チェコ語
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16世紀になると、スロバキアのルター派プロテスタントがチェコ語の正書法を用い始めた一方で、カトリック、特にスロバキアのイエズス会が西スロバキア方言を基にしたスロバキア語正書法を用い始めるという信仰上の分裂を示し、これによってチェコ語とスロバキア語が明確に区別されるようになった[6][7]

1579年から1593年にかけて翻訳、出版されたクラリツェ聖書(英語版)(聖書の原語からのチェコ語初の完全翻訳)は、チェコ語標準語のモデルとして使用されたため、その後数世紀にわたりチェコ語の標準化にとって非常に重要なものとなった[8]

1615年、ボヘミア議会はチェコ語をボヘミア王国の唯一の公用語とすることを宣言しようとした。しかし、1620年にボヘミア反乱でプロテスタント貴族がハプスブルク家に敗れたため、プロテスタントの知識人は国外に出なければならなかった。三十年戦争の影響もあり、この移住によりチェコ語の普及に悪影響が及んだ。1627年にチェコ語とドイツ語がボヘミア王国の公用語となり、18世紀にはボヘミアとモラヴィアにおいて、特に上流階級の間ではドイツ語が支配的となった[9]
現代チェコ語詳細は「チェコ民族復興運動(英語版)」を参照ヨゼフ・ドブロフスキー。彼の著書は書き言葉としてのチェコ語復権に重要な役割を果たした。

現代標準チェコ語は18世紀のチェコ語標準化活動に由来する[10] 。 この時期までに文学的伝統の積み重ねが済み、それ以降はほとんど変化しなくなった。当時の雑誌のチェコ語は現代の標準チェコ語と実質的な違いがなく、現代のチェコ人にとっては殆ど理解可能である[11]。また、スロバキア語には音素 /l/ と /?/ の区別が残存しているが、チェコ語では18世紀より前の段階でこれら音素を区別しなくなった[12]

18世紀半ばに民族復興運動が始まると、チェコの歴史家は過去の対抗宗教改革(ハプスブルク家の再カトリック化により、チェコ語や他の非ラテン語が否定された)に反発し、15世紀から17世紀にかけての国民の功績を強調し始めた[13]。 また、チェコの文献学者たちは16世紀のテキストを研究し、チェコ語のハイカルチャーへの復帰を提唱した[14]。 この時期はチェコ民族復興運動[15](またはルネサンス)として知られている[14]

民族復興期の1809年には、チェコの文献学者・歴史家のヨゼフ・ドブロフスキーが『ボヘミア語の包括的教義(Ausfuhrliches Lehrgebaude der bohmischen Sprache)』と題して古チェコ語文法の研究をドイツ語で発表した。ドブロフスキー自身は、自身の著書を記述的なものとするつもりで発表しており、チェコ語が主要言語として復権する可能性は現実的にはないと考えていた。しかし、ヨゼフ・ユングマンや他の復興運動家はドブロフスキーの著書を用いてチェコ語の復興を提唱した[15]。 この間の変化としては、綴字改革(特に、かつての⟨j⟩の代わりに⟨i⟩、⟨g⟩の代わりに⟨j⟩を使用)、不定詞の動詞の最後に⟨ti⟩ではなく⟨t⟩を使用、名詞の非大文字化(ドイツ語からの遅い時期の借用)などが含まれた[12] 。 これらの変化によりチェコ語はスロバキア語から分化した[16]。保守的な復興主義者がナショナリズムによって動機づけられていたのか、それとも現代の話し言葉であるチェコ語を正式に広く使用するには適さないと考えたのかについては、現代の学者の間で見解が分かれている[15]

後に、歴史的な活用の変化形は後に簡略化され、いくつかの固有名詞を無変化にするなど、広く使用されている方言である共通チェコ語の多くの特徴を標準チェコ語に取り入れた。その結果、チェコ語の各方言同士の均質性が比較的高水準に実現した[17]
話者分布セルビア共和国ヴォイヴォディナ自治州におけるチェコ語の使用地域(水色)

チェコ共和国の約1000万人の住民にチェコ語が話されている[9][18]。2012年1月から3月に実施されたユーロバロメーター(英語版)調査によれば、チェコ国民の98%が第一言語をチェコ語としており、欧州連合内ではギリシャ、ハンガリー(共に99%)に次いで3番目に高い人口比を誇る[19]

チェコは2004年から欧州連合に加盟したが、チェコの公用語として、チェコ語はEUの公用語の一つでもある。2012年のユーロバロメーター調査では、スロバキアで最も頻繁に使用されている外国語はチェコ語であった[19]。経済学者のジョナサン・ヴァン・パリスが、2012年の「欧州言語の日」に向けてヨーロッパの言語についてデータを収集したところ、チェコ語を多く使用する上位5カ国は、チェコ(98.77%)、スロバキア(24.86%)、ポルトガル(1.93%)、ポーランド(0.98%)、ドイツ(0.47%)であった[20]

スロバキアのチェコ語話者は主に都市部に在住している。スロバキア国内ではチェコ語は少数言語として認められており、チェコ語のみを話すスロバキア国民は、チェコのスロバキア語話者と同様に、自身の言語で政府とコミュニケーションをとることが許されている[21]
音韻論詳細は「チェコ語の音韻(英語版)」を参照チェコ語の発話

チェコ語の母音は、短母音 /a/, /?/, /?/, /o/, /u/ とそれに対応する長母音 /a?/, /??/, /i?/, /o?/, /u?/ の計10個である。 また二重母音 /ou?/, /au?/, /?u?/ の3つがある。 このうち /au?/, /?u?/ は、auto「車」、euro「ユーロ」のように語中にのみ現れる[22]

チェコ語の正書法において、母音は以下のように表記される。

短母音: a, e/?, i/y, o, u

長母音: a, e, i/y, o, u/?

二重母音: ou, au, eu

?⟩ は前に置かれた子音を口蓋化する働きがあり、例えば n?co は n が口蓋化され /??t?so/ と発音される。唇音の後では /j?/ (例:b?s /bj?s/)のように発音されるが、⟨m?⟩ は /m??/ と発音される(例:m?kky /m??ki?/)[23]


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