テルペン
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接頭辞はギリシャ語に由来し、それぞれモノ (mono-)、ジ (di-)、トリ (tri-)、テトラ (tetra-) は1から4、ヘミ (hemi-) は半分、セスキ(sesqui-) は1と1/2、セステル (sester-) は2と1/2[注 1]、セスクアル (sesquar-) は3と1/2[注 2] を意味する。ただし、生合成が進み各種テルペノイドに誘導される過程で、炭素原子が付加されたり取り除かれることもあるため、炭素数が5の倍数にならないテルペノイドも多数ある。


構造によって非環式、単環式、二環式、三環式のように分類される場合がある。それぞれ分子内に0個、1個、2個、3個の環状構造を含む。さらに細かく骨格構造によって分けられることもある。左側がhead、右側がtail

また、イソプレン単位が繋がっている向きによって、「head-tail」「head-head」「tail-tail」のように分類される。メチル基が2個ついている側がhead、エチル基の側がtailである。
ヘミテルペン左からプレノール、3-メチル-3-ブテン-2-オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネシオ酸、イソ吉草酸

イソプレン単位を1個だけ持つものはヘミテルペノイドと呼ばれる。よく知られているものはおよそ25種あるが、天然に見られるのはごくまれである。アルコール誘導体のプレノールや、カルボン酸誘導体であるチグリン酸アンゲリカ酸、セネシオ酸、イソ吉草酸が例である。
モノテルペン

モノテルペノイドは900種類以上知られており、すべてモノテルペン合成酵素によってゲラニル二リン酸から生合成される。反応は複雑なものであり、多様な構造を持つモノテルペノイドが作り出される。三環式のものはほとんど存在しないが、ボルナンの2,6位が架橋したトリシクレン、甲虫が分泌するカンタリジンが知られる。セスキテルペノイドとともに植物によって作り出され、精油の主成分を構成する。針葉樹の落葉などからなる森林の土には1立方メートルあたり1リットル程度のモノテルペノイドが含まれる。これは山火事が広がりやすいことの主な理由のひとつである。
非環式コリアンダーの種子にはリナロールが含まれる

代表的なモノテルペンはミルセンオシメン、コスメンである。ミルセンは月桂樹、オシメンはラベンダーの精油に含まれる。

リナロールバラ、ラベンダーに含有される。コリアンダーの葉やパルマローザ油ゲラニオールネロールを含む。シトロネロールシトロネラ油から、ミルセノールタイム油から得られる。ラベンダー油にはラバンジュロールもみられる。イプスジエノールはランの花の香り成分である。これらはモノテルペノイドアルコールである。

モノテルペノイドアルデヒドのネラールとゲラニアールはシス-トランス異性体であり、まとめてシトラールと呼ばれる。香料の原料として利用され、例えばアセトンと縮合させたのち環化させるとイオノンの2種の異性体が得られる。これはスミレのような香りをもつ。イオノンはカロテンやレチノール(ビタミンA)の原料でもある。シトロネラールは防虫剤として使われる。

フラノイドモノテルペンとしてペリレンやローズフランが知られる。ローズフランはバラ油の香気成分で、ペリレンは精油中に含まれる防御フェロモンである。

カルボン酸としてはゲラニル酸が知られる。
単環式リモネンはオレンジやレモンなどの柑橘類の果皮にみられるチモールの名称はハーブの一種、タイムに由来する

単環式のモノテルペノイドはほとんどがパラメンタン骨格を持つが、シクロプロパンシクロブタンシクロペンタン骨格を持つものも存在する。クリサンテモール(シクロプロパン)、グランジソール(シクロブタン)、ジュニオノン(シクロブタン)が例として挙げられる。におい閾値がもっとも低い化合物として知られるチオテルピネオールも単環式モノテルペノイドである。

シクロペンタン骨格を持つモノテルペノイドはおよそ200種ほど知られており、イリドイドやセコイリドイドに分類されている。イリドイドはイリドミルメクス属 (Iridomyrmex) のアリからはじめて単離された(数少ない非植物由来のテルペノイドである)ことからその名が付けられた。シクロペンタンにピロンが縮環した骨格を持ち、炭素数が5の倍数でないものも含まれる。イリドイドは月経困難症の手当てに使われるセイヨウニンジンボクの果実や、リウマチに効くとされるライオンゴロシなどに含まれる。

シクロヘキサン環を持つ単環性モノテルペンはさらにいくつかのグループに分けられる。炭化水素としてはメンタンリモネンフェランドレン、テルピノレン、テルピネンシメンが最もよく知られている。メンタンは他のものに比べ天然に見出されることは少ない。リモネンは多くの植物に含まれ、テルピノレン、テルピネンも芳香成分として精油中に存在する。テルピノレンはシロアリ警告フェロモンでもある。フェランドレンはキャラウェイフェンネルユーカリなどに、シメンはサマーセイボリーなどに含有される。

メントールハッカ油の主成分であり、鎮痛剤ほか多くの医療品に用いられる。ハッカ油にはプレゴールも含まれる。ピペリトールはユーカリやペパーミントに含まれる。テルピネオールは香気成分、カルベオール柑橘類の精油成分である。チモールタイムオレガノの精油中に含まれる。ジヒドロカルベオールはキャラウェイ、コショウセロリミントに含まれる。

メントンとプレゴン、およびそれらの鏡像異性体は、メントールと同じくハッカ油中に存在する。フェランドラールはセリ科の植物にみられる。カルボンやカルベノンはキャラウェイやイノンドに、ピペリトンはユーカリ精油に含まれる。

ユーカリプトール(1,8-シネオール)はエポキシ化合物である。殺菌剤としての効果を持ち、主にユーカリや月桂樹、あるいは1,4-シネオールとともにビャクシンに含まれる。アスカリドールペルオキシド構造を持ち、アカザ属の植物にみられる。
二環式二環式モノテルペンの主な骨格樟脳(カンファー)はクスノキの葉や枝から得られる

二環式モノテルペンの基本骨格で主なものはカラン、ツジェン、ピネン、ボルナン、フェンカン、イソボルナン、イソカンファンである。

3-カレンはテレビン油の主成分であり、クロコショウや柑橘類モミビャクシン属の植物にも含まれる。ツジェンコリアンダーイノンドに、またサビネンとともに精油中にみられる。ツジョンニガヨモギから得られ、それを原料とする酒であるアブサンベルモットにも含まれる。ツジャノールはクロベ属 (Thuja)、ビャクシン属ヨモギ属の植物に存在する。カラン骨格を持つカルボン酸、例えばカミン酸はヒノキ属 (Chamaecyparis) の植物に含まれる。

ピネンは3-カレンに次ぐテレビン油の主成分である。テレビン油にはベルベノールやベルベノンも含有されるが、それらはローズマリー油中にも存在する。またキクイムシ性フェロモンでもある。


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