を有し、3'末端はヒドロキシ基を有すると呼ばれる。DNAとRNAの大きな違いの一つは糖で、DNAの2-デオキシリボースがRNAではペントース糖のリボースに置き換えられている[12]DNAの部分拡大図。塩基は2本のらせん状の鎖の間に水平に配置されている (アニメーション版)[15]

DNA二重らせんは、ヌクレオチド間の水素結合と、芳香族性(英語版)核酸塩基間の塩基スタッキング相互作用という、主に2つの力によって安定化されている[16]。DNAに含まれる4つの塩基は、アデニン(.mw-parser-output .monospaced{font-family:monospace,monospace}A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)である。これらの4つの塩基は、アデノシン一リン酸で示したように、糖-リン酸に結合して完全なヌクレオチドを形成する。アデニンはチミンと対になり、グアニンはシトシンと対になり、それぞれ A-T と G-C の塩基対を形成する[17][18]
核酸塩基の分類

核酸塩基は、5員および6員の縮合複素環式化合物であるプリン A と G と、6員環のピリミジン C と T の2種類に分類される[12]。第5のピリミジン核酸塩基であるウラシル(U)は通常、RNA内でチミンの代わりを担い、その環上にメチル基を持たない点でチミンと異なる。RNAとDNAに加えて、多くの人工核酸類似体(英語版)が核酸の特性を研究するため、あるいはバイオテクノロジーで使用するために作成されてきた[19]
非標準塩基

DNAには修飾塩基が存在する。このうち最初に認識されたのは5-メチルシトシンで、1925年に、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のゲノムから発見された[20]。細菌ウイルス(バクテリオファージ)にこうした非標準塩基(: noncanonical base)が存在する理由は、細菌に存在する制限酵素を避けるためである。この酵素系は、少なくとも部分的には、細菌をウイルス感染から保護する分子免疫系として働く[21]。より一般的な修飾DNA塩基であるシトシンとアデニンの修飾は、動植物における遺伝子発現のエピジェネティック制御(後成的調整)において、重要な役割を果たしている[22]

DNAには多くの非標準塩基が存在することが知られている[23]


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