ティファニーで朝食を_(映画)
[Wikipedia|▼Menu]
ベストセラーになる類の本ではなかったが、原作者のトルーマン・カポーティはニューヨークの社交界を支配していた[5]。たとえ自分のところで映画化しなくても、良い投資対象であることをジュロウは見抜いており、権利獲得のためにカポーティのエージェントと連絡を取り、すぐさま飛行機で飛んだ[5]。ジュロウ?シェファード・プロダクションにはまだ実績はなかったが、ジュロウはシェファードと組む前からショービジネス界の大御所であり、シェファードは過去にマリリン・モンローグレース・ケリーマーロン・ブランドなどのエージェントをやっていた[5]。もともとジュロウはカポーティのエージェントと良好な関係を保っており、シェファードの人脈でどんな超大物のスターにも電話1本で連絡がつけられるという強みを持っていた[5]。カポーティとの話し合いが始まったが、カポーティは、マリリン・モンローはあれだけセクシーなのに純真で、ホリー・ゴライトリーを演じるために地上に遣わされたのだ、ホリー役の第1候補はモンローだと語った[5]。ジュロウは本への賛辞を挟みながら聞き役に徹していたが、カポーティが「わかってるだろうけど、男の主役を演じるのは僕だから。」と言ったときには息を飲んだ[5]。ジュロウは「あなたがあの役を演じるのはもったいないですよ。」と言い、「映画ではすべての目はホリーに注がれるんですよ。あの男の主役はホリーがもたれかかる肩でしかないのです。あなたにはもっとダイナミックで華々しい役の方が合っています。」と述べた[5]。ジュロウはカポーティに白々しさを嗅ぎつけられたらおしまいだ、と思っていたが、しばらくの沈黙の後カポーティは、「君の言う通りだな。僕にはもっとダイナミックな役の方が合っている。」と答えた[5]

翌日、ジュロウ?シェファード・プロダクションが契約していたパラマウントの承認の下、6万5000ドルで映画化の契約を締結した[5][6]
マリリン・モンロー

製作者二人はモンローが適役とは考えていなかった[7]。ホリーはシャープでタフでなければならなかったが、モンローはあまりにか弱すぎ、そのような人間がたった1人で大都会でホリーのように生きるとは想像し難かった[7]。さらに現実的にモンローは無責任なことで悪名高く、慢性の遅刻癖と、台詞覚えの悪さも致命的であった[7]。一つのシーンのために、40?50テイクも撮らなければならなかった[7]

契約の帰りの飛行機で、偶然ジュロウはモンローと隣り合わせになった[7]。『ティファニーで朝食を』に関してモンローはミルトン・グリーンから聞いて知っており興味を示していたが、モンローはポーラ・ストラスバーグと話し合わなければいけないとした[7]。話し合いとモンローは言ったが、よく聞くとそれは許可を得るということであった[7]。後日ポーラはジュロウ宛に「マリリン・モンローは夜の女をお引き受けいたしません」として断りの電話を入れてきたという[7][6]

しかし同じ製作のリチャード・シェファードが言うには、製作者二人のホリー役の第1候補は初めからオードリー・ヘプバーンであり、そこで一時期モンローのエージェントをしていたシェファードはモンローに直接電話し、「できれば私たちはオードリーを使いたいんだ。」と伝え、モンローは「オッケー」と言ったという[8][7]。ホリーを演じたがっていたモンローに伝えるのはとても辛かったとシェファードは述べている[8]

どちらにしてもモンローの出演の話はなくなった[7]
脚本

ジュロウとシェファードには女優が抱く、何やらいかがわしい企画なのでは、という懸念が読み始めた途端に吹き飛んでしまうような優れた脚本が必要であった[9]。1959年1月にジュロウとシェファードは人選を開始した[9]

ジョージ・アクセルロッドは、妻から『ティファニーで朝食を』の本を渡されて以来、この脚本を書きたくてウズウズしていた[10]。しかし当時アクセルロッドは『七年目の浮気』『バス停留所』などの成功により、低俗趣味の脚本を書く才能はあるが、それ以外はダメだと思われていた[10]

彼は企画を持って20世紀フォックスに掛け合ったが、そこではジュロウ?シェファード・プロダクションに先を越されていたのがわかった[10]。アクセルロッドはその足でパラマウントへ行ったが、ジュロウとシェファードに「あなたには品性がない。『ティファニーで朝食を』は品位ある第1級の作品にしたい。」と言って断られた[10]

『七年目の浮気』以降、アクセルロッドは映倫から危険人物とみなされており、そうでなくてもコールガールを扱う作品に彼の名前が入るのはお蔵入りになりかねず、論外であった[10]

ジュロウとシェファードはサムナー・ロック・エリオットという脚本家に60ページの脚本概要を書いてもらい、出来が良ければ脚本に発展させ、良くなければそこで終了する、という契約を結んだ[11]。ところが出来上がった脚本概要ははっきりした筋がなく、精彩に欠けるものだった[11]。シェファードはがっかりし、別の脚本家を探すこととなった[11]

アクセルロッドはエージェントからジュロウとシェファードが代わりの脚本家を探している、まだやる気はあるか?という電話を受け取った[12]。アイデアさえ気に入られれば、脚本概要は飛ばして直接脚本を書くことになるということであった[12]

新しい候補者には業界のベテランが名を連ねていた[12]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:198 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef