テナー・サクソフォーンのような全てのサクソフォーンは、薄い真鍮で出来ている円錐の管で組成されている。管の終わりに向かって、その幅は朝顔状に薄く広がっており、ベル型をしている。口に近づく狭い部分の終わりには、クラリネットに類似するマウスピースの単リードが繋がっている。中間には口径に下がっていくにつれて20から23の音孔がある。設計はタンポによって音孔を隙間なく埋めるように覆われており、そして2つの音の出る穴があり、穴が開いている状態の時、楽器の低周波が音を不通にして、それによって高い音の調節により吹き上げることが可能となる。タンポは右手、左手の運指と共にキーの数を抑えることによって演奏ができるようになっており、左の親指で8度(オクターブ)キーを開けることにより操作する。テナー・サクソフォーンの原型デザインは各スピーカー穴の8度(1オクターブ)キーを分けている事にあり、楽器ファゴットの設計と同様に、その仕組みは左手の運指の動きを基に正確に音孔を選ぶ事にある。1866年にサックスの特許を得た後すぐに、その箇所に注力され開発されている。テナーの使いやすさは、作りが”真っすぐ”という事と、サクソフォーン族の中でも小さい形である事に理由がある。真っすぐでありながら扱いにくい長さの形状は、ほとんどのサクソフォーンに特徴される”Uの字に曲がる”事で、サクソフォーン族に特徴的な音調(トーン)になっている。アルトは通常、80-90度の曲がった、口に合わせやすいマウスピースの形であり、テナーのこの部分は”Sの字に曲げて”リードと合体させるのが特徴である。テナー・サクソフォーンのマウスピースは、楽器クラリネットの口の部分に類似しており、くさび形の管で、リードの原材料として知られている大きな植物:アルンド・ドナクス(1継ぎ目のある茎と大きな灰白色の羽毛のような円錐花序を持つ、川辺や水路に見られる大きな根茎のある多年生の草)の茎を薄く剥がして素材にしたものを使用している。リードはかなり薄く削られている為、リガチャーを噛ませることによりマウスピースを金具で締める。空気を吹き上げる時、リードが揺れ、音響共鳴起こって楽器から音が出る仕組みである。マウスピースの形はサクソフォーンに鋭さ、そして柔軟性を伴わせ、楽器の音色はマウスピースの大きさによって決定されている。マウスピースのデザインとリードはサックスの音に大きな役割を与えている。テナー・サクソフォーンのリードは、バスクラリネットに使われる大きさのものと同じ大きさであり、その為、バスクラリネットのリードと取り換えが簡単である。典型的なマウスピースは、暖かく、丸みを帯びた音調を発生させる。ジャズのマウスピースに至っては輝かしく、輪郭がはっきりとした音調が生まれる。マウスピースに使用される素材は、プラスチック、エボナイト、青銅、黄銅、ステンレス鋼を使ったものもある。テナー・サクソフォーンのマウスピースは、アルトのマウスピースに比べて大きく、リードもアルトと比べると大きい。リードも硬いものを使っており、大きく息を吹いて、サクソフォーンの大きな身体を共鳴させるということは、テナー・サクソフォーンを吹くには多量の肺活量が必要である。サクソフォーン族の一員として高調節にならざる得ないアンブシュア(楽器を吹くときの口の形等)もテナー・サクソフォーンの特徴になる。
テナー・サクソフォーン奏者コルトレーン、アムステルダム, 1961年
テナー・サクソフォーンがその市民権を得たものの一つに軍楽隊がある。テナーがその開発の後すぐに、フランスとベルギーの軍楽隊によって楽器の利点が最も活かされたという歴史がある。近代軍楽隊は典型的に、サクソフォーン四重奏、つまりバリトン・サクソフォーン、テナー・サクソフォーン、アルト・サクソフォーン、ソプラノ・サクソフォーンを編成している。英国軍楽隊は慣例上、サクソフォーンはテナーとアルトのみを使用、他2つ以上の数の楽器を使うだけである。テナーはクラシック音楽でも使われている。コンサート・バンドやサクソフォーン四重奏でテナーは標準的な楽器であり、テナーでソロも取る場面がある。オーケストラでも活用され、有名なものでは、セルゲイ・プロコフィエフの”ロメオとジュリエット ”と”キージェ中尉”やモーリス・ラヴェルの”ボレロ”がある。チャールズ・アイヴズの”交響曲第4番 ”でもテナーが使われている。