アメリカでは1860年頃からプルマンが始めた寝台車による鉄道旅行において、多く雇用されていた黒人のポーターへチップを渡す機会があり、中流階級にも浸透したとされる[1]。
アメリカの連邦最低賃金は通常の労働者とチップを貰うような職業の労働者(チップ労働者)で別になっており、チップの収入があるという理由でチップ労働者の最低賃金は通常の労働者よりも低く設定されている[1]。
2018年ごろではレストランでは税引き後の飲食代金の10 - 15%程度が平均的な額と言われていたが[2]、物価上昇などにともない2023年ごろには15 - 20%、2024年には20 - 25%程度となっている[20]。
飲食店以外では美容院などで料金の10 - 15%に相当する程度のチップを支払う習慣がある[2]。 観光バスによるガイド付きツアーに参加した場合、ツアー終了時の降車口にざる等が置かれ、そこにガイドやドライバーへのチップを入れるようにしていることがある。相場としては、半日観光で日本円にして200円相当額程度、1日観光で同300円相当額前後、数日に及ぶ場合は同300円相当額×日数といったところである[6]。(国・地域、為替レートによる) クルージングの場合、日帰りクルーズ等の場合はチップはほとんど必要ないが、船内に寝泊まりする本格的クルーズの場合は、下船時にまとめて相当額のチップを払うことが慣習となっている。目安は、客室係員とレストランのウェイターに1日当たり日本円にして500円相当額前後、皿の上げ下げを手伝うウェイターのアシスタント bus boy に200円相当額程度である。チップは、下船の前日辺りに渡される封筒に宛名を書き、日数分を入れ集めるような形になっていることがある[6]。なお、船長や高級船員(オフィサー)に「チップを渡すこと」は、威厳を損なう大変失礼な行為となってしまうので、厳に慎まなければならない[6]。 生バンド等が入っている飲食店では、日本人客と見ると日本の楽曲を演奏することがある。ここで大きな拍手をしてしまうと、テーブルにまで寄ってきて何曲も演奏し、多額のチップを払わされることになってしまう。この場合には、拍手は周りに合わせるか、チップを払うことにすればよい[6]。 カジノでは大きく勝った場合、勝ち具合に応じて1 - 5%をディーラーに支払うことが習慣になっている国が多い。ルーレットやブラックジャックなど、ディーラーとの距離が近い場合は特にコミュニケーションの一環として考えられる。アジアのカジノでは、ディーラーが換金(カラーアップ)の際にチップ分をあらかじめ控除して渡すことが見受けられる。中には大勝ちした場合、ディーラーに大盤振る舞いしないと「帰りの夜道が怖い」という物騒な伝説を持つカジノもあるという[6]。 前述のとおり、日本ではチップの習慣は廃れ、サービス料といった形でそれに相当するものが徴収されているが、ごく一部にチップに相当する現金を収受する慣習例が残っている。 例えば、旅館で見られる「茶代」もしくは「心付け」収受の慣習がそれである。宿屋における茶代とは宿泊料とは別に帳場(宿主)へ客が与える金銭であり、心づけは部屋の女中や荷物係の下男などに与える金銭を指した。欧米のチップと違う点は、日本ではそれらを渡すときに、紙、もしくは祝儀袋、ポチ袋などに包んで渡すのが礼儀とされる点である[21]。硬貨や紙幣をそのまま渡すことは「相手に対する非礼」と見なされる[21]。但し、バブル期には、「釣りは要らないよ」などと言って、大抵は、羽振りが良く金払いの良い年輩男性客などが粋な仕草として、大きいお札の額を現金で払いお釣りを受け取らずに店を出るという日本流のチップ文化は、かつてドラマなどでよく描写されるなどして現実でも一部存在し、現代でもその名残が垣間見られることはある。だが、現在の多くの場所では従業員に対して受け取りを禁止することが教育されているので、そのほとんどが断られる。また、タクシーの料金支払い時に、急いでお釣りを断ったりチップとして渡すことがあっても、欧米と同様に裸のまま渡す場合がある。 旅館における茶代の習慣は江戸時代にはすでに行われ、明治・大正期には廃止論が叫ばれはじめ、昭和期に次第に廃れていった[22][23]。明治の思想家内村鑑三は茶代を賄賂の一種とみなし、日本から排除しなくてはならないと説いた[24]。当初、日本の旅館の宿泊費は実費のみの請求であったため、茶代が宿の純益となっていた[25]。
ヨーロッパ
日本での事情