ダイオード
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これら多数キャリアが過剰となるために空乏層は縮小・消滅し、キャリアは接合部付近で次々に結びついて消滅(再結合)する。全体でみると、これは電子がカソードからアノード側に流れる(=電流がアノードからカソード側に流れる)ことになる。この領域では、電流はバイアス電圧の増加に伴って急激に増加する。また電子正孔の再結合に伴い、これらの持っていたエネルギーが熱(や)として放出される。また、順方向に電流を流すのに必要な電圧を順方向電圧降下と呼ぶ。
逆バイアス逆方向バイアス時のpn接合ダイオード

アノード側に負電圧を印加することを逆バイアスをかけると言う。この場合、n型領域に正孔、p型領域に電子を注入することになるので、それぞれの領域において多数キャリアが不足する。すると接合部付近の空乏層がさらに大きくなり、内部の電界も強くなるため、拡散電位が大きくなる。この拡散電位が外部から印加された電圧を打ち消すように働くため、逆方向には電流が流れにくくなる。より詳しくは、pn接合の項を参照のこと。

実際の素子では、逆バイアス状態でもごくわずかに逆方向電流(漏れ電流、ドリフト電流)が流れる。さらに逆方向バイアスを増してゆくと、ツェナー降伏やなだれ降伏を起こして急激に電流が流れるようになる。この降伏現象が始まる電圧を(逆方向)降伏電圧または(逆方向)ブレークダウン電圧と言い、降伏によって急激に逆方向電流が増加している領域を降伏領域(ブレークダウン領域)と言う。この降伏領域では電流の変化に比して電圧の変化が小さくなるので、この領域での動作特性を積極的に定電圧源として利用するのが定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)である。

ダイオードの種類
特性による分類
PNダイオード (PN Diode)
詳細は「
pn接合」を参照半導体pn接合の整流性を利用する、基本的な半導体ダイオードである。
定電圧ダイオード (Reference Diode)(ツェナーダイオード (Zener Diode))
ツェナーダイオードの記号詳細は「ツェナーダイオード」を参照逆方向電圧をかけた場合、ある電圧でツェナー降伏またはなだれ降伏が起き、電流にかかわらず一定の電圧が得られる性質を利用するもの。電圧の基準として用いられる。添加する不純物の種類・濃度により降伏電圧が決まる。なお、順方向特性は通常のダイオードとほぼ同等。
定電流ダイオード(CRD, Current Regulative Diode)
詳細は「定電流ダイオード」を参照接合型FET(JFET)のドレインをアノードとし、ソースとゲートを短絡した電極をカソードとしたもの。そうすると順方向電圧をかけた場合、しきい値以上の電圧であれば、ほぼ一定の電流(IDSS)が得られる。JFETのIDSSは一般に個体ごとにバラつくが、選別・分類したものを製品として市販されており1 mA ? 15 mAの程度の範囲である。最初に説明したように実体はFETでダイオードと呼ぶのは通称のようなものであり、逆方向の電流を制限する整流作用もない。
トンネルダイオード (tunnel diode)、江崎ダイオード (Esaki diode)
トンネルダイオードの記号詳細は「トンネルダイオード」を参照量子トンネル効果により、順方向の電圧を増加させるときに電流量が減少する「負性抵抗」を示す電圧領域での動作を利用するもの。1957年江崎玲於奈が発明した。不純物濃度を調整し、ツェナー電圧を順方向バイアス電圧の領域にしたもの。
可変容量ダイオード(バリキャップ (variable capacitance diode)、バラクタ (varactor diode))
バリキャップの記号詳細は「バリキャップ」を参照電圧を逆方向に掛けた場合にダイオードのpn接合の空乏層の厚みが変化することによる、静電容量(接合容量)の変化を利用した可変容量コンデンサ。機械的な部分がないため信頼性が高い。VCOや電圧可変フィルタに広く用いられており、テレビ受像器携帯電話には欠かせない部品である。なお、日本ではバリキャップと呼ばれることが多いが、海外ではバラクタと呼ばれることが多い。
発光ダイオード (Light Emitting Diode. LED)
発光ダイオードの記号詳細は「発光ダイオード」を参照エレクトロルミネセンス効果により発光する。
レーザーダイオード (laser diode)
レーザー光線を発生させるもの。半導体レーザーとも呼ばれる。
フォトダイオード (photo diode)
フォトダイオードの記号詳細は「フォトダイオード」を参照pn接合に光が入射すると、P領域に正孔・N領域に電子が集まり電圧が生じる(光起電力効果)。その電圧または電流を測定し光センサとして利用するもの。PN・PIN・ショットキー・アバランシェ(APD)の種類がある。太陽電池も同じ効果を利用しているが、フォトダイオードは逆方向バイアスを印加して光電流を取り出している。
アヴァランシェ・ダイオード
アヴァランシェ・ダイオードの記号詳細は「アバランシェダイオード」を参照「アヴァランシェ・ブレークダウン」も参照
ステップリカバリダイオード
pn接合に順方向バイアスを加えたときの少数キャリアの蓄積量が最大になるようにしたダイオード。少数キャリアの蓄積効果を積極的に利用するためのダイオードで、スナップダイオードとも呼ばれる。
ショットキーバリアダイオード (Schottky Barrier Diode)
ショットキーバリアダイオードの図記号詳細は「ショットキーバリアダイオード」を参照金属と半導体とのショットキー接合の整流作用を利用している。順方向の電圧降下が低く、逆回復時間が短いため、超高速スイッチングや高周波の整流に適する。一般的に漏れ電流が多く、サージ耐力が低い。これらの欠点を改善した品種も製作されている。
バリスタ(非直線性抵抗素子)
バリスタの回路図記号詳細は「バリスタ (電子部品)」を参照一定の電圧を超えた場合、電気抵抗が低くなりサージ電圧から回路を保護する双方向素子である。酸化亜鉛焼結体の粒界が持つ、非直線抵抗性を利用している。
PINダイオード (p-intrinsic-n Diode)
PINダイオードPN間に電気抵抗の大きな半導体層をはさみ少数キャリア蓄積効果を大きくし逆回復時間を長くしたものである。順方向バイアス時に高周波交流を通過させる性質があることを利用し、空中線のバンド切り替えなど高周波スイッチングに用いられる。pn接合で順方向電圧から逆方向に電圧の極性が変化するとき、注入によってn領域に蓄積されるホールの一部がp領域に逆流して、ある時間(蓄積時間)だけ大きいパルス電流を流す。pn層に挟まれたi層が、この蓄積時間を短くするために働く。
点接触ダイオード
N型半導体の表面にタングステンなどの金属の針状電極を接触させたもの。その構造上、
寄生容量が非常に小さいという特徴がある。ゲルマニウム・ダイオードやガン・ダイオードで用いられている。鉱石検波器も、点接触ダイオードの一種である。
ガン・ダイオード
詳細は「ガン・ダイオード」を参照マイクロ波(小電力)の発振器に用いられる。
インパットダイオード
逆方向電圧加え徐々に高くし、ある電圧以上になると
電子雪崩を起こし、負性抵抗を示す。これを利用してマイクロ波の発振や増幅に用いる。
トリガ・ダイオード(ダイアック (DIAC))、サージ保護用ダイオード)
詳細は「DIAC」を参照2極(Diode)の交流(AC)スイッチということから名づけられた名称。米国GE社で開発され、交流電源から直接トリガパルスを得る回路や電子回路のサージ保護用に使用される。規定の電圧(ブレーク・オーバー電圧:VBO)を超える電圧がかかった場合に導通状態になり端子間の電圧を低下させる双方向素子である。基本構造はPNP(またはNPN)三層の対称構造を持ち、PN結合のアバランシェ効果と、トランジスタの電流利得作用による負性抵抗特性をもつ。なお、名称こそダイオードとなっているが、実際の構造・動作原理はサイリスタに分類される複雑なものになっている。
二極真空管
詳細は「真空管」を参照
ガス入り放電管整流器
針状電極と平板電極を向かい合わせた場合放電ギャップでは、針状電極を負極とした場合の方がより低い電圧で放電を開始するという性質を利用した整流器。
材質・構造による分類
二極真空管

ゲルマニウム・ダイオード

セレン・ダイオード

シリコン・ダイオード

SiC(シリコンカーバイド)・ダイオード

ガリウム砒素・ダイオード

窒化ガリウム・ダイオード

ダイオードのモデル

ダイオードの順方向を正とする電圧 v とアノードからカソードへ流れる電流 i との間の静特性を表すモデルとしては、ショックレーのダイオード方程式 (diode equation) が有名である。


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