構造によって非環式、単環式、二環式、三環式のように分類される場合がある。それぞれ分子内に0個、1個、2個、3個の環状構造を含む。さらに細かく骨格構造によって分けられることもある。左側がhead、右側がtail
また、イソプレン単位が繋がっている向きによって、「head-tail」「head-head」「tail-tail」のように分類される。メチル基が2個ついている側がhead、エチル基の側がtailである。
ヘミテルペン左からプレノール、3-メチル-3-ブテン-2-オール、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネシオ酸、イソ吉草酸
イソプレン単位を1個だけ持つものはヘミテルペノイドと呼ばれる。よく知られているものはおよそ25種あるが、天然に見られるのはごくまれである。アルコール誘導体のプレノールや、カルボン酸誘導体であるチグリン酸、アンゲリカ酸、セネシオ酸、イソ吉草酸が例である。 モノテルペノイドは900種類以上知られており、すべてモノテルペン合成酵素
モノテルペン
非環式コリアンダーの種子にはリナロールが含まれる
代表的なモノテルペンはミルセン、オシメン、コスメンである。ミルセンは月桂樹、オシメンはラベンダーの精油に含まれる。
リナロールはバラ、ラベンダーに含有される。コリアンダーの葉やパルマローザ油はゲラニオールとネロールを含む。シトロネロールはシトロネラ油から、ミルセノールはタイム油から得られる。ラベンダー油にはラバンジュロールもみられる。イプスジエノールはランの花の香り成分である。これらはモノテルペノイドアルコールである。
モノテルペノイドアルデヒドのネラールとゲラニアールはシス-トランス異性体であり、まとめてシトラールと呼ばれる。香料の原料として利用され、例えばアセトンと縮合させたのち環化させるとイオノンの2種の異性体が得られる。これはスミレのような香りをもつ。イオノンはカロテンやレチノール(ビタミンA)の原料でもある。シトロネラールは防虫剤として使われる。
フラノイドモノテルペンとしてペリレンやローズフランが知られる。ローズフランはバラ油の香気成分で、ペリレンは精油中に含まれる防御フェロモンである。
カルボン酸としてはゲラニル酸が知られる。
単環式リモネンはオレンジやレモンなどの柑橘類の果皮にみられるチモールの名称はハーブの一種、タイムに由来する
単環式のモノテルペノイドはほとんどがパラメンタン骨格を持つが、シクロプロパンやシクロブタン、シクロペンタン骨格を持つものも存在する。クリサンテモール(シクロプロパン)、グランジソール(シクロブタン)、ジュニオノン(シクロブタン)が例として挙げられる。におい閾値がもっとも低い化合物として知られるチオテルピネオールも単環式モノテルペノイドである。
シクロペンタン骨格を持つモノテルペノイドはおよそ200種ほど知られており、イリドイドやセコイリドイドに分類されている。イリドイドはイリドミルメクス属 (Iridomyrmex) のアリからはじめて単離された(数少ない非植物由来のテルペノイドである)ことからその名が付けられた。シクロペンタンにピロンが縮環した骨格を持ち、炭素数が5の倍数でないものも含まれる。イリドイドは月経困難症の手当てに使われるセイヨウニンジンボクの果実や、リウマチに効くとされるライオンゴロシなどに含まれる。
シクロヘキサン環を持つ単環性モノテルペンはさらにいくつかのグループに分けられる。炭化水素としてはメンタン、リモネン、フェランドレン、テルピノレン、テルピネン、シメンが最もよく知られている。メンタンは他のものに比べ天然に見出されることは少ない。リモネンは多くの植物に含まれ、テルピノレン、テルピネンも芳香成分として精油中に存在する。テルピノレンはシロアリの警告フェロモンでもある。フェランドレンはキャラウェイ、フェンネル、ユーカリなどに、シメンはサマーセイボリーなどに含有される。
メントールはハッカ油の主成分であり、鎮痛剤ほか多くの医療品に用いられる。ハッカ油にはプレゴールも含まれる。ピペリトールはユーカリやペパーミントに含まれる。テルピネオールは香気成分、カルベオールは柑橘類の精油成分である。チモールはタイムやオレガノの精油中に含まれる。ジヒドロカルベオールはキャラウェイ、コショウ、セロリ、ミントに含まれる。
メントンとプレゴン、およびそれらの鏡像異性体は、メントールと同じくハッカ油中に存在する。フェランドラールはセリ科の植物にみられる。カルボンやカルベノンはキャラウェイやイノンドに、ピペリトンはユーカリ精油に含まれる。
ユーカリプトール(1,8-シネオール)はエポキシ化合物である。殺菌剤としての効果を持ち、主にユーカリや月桂樹、あるいは1,4-シネオールとともにビャクシンに含まれる。アスカリドールはペルオキシド構造を持ち、アカザ属の植物にみられる。
二環式二環式モノテルペンの主な骨格樟脳(カンファー)はクスノキの葉や枝から得られる
二環式モノテルペンの基本骨格で主なものはカラン、ツジェン、ピネン、ボルナン、フェンカン、イソボルナン、イソカンファンである。
3-カレンはテレビン油の主成分であり、クロコショウや柑橘類、モミ、ビャクシン属の植物にも含まれる。ツジェンはコリアンダーやイノンドに、またサビネンとともに精油中にみられる。ツジョンはニガヨモギから得られ、それを原料とする酒であるアブサンやベルモットにも含まれる。ツジャノールはクロベ属 (Thuja)、ビャクシン属、ヨモギ属の植物に存在する。カラン骨格を持つカルボン酸、例えばカミン酸はヒノキ属 (Chamaecyparis) の植物に含まれる。
ピネンは3-カレンに次ぐテレビン油の主成分である。テレビン油にはベルベノールやベルベノンも含有されるが、それらはローズマリー油中にも存在する。またキクイムシの性フェロモンでもある。