ティムール
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崩御から5日後、ティムールの遺体はサマルカンドのグーリ・アミール廟に安置された[200][注 5]

3月18日にサマルカンドを占拠したハリール・スルタンによって改めて正式な葬儀が行われ、全てのサマルカンド市民が黒い喪服を着用した[200]。葬儀のとき、ティムールが生前に愛用していた太鼓が廟に運び込まれ、他の人間が使用できないように引き裂かれた[200]
人物像ミハイル・ゲラシモフによるティムールの復顔像
身体的特徴

ティムールを描いたと伝えられる肖像画の中で信頼性の高いものは無く、容貌を詳しく記した文章も少ない[204]

晩年のティムールと対面した人物の一人であるアラブシャーはティムールの容貌について、「背が高く肩幅が広い。大きな頭と濃い眉、あごひげを生やしていた。長い手足を持っていたが、右脚は不自由だった。目は蝋燭のようではあるが、光は無かった」と描写した[204][205]。身長はおよそ170cmと、14世紀当時の人間の中では長身に分類される[206]

ティムールは右脚が不自由であると伝えられており、「跛者のティムール」「びっこのティムール」を意味する「タメルラング」「ティムーリ・ラング」の呼び名でも知られている。クラヴィホの報告、アラブシャーの伝記、ロシアで編纂された年代記は強盗団時代に襲撃に失敗して負傷し、その後遺症で脚に障害が残ったと述べている[35][207]。また、別の伝承では1363年に起きた戦闘での負傷が元で脚に障害を負ったと伝えられている[48]。1390年末、ティムールは矢傷が原因で起きた骨と関節の病に罹り、40日間病床に伏した[208]。右脚が不自由になった後もティムールは依然馬を自在に乗りこなしたが、年を経るごとに症状は徐々に重くなっていき、晩年には従者の手を借りなければ乗馬が困難な状態になった[151]

1941年5月から6月にかけて[209]ソビエト連邦の調査隊がサマルカンドのグーリ・アミール廟の調査を行い、ミハイル・ゲラシモフによって廟に安置されていたティムールの遺体も調べられた。この時の調査によって、ティムールは赤色の髭を生やしていたこと、手・肘・膝の3か所に矢傷を負っていたことが判明した[205]。また、調査隊はティムールの顔をモンゴロイドをベースにしてコーカソイドの特徴がいくらか加わった容姿と分析した[210]
性格

冗談や嘘を好まない性格であり[211]、読み上げさせた文をすべて暗記するほどの優れた記憶力を有していた[9][212]。ティムールは音楽を好み、アラブから中国に至る東西の楽士で混成された楽団が奏でる歌曲に耳を傾けた[213]。また、騾馬の蒐集に関心を持ち[214]、数字の「9」にこだわりを持っていた[211]

ティムールは読み書きこそできなかったが、彼と対面した人間は概して教養人という印象を抱いた[211]。国家が拡大するにつれて、ティムールは歴史に強い興味を抱くようになる[215]。遠征の途中などで時間が空いたときには従者に書物を読み上げさせ、特に歴史書を好んだという[211]。歴史以外にも医学、天文学、数学の価値を評価し、建築に関心を示した[211]。ティムールは学者のほかに、芸術家や職人に対しても尊敬の念を抱いていた[32]

ティムールが面会した学者の一人に、イスラム世界を代表する歴史家イブン・ハルドゥーンが知られている。1401年にダマスカスを攻略した時にティムールはハルドゥーンの所在をマムルーク朝の使者に尋ね、彼が面会を望んでいることを知ったハルドゥーンはティムールの元に赴いた。2人は通訳を介して対話し、ハルドゥーンの故郷であるマグリブの事情について強い興味を持つティムールのためにハルドゥーンは地理書『マグリブ事情』を献呈した[216]。そして、アラビア語で書かれた『マグリブ事情』は、後世に優れた史書を残そうというティムールの思惑により、彼の書記によってテュルク語に翻訳された[217]。ハルドゥーンは35日間ティムールの陣営に滞在し、歓待を受け、ティムールと言葉を交わした[218]。エジプト帰国後にハルドゥーンはモロッコのマリーン朝のスルターンに宛てた報告書の中で、ティムールの知性と探究心を讃える文を書いた[219]
ティムールとチェス「タメルラン・チェス」も参照

ティムールの趣味の一つにチェスがあり、暇を見てはチェスを楽しんでいた[220]。その腕前は相当なものであり、名人とも対局した[213]。夜中に一人で巨大なチェス盤に向き合って物思いに耽り、複雑な戦略を巡らせながら駒を動かしていたエピソードが知られている[178][221]


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