世界にチョークポイントがいくつあるかについては、論者により大きく異なるが、その内決定的な影響を与えるチョークポイントについては地政学上広く語られる[注釈 1]。またこれらは各国家の位置、立場によって定義が変わるもので、例えば中東への依存度が高い日本にとってはホルムズ海峡、マラッカ海峡がとりわけ重要な箇所となる。
チョークポイントという「点」を押さえるだけで、水路そのもの(線)や太洋(面)の全てを押さえることができるというのは、優れて海軍的な発想であり、費用に比して多くの成果をもたらしている。(要衝そのものを重視する発想は陸軍でも常にあることはいうまでもない。)
チョークポイントを抑えることが必要なのは、シーパワー(例えばアメリカ)にとってのことであり、ランドパワー(例えばロシア、中国が挙げられる場合があるが、両国とも経済発展と共に海洋への依存度が日増しに増大しており、海賊対策の名目で積極的に外洋に海軍を派遣したり海軍の近代化を急ぐなど、近年シーパワーの強化が著しい)にとっては常に重要なことではない。しかし、チョークポイントにおいて航路を一つでも、敵国の影響下から引き離せば、それは当該国にとって大きな勝利となるのである。
代表的なチョークポイント
スエズ運河(地中海と紅海、アフリカ大陸とシナイ半島)
フロリダ海峡(メキシコ湾と大西洋、フロリダ半島とキューバ島)
パナマ運河(太平洋と大西洋)
マゼラン海峡(太平洋と大西洋、南アメリカ大陸とフエゴ島)
ベーリング海峡(北極海とベーリング海、チュクチ半島とスワード半島)
バシー海峡(南シナ海とフィリピン海、台湾島とバタン諸島)
マラッカ海峡(アンダマン海とジャワ海、マレー半島とスマトラ島)、スンダ海峡(インド洋とジャワ海、スマトラ島とジャワ島)
ホルムズ海峡(ペルシア湾とオマーン湾)
バブ・エル・マンデブ海峡(紅海とアデン湾、アラビア半島とアフリカ大陸)
ジブラルタル海峡(大西洋と地中海、イベリア半島とアフリカ大陸)
ダーダネルス海峡(エーゲ海とマルマラ海、バルカン半島とアナトリア半島)
ボスポラス海峡(マルマラ海と黒海、バルカン半島とアナトリア半島)
GIUKギャップ(グリーンランドとアイスランドとイギリス、大西洋と地中海、大西洋と北海)
宗谷海峡(北海道島と樺太島)
津軽海峡(本州島と北海道島)
関門海峡(本州島と九州島)
対馬海峡(九州島と朝鮮半島)
大隅海峡(九州島と南西諸島)
台湾海峡(台湾島と中国本土)
喜望峰(南アフリカの西ケープ州の岬)
イギリス海峡(グレートブリテン島とヨーロッパ大陸)
ロンボク海峡(インドネシアのロンボク島とバリ島)
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 例えば、マハンは世界に7つあると述べている。
出典^ 参考文献『地政学事典』141-142頁。
^ “海上航路ネットワークとエネルギー資源の国際輸送におけるチョークポイント分析” (PDF). 地理情報システム学会 (2013年). 2016年11月23日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2024年1月15日閲覧。
参考文献
ジョン・オロッコリン編、滝川義人訳『地政学事典』東洋書林、2000年 ISBN 978-4887214309
関連項目
国力
陸軍力 - 海軍力 - 空軍力
ランドパワー - シーパワー - エアパワー
地政学
海洋国家
シーレーン
GIUKギャップ
回廊地帯
仮想敵国
国際海峡
通商破壊