チャイナタウン_(映画)
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エピソード

ロサンゼルス政界の黒幕ノア・クロスを演じたジョン・ヒューストンは、「
マルタの鷹」などの古典的フィルム・ノワールの傑作を監督したハリウッドの巨匠として知られるが、その傍ら個性派のバイプレイヤーとして映画出演もこなしていた。彼の娘で女優であるアンジェリカ・ヒューストンは当時ジャック・ニコルソンの恋人であり、その縁もあって本作への出演が実現した。フィルム・ノワールの名監督が「チャイナタウン」というフィルム・ノワールの悪役として出演していることに、キャスティングの妙味がある。さらに劇中でヒューストンがニコルソンに向かって「娘と寝たのか?」と訊くセリフがあるが、これが意味深だということで、話題になった。

金も権力も手に入れたずる賢い老人ノア・クロスを実にふてぶてしく演じたヒューストンは、主役のニコルソンにも劣らぬ異様な存在感を漂わせた。本作は彼の俳優としての代表作となり、強欲で冷酷な男ノア・クロスはハリウッド映画史上屈指の悪役キャラクターに数えられている。

プロデューサーのロバート・エヴァンスは、パラマウントの社長として「ゴッドファーザー」をはじめ数々のヒット作を世に送り出し、カリスマプロデューサーと呼ばれた。退社して独立プロダクションを興し、第一作に本作を選んだ。

ジャック・ニコルソンは、原案・脚本を担当したロバート・タウンと親しく、タウンのために製作を後押しした。エヴリン役に誰をキャスティングしたらいいか悩んでいたプロデューサーのロバート・エヴァンスには、「何をしでかすかわからない雰囲気がある」とフェイ・ダナウェイを推した。

ロマン・ポランスキーはロバート・エヴァンスから演出を頼まれたが、気乗りせず、返答を保留していた。ポランスキーが撮影を終えたばかりの「欲望の館」を試写で見たエヴァンスは、この映画の興行収入と同額のギャラを支払うと持ちかけ、契約にこぎつける。「欲望の館」の出来がひどかったので、一計を案じたのだ。後日、公開された映画は、大コケし、ポランスキーを大いに悔しがらせた。撮影中は、ポランスキーの意固地で横暴な性格が次々にトラブルを巻き起こし、エヴァンスの頭を悩ませ続けた逸話は、今も語り草になっている。

脚本の執筆中、物語の結末を巡って、監督ロマン・ポランスキーと、脚本家ロバート・タウンは激しく対立した。ポランスキーは悲劇的な結末を主張するが、タウンはハッピーエンドにしたいと言って譲らない。物語のラストでエヴリン役のフェイ・ダナウェイが死ななかったら、凡庸な映画になってしまうと、ポランスキーがあくまで主張を曲げなかったため、最終的にタウンは渋々従った。脚本があまりに難解だと業界で話題になり、エヴァンスは何人もの親しいプロデューサーから製作を思いとどまるよう勧められたという。

本作の音楽をジェリー・ゴールドスミスが作曲した経緯には驚異的なエピソードが伴っていた。既に別の作曲家フィリップ・ランブロによって作曲・録音済みだった音楽をつけての試写に際し、ポランスキー監督と親しかったハリウッド映画音楽業界のベテラン作曲家ブロニスラウ・ケイパーが立ち会ったが、ケイパーは映画を評価したものの音楽が良くないとの意見を示したという。これを受けたロバート・エヴァンスはランブロによるスコアを外し、映画公開まで僅か2週間というタイミングで、急遽ピンチヒッターとしてゴールドスミスに音楽の作曲を依頼した。これに応じたゴールドスミスは、新たな作曲・編曲、トランペッターのユアン・レイシーのソロをフィーチャーした重厚なストリングス演奏を録音までわずか10日ほどで仕上げ、公開に間に合わせた。その結果本作は1974年のアカデミー作曲賞にノミネートされている(ゴールドスミスがアカデミー作曲賞を受賞するのは1976年の「オーメン」である)。ランブロによる元の楽曲は予告編で聴くことが出来る。

本作に対して「(当時は通常であった黒人差別を批判されたくないため)黒人が殆ど登場しない」という批判が一部にある。

脚本家のシド・フィールドは自身の著書にして脚本家のためのテキスト『映画を書くためにあなたがしなければならないこと』(原題: Screenplay?The Foundations of Screenwriting)において、優れた脚本の例として度々本作を挙げ絶賛している。

貯水池で、ジェイクはナイフを持ったチンピラに脅され、鼻を切られるが、この男は監督のポランスキー自身が演じており、「ナイフを持った男」としてクレジットされている。

続編

本作品の脚本家であるロバート・タウンは、当初私立探偵ジェイク・ギテスを主人公にした「影のロサンゼルス近代史」とも言うべき三部作の構想を持っており、『チャイナタウン』はその第一作目に相当するという。1990年に続編である『黄昏のチャイナタウン』(原題:The Two Jakes)がジャック・ニコルソン主演&監督で公開されたが、興行的に成功したとはいえず、そのためか現在に至るまで第三作目は製作されずじまいである。
脚注[脚注の使い方]
注釈
出典^ チャイナタウン 。NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

外部リンク

Chinatown Movie Official Website 。Trailers and Gallery 。Paramount Pictures
(英語)

チャイナタウン - allcinema

チャイナタウン - KINENOTE

Chinatown - オールムービー(英語)

Chinatown - IMDb(英語)

Chinatown - TCM Movie Database(英語)

Chinatown - Rotten Tomatoes(英語)










ロマン・ポランスキー監督作品
1960年代

水の中のナイフ(1962)


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