チンパンジー
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頭胴長(体長)オス85センチメートル、メス77.5センチメートル[4]。体重オス40 - 60キログラム、メス32 - 47キログラム[4]。全身の毛衣は黒く、顎の毛衣は白い[4]。脳容積は397ミリリットル前後である[7]

顔は黒や肌色[4]。成長に伴い額がはげ上がり(オスで顕著)、顔が黒ずむ[5]
分類

種小名 troglodytes はギリシャ語の「穴居人」に由来し[8]、転じて「原人」の意[5]

ミトコンドリアDNAの全塩基配列の解析では487万年前±23万年[9]にチンパンジー亜族とヒト亜族が分岐したとされる。

国際チンパンジー22番染色体解読コンソーシアム(The International Chimpanzee Chromosome 22 Consortium、理化学研究所なども参加)によってチンパンジーの第22番染色体がほぼ完全に解読され、これに対応するヒトの第21番染色体の比較が報告されている[10]。その報告によると、DNAレベルの比較では、ヒトとチンパンジーの間で1.44%の一塩基置換(点突然変異)とそれに加えて68,000箇所の配列の挿入または欠失が生じていた。翻訳される231種類のタンパク質について比較したところ、83%でアミノ酸レベルの変化が生じていた。

また、別の研究では2005年にチンパンジーの全ゲノムのドラフト配列が解読され、ヒトとの比較が報告されている[11]。その報告では、DNAレベルではおよそ3500万(1.23%)の一塩基置換と500万箇所の配列の挿入または欠失が生じていた。タンパク質について比較したところ、ヒトとチンパンジーの典型的な相同タンパク質は極めて類似しており、平均でわずか2アミノ酸しか違いがなく、比較した相同タンパク質のおよそ30%は同一だった。なお、上述の22番染色体の研究の書き方に合わせるならば、およそ70%でアミノ酸レベルの変化が生じていることになる。

チンパンジーとヒトのDNAの違いは1-4%程度との報告がある[12][13][14]。上記の報告でもDNAについてはその範囲に収まる。それと比べて、「7-8割のタンパクに違いがある」と聞くとタンパクレベルでは相違が大きいような印象を受けるが、前述の全ゲノムのドラフト配列の論文において「非常に類似しており平均でわずか2アミノ酸しか違いがない」[15]と言及されているように、それぞれのタンパクの違いは小さいことがありうるため、一概にタンパクレベルで相違が大きいとは言えないことに注意が必要である。

亜種ニシチンパンジーは160万年前に他亜種と分岐したと考えられ、遺伝的距離が大きいとされる[4]

以下の分類・英名はIUCN(2016)に、分布は亜種 P. t. ellioti を除いて橋本(2017)に従う[3][8]
Pan troglodytes troglodytes (Blumenbach, 1799) チェゴチンパンジー[5]、ツェゴチンパンジー[4][16]、チュウオウチンパンジー[8] Central chimpanzee
アンゴラ北部、ガボン、カメルーン南東部、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、赤道ギニア(大陸部)、中央アフリカ共和国胴体や四肢の皮膚が黒い[5]。成長に伴う、額のはげ上がりが顕著[5]。成長に伴い顔に黒い斑点が入り、顔全体が黒くなる[5]
Pan troglodytes ellioti (Matschie, 1914) ナイジェリアチンパンジー[17] Nigeria-Cameroon chimpanzee
カメルーン、ナイジェリア[3]1997年にミトコンドリアDNAコントロール領域の分子系統推定から、カメルーンとナイジェリアの国境周辺の個体群に対しシノニムとされていた P. vellerosus を復活させて亜種とする説が提唱された。P. t. vellerosus の模式標本の産地はカメルーン山とされていたが、後の調査から模式標本の採集人がカメルーンを訪れておらずガボンを訪れていたことが判明した[18]。そのため P. t. vellerosus の模式標本となった個体はガボン産で、基亜種のシノニムとする説が提唱された[18]。これにともないカメルーンとナイジェリアの国境周辺の亜種は未記載の亜種となったが、2008年にこれらに対応した学名として P. t. ellioti をあてる説が提唱された[18]
Pan troglodytes schweinfurthii (Giglioli, 1872) ケナガチンパンジー[4][5]、ヒガシチンパンジー[8] Eastern chimpanzee
ウガンダ西部、コンゴ民主共和国北部および東部、タンザニア西部、中央アフリカ共和国東部、ブルンジ、南スーダン南西部、ルワンダ胴体や四肢の皮膚が赤褐色[5]。体毛が長く、顔が細長い[5]。成長に伴い顔が赤褐色になり、顔全体が灰黒色になる[5]
Pan troglodytes verus Schwartz, 1934 ニシチンパンジー[8]、マスクチンパンジー[4][5] Western chimpanzee[3]
ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、シエラレオネ、セネガル南部、マリ共和国南西部、リベリア成長に伴い顔上部が蝶状に黒くなり、顔全体が黒くなる[5]

コリン・グローヴズは、ブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ウガンダの個体群がケナガチンパンジー(ヒガシチンパンジー)と異なる亜種 Pan troglodytes marungensis であると主張している[19]
生態

熱帯雨林から山地林・サバンナなどに生息する[4]。樹上棲だが、地表では前肢の指関節外側を接地して四足歩行(ナックルウォーク)する[4]昼行性[4]。夜間になると樹上に日ごとに新しく寝床を作って休むが、同じ寝床を再利用したり地表に寝床を作ることもある[4]。10 - 20平方キロメートルの行動圏内で生活するが、乾燥した地域では行動圏が数百平方キロメートルに達することもある[4]

複数の雌雄が含まれる19 - 106頭の群れを形成し、群れは集合離散を繰り返す[4]。オスは産まれた群れに留まる傾向が強いが、性成熟したメスは産まれた群れを離れて別の群れに移籍することが多い[4]。群れ間の関係は敵対的で、血縁関係のあるオスが協力して他の群れの行動圏にのりこみ殺し合いになることもある[4]子殺しも報告されており、オスの幼獣が殺されることが多く殺された幼獣は同じ群れのメンバーによって食べられてしまう[4]

蟻塚に棒を差込みシロアリを捕食する、石や倒木を使って堅い果実の殻を割る、木の葉を使って樹洞に溜まった水を飲む、木の葉を噛みちぎる音を使って求愛するなど様々な用途で道具を使う[4]。これらの道具および行動には地域変異があり、文化的行動と考えられている[4]。一例としてコンゴ共和国でのカメラトラップ法による調査では、穴を空けるための棒と釣るための棒を用いてシロアリを捕食する・雨避けに葉を用いるなど、22種類にわたる道具の使用が報告されている[16]


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