エンジンの出力軸から機械的機構を介して動力を得るスーパーチャージャーは機械損失(メカニカルロス)が生じるが、ターボチャージャーは排気ガスの熱や運動エネルギーとして廃棄されるエネルギー(排気損失)の一部を利用して駆動するため、エンジン出力軸の機械損失がなく、わずかな排気抵抗が生じるのみである。一般的にシリンダー内の燃焼で得られるエネルギーのうち排気損失となるのは40%とされており、ターボチャージャーは7 - 10%を回収できるとされている[5]。
一方で、吸気の配管と排気の配管の両方がターボチャージャーを経由するため、エンジンルームのレイアウトが複雑化する。また、自動車などのようにエンジンの回転速度が運転中に大きく変動する用途では低速回転から高速回転への過渡運転時に、タービンが充分な過給圧を得られる回転速度に到達するまでに遅れが生じるターボラグと呼ばれる現象が発生しやすい。すなわちスロットル操作に対するエンジンの出力上昇に遅れが生じやすい。ターボチャージャーの軸受は高温となるため耐熱性の高いボールベアリングが用いられる場合や、オイルを循環して冷却・潤滑を行っている場合が多い。自動車などの用途ではエンジンオイルで冷却・潤滑しているためエンジンオイルの劣化が進みやすい。
ターボラグの影響を小さくする方策として、タービンの軽量化やターボチャージャーを小型化するなどの方策が各メーカーで行われている。F1では2014年より、後述するようにターボを用いてモーター(MGU-H)を回し発電する「熱回生」が認められたため、逆にMGU-Hに電力を流して強制的にタービンを回すことでターボラグを解消する手法が導入された。
自然吸気との比較5代目フォルクスワーゲン・ゴルフに搭載されたTSIエンジンがダウンサイジングターボの先駆けとされている。
過給機は吸入空気を機関に圧送するため、単位排気量あたりの出力が向上する。しかし一方で、出力増加に伴って、燃焼温度が高く、シリンダー内圧が高くなるためヘッドガスケットやシリンダーヘッド、シリンダーブロックの強度やピストンの耐熱性を高くする必要がある。コンプレッサーによる圧縮やタービンからの熱伝導により吸気温度が高くなる。インタークーラーで圧縮後の吸気を冷却し、空気充填率の向上を図っている例も多い。
ガソリンエンジンの場合は、過給によりエンジンの圧縮行程で混合気がより高温になるため、デトネーションが発生しやすくなる。この対策として同型式の自然吸気エンジンよりも圧縮比を低く設定したり、空燃比[6]を濃く設定する場合がある。圧縮比を低くした場合は過給効果が得られない回転域で熱効率が低下し、自然吸気エンジンよりも出力が低下する。また空燃比を濃くすることで走行燃費が悪化する。
このようにコストや燃費という観点から、従来ガソリン車ではハイパフォーマンスモデルを除いて自然吸気エンジンが基本であったが、近年ではガソリンをシリンダー内に直接噴射する技術(ガソリン直噴エンジン)により圧縮行程では空気のみを圧縮するようになったためデトネーションの問題が解消され、2010年以降の乗用車では排気量を小さくする代わり、過給機によって出力を補い、総合的に燃費を改善するダウンサイジングコンセプトが流行しており、普通乗用車でもターボエンジンを採用するのはごく一般的になっている。
用途キハ183系気動車のDMF13HZ形エンジンに装着されているターボチャージャー
ターボチャージャーは船舶や発電機、建設機械、鉄道車両、自動車などで広く利用されている。特に船舶や発電機など、エンジンの回転速度が大きく変化しない用途ではターボチャージャーの設計をその運転条件に最適化しやすく、ターボチャージャー特有の欠点であるターボラグが発生することがないため適している。また、ディーゼルエンジンは空気のみをシリンダーに吸入して圧縮を行うため、ガソリンエンジンで生じるデトネーションが起こらず、部分負荷域においても吸気経路を絞らないため過給機との相性が特に良い。 自動車などではディーゼルエンジンを搭載したトラック、バスのほか、モータースポーツ用車両やスポーツカーなどでも一般的に用いられる。ターボチャージャーを搭載した初の市販車は1973年デビューのBMW・2002ターボである。日本国内では1979年デビューの日産・430型セドリック(グロリア)が初めてターボを搭載したグレードを登場させ、以後ブルーバードやスカイライン等の主力車種にもターボ搭載モデルが誕生、日産自動車は国産ターボ車の先駆けとなった。路線バス用の車種は2005年後半からダウンサイジングによって燃費や排出ガスを低減するためにターボチャージャーを搭載する例(所謂ダウンサイジングターボ)が増えてきている。 2010年代以降、欧州メーカーの乗用車では小排気量のガソリン直噴エンジンを採用してエンジンを小型軽量化しながらターボチャージャーにより出力を補うダウンサイジングコンセプトを採用する車種が増え、ターボチャージャーの搭載車種が増えつつある。ロープレッシャーターボやツインスクロールターボを採用し、低回転から中・高回転までフラットな特性で大きなトルクを発生させている。日本の乗用車では昔から軽自動車でターボチャージャーが採用されている。また、かつては自動車税の税額が3ナンバーと5ナンバーで大きく異なっていたため、5ナンバーボディには排気量2,000cc以下のエンジンにターボチャージャーが利用されるケースが多かった。同様の税金体系を採っていたイタリアでも排気量2,000cc以下のエンジンにターボチャージャーが利用されるケースが多かった。 元々はターボラグや信頼性の問題からターボは敬遠されていたが、1970年代後半にルノーがル・マン24時間レース、次いでF1を席巻するようになってから、様々なカテゴリで用いられるようになった。ターボは予選の一発がほしい時に過給圧を高め、速さと燃費の両立が重要な決勝では過給圧を下げられるため、特にグループC時代の耐久レースで重宝された。 しかしF1でホンダがウィリアムズに供給していたエンジン(RA166E)でも1,500cc V型6気筒ツインターボの構成によりレース中で776kW(1055馬力)を発生したと言われ[7]、安全性を理由に1987年からレギュレーションにより過給圧制限が加えられ(1987年は最大4bar、1988年は最大2.5bar)、F1では1988年シーズンを最後に過給機の使用が禁止された。 また他のカテゴリでも、自然吸気エンジンのほうが低価格帯の市販車のラインナップに多いため参戦しやすいというマーケティングの都合や、コストを削減しやすいという観点から、90?00年代のラリーの下位クラスやツーリングカーレース、ラリーレイドなどでガソリンターボは禁止される傾向にあった。 2010年代に入るとダウンサイジングターボの流行で市販車にターボ車が増えたことで、一転して多くのカテゴリで小気筒数(4?6気筒程度)であることを前提にほとんどのカテゴリでターボエンジンが導入されるようになった。F1では2014年からは1,600cc V型6気筒エンジンにシングルターボを組み合わせて使用することが可能となった。またエンジンだけではなくハイブリッドシステムとの組み合わせにより、ターボのタービンシャフトにモーターを接続し、排気ガスのエネルギーを利用してモーターを回し発電させる「熱回生」が無制限に認められたことから、いかにターボと回生用モーター(MGU-H)で効率よくエネルギーを回収するかが重要となっている(運動エネルギー回生システム#熱回生とレギュレーションも参照)。 航空用エンジンでは1950年代までは多くがレシプロエンジンだったことから、気圧の低い(酸素の少ない)高空での出力維持のために過給器の研究が行われた。当初は機械式のスーパーチャージャーのみが採用されたが、次第にターボチャージャーを用いる機種も現れるようになった(代表例:B-29、P-38、P-47)。 フルスロットルで所定の出力を出せる高度である臨界高度(海面高度と同じ出力を発揮できる限界の高さ)までエンジン出力を維持するため、タービンに送る排気を高度に応じて自動的にバイパス流路を開閉する近路弁と呼ばれるバルブを搭載しており、気圧の低い高高度ではバイパス流路を閉じてタービンに送る排気を増やして吸気圧力を上昇させ、気圧の高い低高度ではバイパス流路を開いてタービンに送る排気を減らして吸気圧力を低下させてエンジン出力を一定にさせる。地上から臨界高度までは一定のエンジン出力を保つことができるが、臨界高度以上となるとエンジン出力が低下していく[8]。
自動車など
モータースポーツルノー・アルピーヌ A442B(1978年)メルセデス・F1 W07 Hybrid(2016年)
航空機