チンパンジー
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一例としてコンゴ共和国でのカメラトラップ法による調査では、穴を空けるための棒と釣るための棒を用いてシロアリを捕食する・雨避けに葉を用いるなど、22種類にわたる道具の使用が報告されている[16]。セネガルでは棒を使って、ショウガラゴ類を狩った複数の観察例もある(22例のうち1例のみで狩りに成功している)[16]。たとえば、ウガンダの森に棲むものは、日常的に木の枝を使ってサスライアリなどを捕食することが報告されている[20]

西アフリカや中央アフリカなど大型肉食獣による捕食の脅威がある地域では、捕食者に対抗するため、協力行動が発展し社会構造にも影響するとの説がある[21]2013年には東アフリカでもヒョウによるチンパンジーの捕食が初めて確認された[21]

食性は雑食で、主に果実を食べるが種子、花、葉、樹皮、蜂蜜、昆虫、イノシシ類・サル・ダイカー類ハイラックス類リス類などの小型から中型哺乳類なども食べる[4]。サルをオスが集団で協力して、狩猟することもある[5]。食物を分配することがあり、特に肉は分配されることが多い[4]。母子間では食物分配がよく見られる。捕食者として前述したヒョウが挙げられ、ライオンやワニ類に捕食された例もある[6]

繁殖様式は胎生。野生下での妊娠期間は207 - 259日、飼育下では202 - 261日という報告例がある[6]。生後8 - 11年で性成熟し、生後14 - 15年で初産を迎える[4]。生後10年以下で産むこともあるが、メスが別の群れに移籍することから通常は性成熟から初産までに間隔がある[22]。日本での飼育下の長寿例として2019年時点では、神戸市立王子動物園で飼育され推定69歳で死亡したジョニーによる記録がある[23]
社会・行動・文化

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出典検索?: "チンパンジー" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2013年8月)

普段は、主に母子関係やオス間の同盟を元に構成される小さい集団(パーティ)に分かれて遊動する。特定のオスメス関係にもとづいた繁殖はせず、雌雄ともに複数の異性と交尾をする。そのため、産まれてくる子の父親は明らかでない。メスは成長すると出自群を出て他の集団に移動して繁殖する。これにより近親交配の回避をしていると考えられている。しかし第一子を出自群で生む例や、子供を連れた群間の移籍例など、例外も知られている。

チンパンジーには笑いがある。くすぐったり、追いかけ合ったりして笑い声を出す。ただし、テレビ番組でチンパンジーが芸などを披露する[注釈 2]際、歯を見せて笑っているように見えることがあるが、これは英語で「グリマス」 (grimace) と称される表情であり、チンパンジーが恐がっている時の顔である。

チンパンジーは乱婚で、優位のオスに交尾の機会が多いが、野生では下位のチンパンジーが「かけおち」することが観察されている。草陰に隠れていた気の弱いオスのところに、いつのまにか一頭の発情中のメスが寄り添っている。そして、一日、長い時は一週間以上も群れの中心から離れて遊動範囲の周縁へと「かけおち」する。時には、オスに手荒に叩かれたりしながらしぶしぶ「かけおち」するペアもいる。ニホンザルのDNA解析から、ボスよりも下位のオスの子孫の方が多かったという研究結果があることから、チンパンジーも同じようなことが予想されるが、まだ報告はされていない。交尾は一回10秒程度でメスの排卵日に一日5、6回し、オスは毛づくろいで機嫌をとるが交尾後は毛づくろいをしない[24]

チンパンジーは道具使用や挨拶行動を含め、さまざまな文化的行動が報告されてきたが、1999年のホワイテンらの論文[25]以降2000年代急増している[26]。ホワイテンらが取り扱った文化的行動は物の操作に関するものが多い。

ここで使われている「文化」の定義は、ある行動レパートリーが集団の多くのメンバーによって共有され、世代から世代へと社会的に情報が伝達される現象ということである。行動レパートリーのうち、社会的学習によって伝播または伝承され、なおかつ地域間の行動上の差異が単に生態的要因の差異によるものではないものを指している。
群れの順位と群れ同士の争い

群れ内の個体間には順位差があり、とくにオス間には順位を巡った争いがあることが知られる。野生下・飼育下共にオス間での連合の形成が見られる。

チンパンジーの特筆すべき習性として「子殺し」がある。子殺しによって、他のオスの血統を減らし、自らの遺伝子をより多く残す繁殖戦略であるという説もあるが、ライオンなどの子殺しと違ってどの子が自分の血を引いていないか明確でなく、この習性がチンパンジーの社会でどのような役割を果しているのかはよく分かっていない。

集団から離れて一頭でいるところを数頭で狙うことが多く、オスの約30パーセントが群れ同士の戦いで死んでいる[27]。単位集団内のオス、メスの比が出生時は1:1であるのに対し成獣では1:2に偏っているのは、ここに一因があると考えられる。同属別種のボノボのオス、メス比が1:1であるのと比べると特筆されるべきことである。

ゴンベ渓流国立公園では、1974年7月から1978年6月までゴンべ・チンパンジー同士の戦争(英語版)(four-year conflict とも呼ばれる)が行われ、カサケラ・チンパンジーの群れ(英語版)によってカハマの群れにいたオスは全滅して併合された[28]
知能

チンパンジーは極めて知能が高く、訓練によって簡単な言語を習得できる。習得する言語には一般に図形文字が用いられ、「抽象的な記号と単語を理解して、その上で短い文章を作り、相手に伝えることができる」[29]じゃんけんも理解することができ人間の4歳児程度の知能を有するとされる[30][31]。また、人間の代わりにチンパンジーは宇宙にも行った。1961年の米国のロケットに乗った「ハム」や「エノス」の活躍が知られている。彼らは重力実験や簡単なボタン操作の訓練を受けた後に宇宙へと送り出され、生物が宇宙空間でも行動可能なことを実証した[32]。知能の高さゆえの脱走事故も多く、1989年には京都大学霊長類研究所アイとアキラが檻の鍵を開けて脱走する事故があった。それまで鍵を使用したことは無かったが、人間が使用するのを見て使い方を理解していた。その際にオランウータンも逃がしてやったが、これは義侠心などではなく愉快犯的な思考であったという[29]。「宇宙に行った動物」および「Category:サルの個体」も参照
人間との関係

名前はコンゴの方言、基亜種の名前チェゴは生息地での本種の呼称に由来する[5]

森林伐採や開発による生息地の破壊、食用やペットにするための密猟、内戦による混乱などにより生息数は減少している[4][33]エボラ出血熱急性灰白髄炎や呼吸器系の疾患などによっても生息数が減少している[34]。一方、生息地でのチンパンジーの保護も行われ、人為的な保護区(保護施設)が作られている[33]。1975年のワシントン条約発効時にはワシントン条約附属書IIに掲載され、1977年にはチンパンジー属単位でワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]
P. t. verus
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
P. t. troglodytes、P. t. ellioti、P. t. schweinfurthii
ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]

日本では1921年に、イタリアのサーカス団によって渡来したのが初めての記録とされる[35]


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