1990年代後半の視聴率低下はアニメ業界に多大な影響を及ぼした[26]。フジテレビのアニメプロデューサーで執行役員も務める清水賢治によると、「少子化の影響や塾通いの増加による子供たちの夕刻?19時台の在宅率の低下が大きい」と語り、一時はアニメ自体の放送を取り止めることも検討されたほどであり、結局は土日の朝枠に移動させる動きが主流になったという[8]。
さらにファミコン登場以降、家庭用ゲーム機の普及で子供の関心がゲームに移ったことで、アニメ関連の玩具売り上げ低下によって玩具メーカーがスポンサーから撤退し、夕方からゴールデンタイムにかけての放送枠確保が難しくなっていた[26]。
2000年代後半になると、キー局各局ではゴールデンタイム枠放送作品の消滅が相次ぐ。深夜アニメ本数当時最多を記録した2006年にはゴールデンタイム側は逆に撤退戦の状況となり[27]、フジテレビ系列では2006年9月、日本テレビ系列では2009年3月を以ってゴールデンタイム帯からアニメ枠を撤退した。テレビ東京系列では2000年代前半に最大6枠あったゴールデンタイムのアニメ作品の総本数は増減を繰り返した末、2018年9月をもって木曜19時台放送枠2本が日曜夕方枠へ移行により、ゴールデンタイム帯から全面撤退[28]。テレビ朝日系列の金曜日の2枠も、2019年9月をもって土曜夕方枠へ移行し、ゴールデンタイム帯から撤退したため、キー局各局からゴールデンタイム枠放送作品が一時的に消滅することになった[注釈 47]。テレビ東京(広報・IR部長:大木努)は2007年に「アニメはもう子供たちのファーストチョイスではない」と述べている[29]。
その後、2020年10月の改編で、テレビ東京系列の『ポケットモンスター』が日曜夕方から金曜19時台枠への移動により、民放キー局で放送される19時台のアニメが約1年ぶりに復活、現在はキー局の5系列のうち(レギュラーとして)同時間帯のアニメ枠を持っているのは、テレビ東京系列の金曜19時の前半枠のみである。
少数ではあるが、2010年代に入ると、少子化情勢や編成の都合などによりテレビアニメ番組の「単独での」制作を取りやめる放送局も出た。例えば名古屋テレビ(メ?テレ)では、2017年10月期に情報番組『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日・朝日放送テレビ・名古屋テレビの共同制作)の開始に伴う改編により、同年9月を以てテレビアニメの単独制作から撤退している[30]。 1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』の商業的成功によりコアなファン対象の作品が多数制作され、放映権料の高いゴールデンタイムではなく、夕方の放送を中心に多数の制作会社が参入し、放送枠が不足すると深夜枠の開拓が始まった[26]。大量生産に有利なデジタルアニメが普及し、テレビ東京や独立局、BS局やCSアニメ専門チャンネルなどで放送作品も増加したが、過剰な数の作品制作と負担の増加により、作画やシナリオを崩壊させる品質の低下、更には制作スケジュールの遅延による放送スケジュールの破綻に至る事例が続出、1クールの放送枠を「完走」すら出来ない事態まで至る作品まで出た。 かつてはテレビ局が企画に関与することが多かったテレビアニメだが、ここに至っては深夜枠は一種の「試写室」の扱いとなり、通信販売番組と同じようなビジネスモデルに変わっていった[31]。 こうして2000年代に本数は急増したが、2000年代前半のフジテレビ深夜では編成の混乱が発生し最終回まで放送されないアニメが続出[31]、2008年に発生したリーマン・ショック・世界金融危機の影響などから2010年頃には本数が減少するなどの影響が出た[32][33]。2010年代前半にはリーマンショックの影響を脱し本数は再び増加した[34]。 深夜アニメのターゲットはアニメの関心が強いアニメオタク層であり、パッケージ販売のためのプロモーションの性格が強い。そのため製作委員会各社がスポンサーとなり、番組枠を買い取って放送するケースも多い。深夜枠放送作品は、DVDおよびBlu-ray Discなどのパッケージ販売が主な収益だったことから、付加価値を高めて購買意欲を刺激する必要があり、以下の事情により本放送とは異なる改訂・増補がなされる場合もある。
深夜帯
視聴層の二極化とパッケージ販売(ビデオソフト化)による制作費回収システム「アニメ (日本のアニメーション作品)#映像媒体のパッケージ販売」も参照
放送の修正(リテイク)
制作スケジュール破綻、またはそれに近い状態になったエピソードが多発した作品に多く見られる。クレジットやテロップの修正も含まれる。
表現規制を制作意図に戻す。
お色気や流血など刺激の強い表現で、テレビ放送時に規制されたものを本来の状態に戻すために、追加もしくは差し替えが行われる。また「自主規制音」の部分が、別音声として収録された作品もある(『ハヤテのごとく!』・『生徒会役員共』など)。
逆に版権・著作権の問題などからソフト化の際に規制が追加されたり、内容が一部改変されるケースも少ないながら存在する。例として『銀魂』ではテレビ放送版で流れたパロディ元の原曲が、映像ソフト版では別の曲に差し替えられることも多い。
画面枠(アスペクト比)の変更。
2009年9月期までのTBS製作作品や、かつてのテレビ東京製作作品の一部では、「16:9」の画面サイズマスターを地上波での放送時には画面の両端をカットし、「4:3」のサイズで放送する例がほとんどであった(2009年当時は地上デジタル放送が普及途上にあり、受信できない地域が多かったため)。パッケージ化の際には元の「16:9」として販売される。
全バージョンの収録
CMなどの放送用の素材を特典として収録。
パッケージ版の販促を意図して、放送地域別(衛星放送を含む)に一部シーンの別バージョンを放送する作品では[注釈 48]、全バージョンが収録されている。
未放送部分の収録
本編の一部・結末を放送せず、またその部分を別売りにする手法に対して視聴者の不満は大きいが、パッケージ販売に制作費を大きく依存する深夜アニメ制作の難しさが浮き彫りになっている。
本編のエピソードの一部を放送しない - 作品全体の内容の理解には支障がないが、パッケージ版で背景や人間関係がより深く理解できるといった内容になっている。未放送回の存在は事前にウェブサイトなどで告知されていることが多い。
本編の結末を放送しない - 2003年?2004年のフジテレビやテレビ朝日の深夜アニメで顕著に見られ、地デジ放送準備工事に伴う放送終了時間繰り上げや特別番組やスポーツ中継などによる放送スケジュールの都合で最後まで放送できない作品が続出し、パッケージ版か衛星放送などでしか結末を視聴することができなかった。
2011年には東日本大震災による影響(報道特番による休止・災害描写への配慮、放送枠の不足など)から最終回が放送できなくなった作品もある。
『かしまし ?ガール・ミーツ・ガール?』のラストシーンがDVDに収録される真の最終回への露骨な誘導であったことから、ラストシーンのセリフをとって「あのね商法[35]」などと呼ばれている。
新規の映像の追加収録
番外編・後日談・短編アニメで、本編からやや離れたパロディ色が強い内容のものを収録する作品が多い。従来の人気作品の続編や番外編をOVA、劇場版を制作するという手法の延長線上にある。一部はリリースの後日ないし先行の特別番組の形でテレビ放送するケースもある。
主題歌などの音源CDを同梱
主題歌や挿入歌・サウンドトラック・ドラマCDなどを単品として発売せず、映像ソフトの特典として同梱させる事例も増えている。一部は後日単体のアルバムとして発売されるケースもある。
関係者出演の特典映像・音声を収録
アニメ本編とは別に、オーディオコメンタリー、出演声優や制作スタッフのトーク、その作品制作の裏側に密着したドキュメンタリー、イベント、ライブなどの映像、出演声優によるバラエティ番組的な内容などを映像特典として追加収録する例も多い。