ディープ・ブルー対ガルリ・カスパロフ
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1.Nf3 d5 2.g3 Bg4 3.b3 Nd7 4.Bb2 e6 5.Bg2 Ngf6 6.0-0 c6 7.d3 Bd6 8.Nbd2 0-0 9.h3 Bh5 10.e3 h6 11.Qe1 Qa5 12.a3 Bc7 13.Nh4 g5 14.Nhf3 e5 15.e4 Rfe8 16.Nh2 Qb6 17.Qc1 a5 18.Re1 Bd6 19.Ndf1 dxe4 20.dxe4 Bc5 21.Ne3 Rad8 22.Nhf1 g4 23.hxg4 Nxg4 24.f3 Nxe3 25.Nxe3 Be7 26.Kh1 Bg5 27.Re2 a4 28.b4 f5 29.exf5 e4 30.f4 Bxe2 31.fxg5 Ne5 32.g6 Bf3 33.Bc3 Qb5 34.Qf1 Qxf1+ 35.Rxf1 h5 36.Kg1 Kf8 37.Bh3 b5 38.Kf2 Kg7 39.g4 Kh6 40.Rg1 hxg4 41.Bxg4 Bxg4 42.Nxg4+ Nxg4+ 43.Rxg4 Rd5 44.f6 Rd1 45.g7 1?0

このゲームにおけるディープ・ブルーの44ムーブ目はカスパロフを当惑させ、カスパロフはこれを「優れた知性」(すなわち人間による介入)に起因すると考えた。伝えられるところによると、このムーブはディープ・ブルーが価値のあるムーブを決定できず、フェイルセーフ(安全装置)を用いたバグの結果であった。ネイト・シルバーは、カスパロフは「直観に反したプレーが優れた知性の証であるに違いないと結論付け」、これが第2局の敗北につながった、と提唱している[2]
第2局

このゲームにおいて、カスパロフはIBMの不正行為を非難した。この主張は2003年のドキュメンタリー『Game Over: Kasparov and the Machine』でも繰り返された[3][4][5]。カスパロフは結局投了したが、ゲーム後の解析はこのゲームは引き分けであったことを示している。ゲームはルイ・ロペス・オープニング、スミスロフ・ディフェンス・バリエーションで開始した。

対局は1997年5月4日に行われた。ディープ・ブルー?カスパロフ
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.0-0 Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 0-0 9.h3 h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.b3 Nc6 16.d5 Ne7 17.Be3 Ng6 18.Qd2 Nh7 19.a4 Nh4 20.Nxh4 Qxh4 21.Qe2 Qd8 22.b4 Qc7 23.Rec1 c4 24.Ra3 Rec8 25.Rca1 Qd8 26.f4 Nf6 27.fxe5 dxe5 28.Qf1 Ne8 29.Qf2 Nd6 30.Bb6 Qe8 31.R3a2 Be7 32.Bc5 Bf8 33.Nf5 Bxf5 34.exf5 f6 35.Bxd6 Bxd6 36.axb5 axb5 37.Be4 Rxa2 38.Qxa2 Qd7 39.Qa7 Rc7 40.Qb6 Rb7 41.Ra8+ Kf7 42.Qa6 Qc7 43.Qc6 Qb6+ 44.Kf1 Rb8 45.Ra6 1?0

当時、カスパロフは45...Qe3 46.Qxd6 Re8後に、黒(カスパロフ)がパペチュアル・チェック(千日手)によって引き分けに持ち込むことができるという事実を見逃していた、と報道された。カスパロフの友人らはカスパロフにそのことを翌朝伝えた[6]。彼らは、黒のクイーンがその後に白を果てしなくチェックし続けられるポジション47.h4 h5!を提案した。これは、ディープ・ブルーがキングを44.Kf1と動かしたために可能であった。第2局の終局模様と特に44.Kf1に関して、チェスジャーナリストのミグ・グリーンガードは映画『Game Over: Kasparov and the Machine』において、「最後のポジションは実際は引き分けであり、ディープ・ブルーの最終ムーブはとんでもない間違いだったことが分かった。なぜなら、ディープ・ブルーには2つの選択肢があったからだ。ディープ・ブルーはキングをここかそこに動かすことができる。ディープ・ブルーは間違った方を選んだ」。この映画の中で、4度米国チャンピオンになったヤセル・セイラワンは次に以下のように結論付けた: 「コンピュータは少し無防備な状態にキングを置いたままにした。そしてガルリはパペチュアル・チェックをしかけることができた、勝ちではないがパペチュアル・チェックを」。

今日の最高峰のコンピュータチェスエンジン、例えばStockfish(どの人間よりも強い)は、当時ディープ・ブルーがパペチュアル・チェックを見逃したという当時の人間の分析とは矛盾するが、最終ポジションを引き分けとは見なさず、白により勝つチャンスがあると見なしている[7][8]
第3局

第3局はカスパロフがイレギュラー・オープニングの1つであるミーゼス・オープニングを選択したため、興味深いものとなった。カスパロフは難解なオープニングを指すことによってコンピュータのオープニング・ブック(序盤の定跡データベース)を無効化でき、コンピュータがオープニングで悪い手を指すであろうと考えた。これは現在は一般的な戦術であるが、当時は比較的新しい発想であった[9]。このアンチコンピュータ戦術にもかかわらず、ゲームは引き分けとなった。

対局は1997年5月6日に行われた。カスパロフ?ディープ・ブルー
1.d3 e5 2.Nf3 Nc6 3.c4 Nf6 4.a3 d6 5.Nc3 Be7 6.g3 0-0 7.Bg2 Be6 8.0-0 Qd7 9.Ng5 Bf5 10.e4 Bg4 11.f3 Bh5 12.Nh3 Nd4 13.Nf2 h6 14.Be3 c5 15.b4 b6 16.Rb1 Kh8 17.Rb2 a6 18.bxc5 bxc5 19.Bh3 Qc7 20.Bg4 Bg6 21.f4 exf4 22.gxf4 Qa5 23.Bd2 Qxa3 24.Ra2 Qb3 25.f5 Qxd1 26.Bxd1 Bh7 27.Nh3 Rfb8 28.Nf4 Bd8 29.Nfd5 Nc6 30.Bf4 Ne5 31.Ba4 Nxd5 32.Nxd5 a5 33.Bb5 Ra7 34.Kg2 g5 35.Bxe5+ dxe5 36.f6 Bg6 37.h4 gxh4 38.Kh3 Kg8 39.Kxh4 Kh7 40.Kg4 Bc7 41.Nxc7 Rxc7 42.Rxa5 Rd8 43.Rf3 Kh8 44.Kh4 Kg8 45.Ra3 Kh8 46.Ra6 Kh7 47.Ra3 Kh8 48.Ra6 ???
第4局

このゲームでは、カスパロフはカロ・カン・ディフェンスでプレーした。カスパロフはゲームの終盤に時間が無くなってしまった。急いで指した次善の手によって、カスパロフは勝利を逃したかもしれない[10]

対局は1997年5月7日に行われた。ディープ・ブルー?カスパロフ
1.e4 c6 2.d4 d6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 Bg4 5.h3 Bh5 6.Bd3 e6 7.Qe2 d5 8.Bg5 Be7 9.e5 Nfd7 10.Bxe7 Qxe7 11.g4 Bg6 12.Bxg6 hxg6 13.h4 Na6 14.0-0-0 0-0-0 15.Rdg1 Nc7 16.Kb1 f6 17.exf6 Qxf6 18.Rg3 Rde8 19.Re1 Rhf8 20.Nd1 e5 21.dxe5 Qf4 22.a3 Ne6 23.Nc3 Ndc5 24.b4 Nd7 25.Qd3 Qf7 26.b5 Ndc5 27.Qe3 Qf4 28.bxc6 bxc6 29.Rd1 Kc7 30.Ka1 Qxe3 31.fxe3 Rf7 32.Rh3 Ref8 33.Nd4 Rf2 34.Rb1 Rg2 35.Nce2 Rxg4 36.Nxe6+ Nxe6 37.Nd4 Nxd4 38.exd4 Rxd4 39.Rg1 Rc4 40.Rxg6 Rxc2 41.Rxg7+ Kb6 42.Rb3+ Kc5 43.Rxa7 Rf1+ 44.Rb1 Rff2 45.Rb4 Rc1+ 46.Rb1 Rcc2 47.Rb4 Rc1+ 48.Rb1 Rxb1+ 49.Kxb1 Re2 50.Re7 Rh2 51.Rh7 Kc4 52.Rc7 c5 53.e6 Rxh4 54.e7 Re4 55.a4 Kb3 56.Kc1 ??? カスパロフ?ディープ・ブルー
1997年、第5局

abcdefgh
88
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh
49...Kb4後のポジション; 引き分けで同意
第5局

このゲームでは、キングズ・インディアン・アタック・オープニングがプレーされた。前のゲームと同様に、ディープ・ブルーは素晴しいエンドゲームをプレーし、カスパロフが勝ちそうに見えたところで引き分けに持ち込んだ。

対局は1997年5月10日に行われた。カスパロフ?ディープ・ブルー
1.Nf3 d5 2.g3 Bg4 3.Bg2 Nd7 4.h3 Bxf3 5.Bxf3 c6 6.d3 e6 7.e4 Ne5 8.Bg2 dxe4 9.Bxe4 Nf6 10.Bg2 Bb4+ 11.Nd2 h5 12.Qe2 Qc7 13.c3 Be7 14.d4 Ng6 15.h4 e5 16.Nf3 exd4 17.Nxd4 0-0-0 18.Bg5 Ng4 19.0-0-0 Rhe8 20.Qc2 Kb8 21.Kb1 Bxg5 22.hxg5 N6e5 23.Rhe1 c5 24.Nf3 Rxd1+ 25.Rxd1 Nc4 26.Qa4 Rd8 27.Re1 Nb6 28.Qc2 Qd6 29.c4 Qg6 30.Qxg6 fxg6 31.b3 Nxf2 32.Re6 Kc7 33.Rxg6 Rd7 34.Nh4 Nc8 35.Bd5 Nd6 36.Re6 Nb5 37.cxb5 Rxd5 38.Rg6 Rd7 39.Nf5 Ne4 40.Nxg7 Rd1+ 41.Kc2 Rd2+ 42.Kc1 Rxa2 43.Nxh5 Nd2 44.Nf4 Nxb3+ 45.Kb1 Rd2 46.Re6 c4 47.Re3 Kb6 48.g6 Kxb5 49.g7 Kb4 ???

もし白が50.g8=Qと指せば、次に黒は50...Rd1+、51...Rd2+という手順を3度繰り返すことによって引き分けに持ち込むことができる。 ディープ・ブルー?カスパロフ
1997年、第6局

abcdefgh
88
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh
7...h6後のポジション; 次の手はディープ・ブルーの8.Nxe6
第6局詳細は「ディープ・ブルー対カスパロフ、1997年、第6局」を参照

第6局の前、総スコアは2??2?の引き分けであった。第4局と同様、カロ・カン・ディフェンスを選択した。次にカスパロフはディープ・ブルーに大胆なナイトのサクリファイスを許し、これによってカスパロフの守備が破壊され、20ムーブより少ない手数で投了を余儀無くされた。

対局は1997年5月11日に行われた。ディープ・ブルー?カスパロフ
1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nd7 5.Ng5 Ngf6 6.Bd3 e6 7.N1f3 h6 8.Nxe6 Qe7 9.0-0 fxe6 10.Bg6+ Kd8 11.Bf4 b5 12.a4 Bb7 13.Re1 Nd5 14.Bg3 Kc8 15.axb5 cxb5 16.Qd3 Bc6 17.Bf5 exf5 18.Rxe7 Bxe7 19.c4 1?0
脚注^ Tim Harding. “ ⇒How Much Longer Can Man Match the Computer?” (pdf). The Kibitzer. Chesscafe.com. 2008年2月9日閲覧。
^ Silver, Nate. The Signal and the Noise: Why so Many Predictions Fail--but Some Don't. New York: Penguin, 2012. Print.
^ Robert Koehler (2003年9月9日). “ ⇒Game Over: Kasparov and the Machine”. Variety. 2008年12月13日閲覧。
^ Kevin Crust (2005年3月15日). “ ⇒Game Over: Kasparov and the Machine”. Los Angeles Times. 2008年12月13日閲覧。 [リンク切れ]
^ Janice Page (2005年1月14日). “ ⇒Game Over: Kasparov and the Machine”. Boston Globe. 2008年12月13日閲覧。
^ Frederic Friedel. “Garry Kasparov vs. Deep Blue”. Daily Chess Columns. Chessbase.com. 2007年4月9日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2007年4月20日閲覧。
^ “ ⇒Online computer analysis of the final position of game 2”. 2015年5月1日閲覧。
^ “ ⇒Kasparov - Deep Blue 1997: History gets it wrong!”. 2015年5月1日閲覧。
^ “ ⇒Mig on Chess #178: All the News That's Fit to Mock”. Daily Chess Columns. Chessbase.com. 2007年4月19日閲覧。


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