チート_(映画)
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上述のように「残虐かつ好色、非人道的な日本人」が主要人物であるため、公開当初から『羅府新報』や『新世界』といったアメリカの邦字新聞では日本人のイメージを悪くするものだとして、早川雪洲(『新世界』では日本人リンチの内容がある活動写真に出た安部・桑原とともに名を上げて)排日俳優や売国奴と非難している他、『羅府新報』では1915年12月28日付に白人家庭に雇われていた日本人がこの映画を見た主人からいきなり解雇された話を乗せている[4]


上述の批難について雪洲本人は『羅府新報』1915年12月29日付に「脚本をちまちま渡されたのでここまであくどい役だとは思わなかった。撮影後気になったが問題になるほどなら検閲官に止められると言われ特にカットもされなかったので大丈夫だと思った。(要約)」といった意味の言い訳と「図らずとも同胞諸君の感情を害したすまなかった。これからは注意する」という旨の謹告を乗せている。
また雪洲を擁護した翁六溪の『日米』(注:新聞名、日米新聞社刊行)に1916年1月20日から3日間連載された「所謂排日活動寫眞を觀る」によるとタイトルの『欺瞞者(チート)』とは雪洲演じる鳥居のことではなく、ファニー・ウォード演じるヒロインの女性イーディスを指すとしている[5]


相手役のファニー・ウォードは当時国際的に知られた女優であり、公開当時のポスターにおいては、「国際スター」として紹介されたのはウォードであった。


1916年にこの映画を観た25歳のルイ・デリュックはここに映画独自の芸術性が確立されたと考え、映画批評の道を進んで行く。映画に対する批評意識が生まれ、映画は芸術としての自分に目覚めた[6]


この映画を観た26歳のアベル・ガンスは新作『悲しみの聖母』(Mater dolorosa)で『チート』の手法を消化して、「表情の動きを強調する明暗効果」を際立たせて成功し、「突然、フランスの映画監督の筆頭に躍り出」る[7]

リメイク

1918年版 - 1915年のオリジナルの再公開のため同じ映像だが、オリジナルに対して在米日本人コミュニティから抗議があったため、早川雪州演じる主人公の設定が日本人ヒシュル・トリからビルマ人の富豪ハカ・アラに変更された
[2]。前年に米国が対独宣戦したことにより、米国も日本と同じ連合国 (第一次世界大戦)側となったこと等も影響した。序盤の人物説明字幕や新聞記事カットの文字がビルマ人に差し替えられたが、撮り直しをしたわけではないので早川の衣装、邸宅が日本的であるシーン等は一切変更されなかった。現在、日本国内で入手できるDVDはこの「ビルマ人版」である。

1923年版(en:The Cheat (1923 film)) - パラマウント配給で、監督ジョージ・フィッツモーリス、主演ポーラ・ネグリでリメイクされたサイレント映画。邪悪な東洋人役は、白人俳優のシャルル・ド・ロシュがインドの皇太子に扮して演じた。

1931年版(en:The Cheat (1931 film)) - 監督ジョージ・アボット、主演タルラー・バンクヘッドでリメイクされたトーキー映画。共演にハーヴィー・スティーヴンス、悪役は長く東洋で暮らした白人ビジネスマンの設定で役名はハーディ・リビングストンとされた。1922年以降に作られ始めた映画製作者の自主的倫理規定により、映画作品内で「雑婚 (有色人種と白人の結婚)」 や「人や動物に焼き印を押すこと」などが自主規制されるようになってきていた[1]

1937年フランス版(fr:Forfaiture (film, 1937)) - 早川がパリ滞在中に『Forfaiture』の名で制作された。早川は同じ役で出演し、ヴィクトル・フランサン、ルイ・ジューヴェ、リーズ・ドラマールらが共演、マルセル・レルビエが監督した。早川はモンゴルのプリンスという設定で、白人女性に撃ち殺されるなどストーリーは多少異なるが、悪役=東洋の構図は同じである[2]

脚注^ a b c d e f g h i 宮尾大輔「映画スター早川雪洲 : 草創期ハリウッドと日本人」『アメリカ研究』第1996巻第30号、アメリカ学会、1996年、227-246頁、doi:10.11380/americanreview1967.1996.227、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 03872815、NAID 130003710702。 
^ a b c d マイケル・チャプレン, 羽田美也子「 ⇒映画 『チート』 における他者性」『文学部紀要』第28巻第1号、文教大学、2014年9月、1-30頁、ISSN 0914-5729、NAID 120006419353。 
^ 大場俊雄 2012, p. 94.
^ 大場俊雄 2012, p. 87-92.
^ 大場俊雄 2012, p. 92-94.
^ フランス映画史の誘惑, p. 58.
^ フランス映画史の誘惑, p. 59.

参考文献

大場俊雄『早川雪洲 : 房総が生んだ国際俳優』崙書房出版〈ふるさと文庫〉、2012年。ISBN 9784845502011NCID BB09597708。全国書誌番号:22080996。 

中条省平『フランス映画史の誘惑』集英社〈集英社新書〉、2003年。ISBN 4087201791NCID BA60459863。全国書誌番号:20391631。 

関連項目

プロパガンダ

外部リンク

チート
- allcinema

チート - KINENOTE

The Cheat - オールムービー(英語)

The Cheat - IMDb(英語)

「チート」全編(58分) インターネット・アーカイブ

淀川長治による解説 淀川長治総監修世界クラシック名画選集、IVC










セシル・B・デミル監督作品
サイレント

スコウ・マン(英語版)(1914)

Brewster's Millions(1914)

The Master Mind(1914)

The Only Son(1914)

The Man on the Box(1914)

The Call of the North(1914)

The Virginian(1914)

What's His Name(1914)

The Man from Home(1914)

農場の薔薇(英語版)(1914)

The Ghost Breaker(1914)

The Girl of the Golden West(1915)


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